苦役甦す莇
Episode3 My ability
自分の舌の味蕾を引っ掻き回したくなるほどの不味さだった。
結局俺らは自分自身を探す旅に出ることに決めた。
この世界で消滅してしまうくらいなら頑張って自分集めした方がマシだと思ったからだ。
ただ出された謎の液体が死ぬほど不味かった。俺が今まで口にしたものの中で頭100個程飛び抜けた不味さだった。
出来る範囲で表現するなら、薬品っぽい風味に、歯磨き粉と、漢方と、青汁と、納豆と、チーズと、パクチーと、ゴムと、革と、もんじゃ食った後のゲロと、真夏の暑い中放置して発酵したスポーツドリンクを、全てポリバケツぶちまけて混ぜたみたいな味だった。
いや、正確には違う。ホントはこの表現でも足りないくらい不味かった。とにかく不味かった。口に含んだ瞬間顔面が一瞬にして中央に寄った。
しかも飲み方もなかなか鬼畜で、肺で飲めというものだった。
一瞬耳を疑ったが、指示通り頑張って肺に入れ込んだ。
最初は何回か咳き込んで嗚咽とゲップを繰り返し、涙目になりながら少しずつ入れていった。後半はもうヤケクソだった。
摩耶の方も相当苦労したらしく、俺の倍近くの時間をかけて飲みきった。
これに関しては倍早く飲んだ俺は勝ち誇る気持ちにすらなれなかった。
不味いし飲み方も難しいし、これ程飲み物を恨んだのは生まれて初めてかもしれない。
とにかく飲みきったあとは自分の体はもう半透明じゃ無くなっていた。いつもの肌に戻っていた。
自分の肌を見るのがとても久しぶりなような気がした。
自分の肌を少しの間マジマジと見つめてるといきなりおでこをバン!と押されて驚いた。
いきなり視界が真っ白になり少し狼狽したが、どうやらアギルが俺のおでこに何か紙のようなものを貼り付けたらしい。
「なぁ......これも何か意味があるのか?」
変な飲み物を変な飲み方で飲まされた後だったので、この行為にも何か意味があるような気がしてアギルに質問した。
「これはあなた達の能力を知る為にしてる事よ。あの液体を飲んだ人間は何かしら自分自身の中で目覚めさせる傾向があるの。今あなた達のスペックを測ってる。少し待ってて。」
ちらりと目を右に向けると摩耶も同じ状態だったので、思わず噴き出しそうになってしまった。
いけないと思いすぐに目を背け、1人で笑いをこらえていた。
笑いをこらえていると、いきなり紙が取られ視界が元に戻った。
どうやら俺のスペックが出たらしい。気にならないことも無いが、何か自分自身のスペックを見ることを少しだけ恥ずかしく感じ、さも興味なんて無いですよという感じを装った。
「なるほど......こりゃ面白い。爪跡くんも摩耶ちゃんもね。」
面白い?どういう意味だよ。
少し身を乗り出して自分のスペックが書かれた紙を覗き込んで見た。
痣剥 爪跡
性別 男
身長 167cm
体重 57kg
年齢 17歳と2ヶ月
欠落度 72%
能力  外の力を行使する能力
......なんかぼんやりした感じだな。
「なぁ欠落度ってなんだ? この72%ってやつ。」
「あぁそれは君たちが失った欠片の割合だよ。爪跡くんは72%失ったという意味だね。だから今は元の28%しかない。」
なるほど。あと72%分の自分を集めればいいわけか。
「......69%か。頑張らなきゃな。」
隣でぼんやりと摩耶が呟いた。なんだよ俺より失って無いのかよ。
少し不満に思い、摩耶のスペックを覗き込もうとした。
「ちょ、やめてよ! 女子の体重見るの常識外れだからね!」
知りたいのはテメーの体重じゃねぇよと思いつつ、自分の能力を試したいと思った。
外の力ってなんだろうか。外と聞いてイメージするのはなんとなく太陽とか空かな?
そう考えた途端、右手の掌にいきなり小さい太陽が出現した。
「お! わ!」
いきなりの出来事だったので、驚いてしまい右手の掌に出現した太陽を消そうと反射的に思った。
次の瞬間には右手からは小さい太陽は消えていて、あとに残ったのは眩しい光を見た後の視界に残るモヤモヤだけだった。
なるほど、こういう感じなのかと自分に目覚めた力に少し戸惑いつつも、段々と理解を深めていこうかと考えてた矢先。
いきなり何かが割れる音がした。
音がなった方向を見てみると、窓ガラスが割れて床に散らばっていた。
そのすぐ横に割れたガラスを見て戸惑っている摩耶がいた。
「なぁ。これお前がやったのか?」
「そうかもしれない。」
自分の力に対する理解が乏しいのは彼女も一緒のようだった。
「それが君たちに目覚めた力だよ。その力を使ってこの世界を生き延びてくれ。」
全てを知ったような雰囲気でアギルは優しく俺たちに語りかけた。
そしてアギルはおもむろに立ち上がり、部屋の奥にある扉を開けて奥に行ってしまった。
アギルがいなくなり2人だけになった部屋は少し変な空気が流れていた。
事故とはいえ、お互いとんでもない状況に放り込まれてしまった。
生き残るには協力した方が得策か、そんな事を少し考えているとアギルが奥の部屋から戻ってきた。
「さて、冒険に出る前にいくつか教えてあげよう。」
そう言うとアギルはテーブルの上に置いてあった2つのコップを片付けて、テーブルの上に地図を広げた。
「この世界には色んな種族が住んでいて、色んな組織も存在する。生き延びていくには敵に回さない方が得策なのは理解できるよね?」
まぁ賢い人間のする事ではないわな。無駄に敵を増やしても後で面倒になるだけだ。
「この世界には色んな組織が存在する。大小規模は様々だけどこの世界の住人はお互いに助けあって生活してる。
この世界には人間や近人間種族以外に魔物なんかが沢山いる。
君たちの世界にはいなかっただろうから、あまり馴染みは無いだろうけど。」
アギルは話しながら、テーブルの下から輪っかのような物を2つ取り出した。俺たちはそれに見覚えがあった。シュバルが持っていた物と同じだ。
「君たちがどこかの組織に属するか、一匹狼で孤軍奮闘するかは自由だ。
旅の出発を祝って君たちにこれも送ろう。」
アギルは後ろの箱からすごくシンプルな形をした剣を2本取り出した。2本とも同じ形状だった。
アギルは輪っかと剣を1つずつ俺たちに渡した。
「私はここからはあまり干渉しないでおくよ。どうしても困ったらここに戻っておいで。導いてあげるから。」
アギルがそう言うと、いきなり後ろの扉が開いた。
「いろいろとありがとうな。それじゃ」
別れの言葉を簡潔に済ませると俺は外に出た。摩耶も続いて短い別れの言葉を言うと外に出てきた。
「さてと、どうするか。」
行き先が無限大過ぎてどうにも困ってしまった。
まずは無闇に街の外に出るより、街の中で色んな情報をかき集めた方が得策かな。
「どうする?俺達協力するか?」
とりあえずそれとなく摩耶に話を振ってみた。
「いや。私は私なりに頑張る。あなたの協力なんていらないわ。」
そう言って摩耶はつかつかと歩き出した。
ったく。つくづく強がりな女だ。こんな状況になってもまだ虚勢を張るのかよ。はいはい。分かりましたよ。俺もあんたといない方が楽だ。
俺たちは道をお互いに反対方向に歩き始めた。これであいつともしばらくおさらばだ。
アギルやシュバルには感謝しているが、あの女はどうもいけ好かない。だから摩耶とは別れの言葉も交わさずに別れた。
歩きながら貰った輪っかを腕にはめ、剣を腰に携えた。
しばらく街の中を散策していると街の広場に出た。
さっきと同様に広場には市場が開催されていた。市場には色んな物が売ってあった。武器や食料、果ては奴隷なんかも売買されているのを見て、人間ってのはどこの世界に行っても同じだなと感じた。
市場をフラフラと散策してる内に住人達の会話を少しずつ盗み聞きしていった。
どうやらこの世界の通貨はギルと言うらしい。
『ギルド管理局発行万物引換通貨』略してギル。
ふと、今は全然この世界のお金を持ち合わせていないことに気がついた。
しまった。アギルに少しだけ貸してもらうべきだった。
しかし、今戻っては何かきまりが悪いような気がしてならなかった。
お金を稼ぐには何をするのが一番早いのかと悩みながら散策していると、いつの間にか広場の掲示板の前に来ていた。
掲示板にはお尋ね者や、ギルド勧誘の紙なんかが貼り出されていた。
流し目でなんとなく見ていると、ある一枚に目が惹かれた。
実力至上主義ルド
加入条件  特に無し
備考  超高難度の依頼をこなしていくので自信の無い人は受け付けてません。
自分の力に自信がある人のみ加入して下さい。
名前がダジャレ臭いのと、加入条件特に無しなのに備考で自信がある人のみって言っちゃってるあたりいろいろと突っ込みたくなる気もするが。
使ってる紙の材質がひと目で違うと気づいた。黒い紙に白い文字で書いてあったら目立たないわけがない。
「なぁあんた。このギルドに加入しようとしてるのか?」
ギルド勧誘の紙と睨めっこしていると、いきなり後から声がかけられた。
声の主の方を向くと2人の女性が立っていた。
えーと、今話しかけたのはどっちだ?
「えーと、まぁそうです。はい。」
声をかけてきた方が分からなかったので、なんとなく2人に向かって答えた。
「ふ〜ん。ついて来な。」
品定めでもするかのような目でジロジロ見られて、ついて来るように指示された。 どうやらこのギルドについて何か知ってるらしい。
とりあえず素直に2人について行くことにした。
2人の後をついて行ってると、いつの間にか2人の事を見失ってしまった。
少し立ち止まって辺りを見回した。そして少し考えた。
これは恐らく試されてるなと。
今この場に2人を呼ぶ事なんて出来やしないだろう。常識外れだと思うだろう。実際俺も思った。
その時ふと思い浮かんだ。俺の能力は『外の力を行使する能力』である。
俺は2人を呼び出すなんて常識『外』れだと思う。
そんな常識の『外』の
『力を行使する。』
いきなり俺の目の前にさっきの2人が現れた。2人は全く慌てる様子は無く、俺の方を静かに見据えた。
「合格だ。ギルドの参加を認めてやろう。」
1人がそう言うと、もう1人が懐から紙を一枚取り出し、そしてその紙を地面に落とした。
紙が地面に着いた瞬間、紙に描かれた魔法陣が一瞬にして俺を含む3人の足元に展開した。
「転移・アジト」
そう聞こえた次の瞬間、俺らは街から消え去っていた。
俺はさっきまで街中にいたが、一瞬にしてどこかの建物の中に来ていた。が、別に何も驚かなかった。
「今はほとんど皆出かけていて特に何も出来ないから、とりあえず君はあの右から2番目の部屋を使ってくれ。これからは君の自室だ。皆が帰ってくるまで自由にしてていいぞ。」
とりあえず指示された通り右から2番目の部屋に入った。
部屋の中は生活するために必要な家具は一通り揃っていて、生活には困らなさそうであった。嬉しい限りである。
「家具を揃える面倒が省けたな。」
腰につけていた剣を外し、扉の横に置いてあるボックスの中にしまい、そのままベッドにダイブした。
「少し寝るか。」
結局俺らは自分自身を探す旅に出ることに決めた。
この世界で消滅してしまうくらいなら頑張って自分集めした方がマシだと思ったからだ。
ただ出された謎の液体が死ぬほど不味かった。俺が今まで口にしたものの中で頭100個程飛び抜けた不味さだった。
出来る範囲で表現するなら、薬品っぽい風味に、歯磨き粉と、漢方と、青汁と、納豆と、チーズと、パクチーと、ゴムと、革と、もんじゃ食った後のゲロと、真夏の暑い中放置して発酵したスポーツドリンクを、全てポリバケツぶちまけて混ぜたみたいな味だった。
いや、正確には違う。ホントはこの表現でも足りないくらい不味かった。とにかく不味かった。口に含んだ瞬間顔面が一瞬にして中央に寄った。
しかも飲み方もなかなか鬼畜で、肺で飲めというものだった。
一瞬耳を疑ったが、指示通り頑張って肺に入れ込んだ。
最初は何回か咳き込んで嗚咽とゲップを繰り返し、涙目になりながら少しずつ入れていった。後半はもうヤケクソだった。
摩耶の方も相当苦労したらしく、俺の倍近くの時間をかけて飲みきった。
これに関しては倍早く飲んだ俺は勝ち誇る気持ちにすらなれなかった。
不味いし飲み方も難しいし、これ程飲み物を恨んだのは生まれて初めてかもしれない。
とにかく飲みきったあとは自分の体はもう半透明じゃ無くなっていた。いつもの肌に戻っていた。
自分の肌を見るのがとても久しぶりなような気がした。
自分の肌を少しの間マジマジと見つめてるといきなりおでこをバン!と押されて驚いた。
いきなり視界が真っ白になり少し狼狽したが、どうやらアギルが俺のおでこに何か紙のようなものを貼り付けたらしい。
「なぁ......これも何か意味があるのか?」
変な飲み物を変な飲み方で飲まされた後だったので、この行為にも何か意味があるような気がしてアギルに質問した。
「これはあなた達の能力を知る為にしてる事よ。あの液体を飲んだ人間は何かしら自分自身の中で目覚めさせる傾向があるの。今あなた達のスペックを測ってる。少し待ってて。」
ちらりと目を右に向けると摩耶も同じ状態だったので、思わず噴き出しそうになってしまった。
いけないと思いすぐに目を背け、1人で笑いをこらえていた。
笑いをこらえていると、いきなり紙が取られ視界が元に戻った。
どうやら俺のスペックが出たらしい。気にならないことも無いが、何か自分自身のスペックを見ることを少しだけ恥ずかしく感じ、さも興味なんて無いですよという感じを装った。
「なるほど......こりゃ面白い。爪跡くんも摩耶ちゃんもね。」
面白い?どういう意味だよ。
少し身を乗り出して自分のスペックが書かれた紙を覗き込んで見た。
痣剥 爪跡
性別 男
身長 167cm
体重 57kg
年齢 17歳と2ヶ月
欠落度 72%
能力  外の力を行使する能力
......なんかぼんやりした感じだな。
「なぁ欠落度ってなんだ? この72%ってやつ。」
「あぁそれは君たちが失った欠片の割合だよ。爪跡くんは72%失ったという意味だね。だから今は元の28%しかない。」
なるほど。あと72%分の自分を集めればいいわけか。
「......69%か。頑張らなきゃな。」
隣でぼんやりと摩耶が呟いた。なんだよ俺より失って無いのかよ。
少し不満に思い、摩耶のスペックを覗き込もうとした。
「ちょ、やめてよ! 女子の体重見るの常識外れだからね!」
知りたいのはテメーの体重じゃねぇよと思いつつ、自分の能力を試したいと思った。
外の力ってなんだろうか。外と聞いてイメージするのはなんとなく太陽とか空かな?
そう考えた途端、右手の掌にいきなり小さい太陽が出現した。
「お! わ!」
いきなりの出来事だったので、驚いてしまい右手の掌に出現した太陽を消そうと反射的に思った。
次の瞬間には右手からは小さい太陽は消えていて、あとに残ったのは眩しい光を見た後の視界に残るモヤモヤだけだった。
なるほど、こういう感じなのかと自分に目覚めた力に少し戸惑いつつも、段々と理解を深めていこうかと考えてた矢先。
いきなり何かが割れる音がした。
音がなった方向を見てみると、窓ガラスが割れて床に散らばっていた。
そのすぐ横に割れたガラスを見て戸惑っている摩耶がいた。
「なぁ。これお前がやったのか?」
「そうかもしれない。」
自分の力に対する理解が乏しいのは彼女も一緒のようだった。
「それが君たちに目覚めた力だよ。その力を使ってこの世界を生き延びてくれ。」
全てを知ったような雰囲気でアギルは優しく俺たちに語りかけた。
そしてアギルはおもむろに立ち上がり、部屋の奥にある扉を開けて奥に行ってしまった。
アギルがいなくなり2人だけになった部屋は少し変な空気が流れていた。
事故とはいえ、お互いとんでもない状況に放り込まれてしまった。
生き残るには協力した方が得策か、そんな事を少し考えているとアギルが奥の部屋から戻ってきた。
「さて、冒険に出る前にいくつか教えてあげよう。」
そう言うとアギルはテーブルの上に置いてあった2つのコップを片付けて、テーブルの上に地図を広げた。
「この世界には色んな種族が住んでいて、色んな組織も存在する。生き延びていくには敵に回さない方が得策なのは理解できるよね?」
まぁ賢い人間のする事ではないわな。無駄に敵を増やしても後で面倒になるだけだ。
「この世界には色んな組織が存在する。大小規模は様々だけどこの世界の住人はお互いに助けあって生活してる。
この世界には人間や近人間種族以外に魔物なんかが沢山いる。
君たちの世界にはいなかっただろうから、あまり馴染みは無いだろうけど。」
アギルは話しながら、テーブルの下から輪っかのような物を2つ取り出した。俺たちはそれに見覚えがあった。シュバルが持っていた物と同じだ。
「君たちがどこかの組織に属するか、一匹狼で孤軍奮闘するかは自由だ。
旅の出発を祝って君たちにこれも送ろう。」
アギルは後ろの箱からすごくシンプルな形をした剣を2本取り出した。2本とも同じ形状だった。
アギルは輪っかと剣を1つずつ俺たちに渡した。
「私はここからはあまり干渉しないでおくよ。どうしても困ったらここに戻っておいで。導いてあげるから。」
アギルがそう言うと、いきなり後ろの扉が開いた。
「いろいろとありがとうな。それじゃ」
別れの言葉を簡潔に済ませると俺は外に出た。摩耶も続いて短い別れの言葉を言うと外に出てきた。
「さてと、どうするか。」
行き先が無限大過ぎてどうにも困ってしまった。
まずは無闇に街の外に出るより、街の中で色んな情報をかき集めた方が得策かな。
「どうする?俺達協力するか?」
とりあえずそれとなく摩耶に話を振ってみた。
「いや。私は私なりに頑張る。あなたの協力なんていらないわ。」
そう言って摩耶はつかつかと歩き出した。
ったく。つくづく強がりな女だ。こんな状況になってもまだ虚勢を張るのかよ。はいはい。分かりましたよ。俺もあんたといない方が楽だ。
俺たちは道をお互いに反対方向に歩き始めた。これであいつともしばらくおさらばだ。
アギルやシュバルには感謝しているが、あの女はどうもいけ好かない。だから摩耶とは別れの言葉も交わさずに別れた。
歩きながら貰った輪っかを腕にはめ、剣を腰に携えた。
しばらく街の中を散策していると街の広場に出た。
さっきと同様に広場には市場が開催されていた。市場には色んな物が売ってあった。武器や食料、果ては奴隷なんかも売買されているのを見て、人間ってのはどこの世界に行っても同じだなと感じた。
市場をフラフラと散策してる内に住人達の会話を少しずつ盗み聞きしていった。
どうやらこの世界の通貨はギルと言うらしい。
『ギルド管理局発行万物引換通貨』略してギル。
ふと、今は全然この世界のお金を持ち合わせていないことに気がついた。
しまった。アギルに少しだけ貸してもらうべきだった。
しかし、今戻っては何かきまりが悪いような気がしてならなかった。
お金を稼ぐには何をするのが一番早いのかと悩みながら散策していると、いつの間にか広場の掲示板の前に来ていた。
掲示板にはお尋ね者や、ギルド勧誘の紙なんかが貼り出されていた。
流し目でなんとなく見ていると、ある一枚に目が惹かれた。
実力至上主義ルド
加入条件  特に無し
備考  超高難度の依頼をこなしていくので自信の無い人は受け付けてません。
自分の力に自信がある人のみ加入して下さい。
名前がダジャレ臭いのと、加入条件特に無しなのに備考で自信がある人のみって言っちゃってるあたりいろいろと突っ込みたくなる気もするが。
使ってる紙の材質がひと目で違うと気づいた。黒い紙に白い文字で書いてあったら目立たないわけがない。
「なぁあんた。このギルドに加入しようとしてるのか?」
ギルド勧誘の紙と睨めっこしていると、いきなり後から声がかけられた。
声の主の方を向くと2人の女性が立っていた。
えーと、今話しかけたのはどっちだ?
「えーと、まぁそうです。はい。」
声をかけてきた方が分からなかったので、なんとなく2人に向かって答えた。
「ふ〜ん。ついて来な。」
品定めでもするかのような目でジロジロ見られて、ついて来るように指示された。 どうやらこのギルドについて何か知ってるらしい。
とりあえず素直に2人について行くことにした。
2人の後をついて行ってると、いつの間にか2人の事を見失ってしまった。
少し立ち止まって辺りを見回した。そして少し考えた。
これは恐らく試されてるなと。
今この場に2人を呼ぶ事なんて出来やしないだろう。常識外れだと思うだろう。実際俺も思った。
その時ふと思い浮かんだ。俺の能力は『外の力を行使する能力』である。
俺は2人を呼び出すなんて常識『外』れだと思う。
そんな常識の『外』の
『力を行使する。』
いきなり俺の目の前にさっきの2人が現れた。2人は全く慌てる様子は無く、俺の方を静かに見据えた。
「合格だ。ギルドの参加を認めてやろう。」
1人がそう言うと、もう1人が懐から紙を一枚取り出し、そしてその紙を地面に落とした。
紙が地面に着いた瞬間、紙に描かれた魔法陣が一瞬にして俺を含む3人の足元に展開した。
「転移・アジト」
そう聞こえた次の瞬間、俺らは街から消え去っていた。
俺はさっきまで街中にいたが、一瞬にしてどこかの建物の中に来ていた。が、別に何も驚かなかった。
「今はほとんど皆出かけていて特に何も出来ないから、とりあえず君はあの右から2番目の部屋を使ってくれ。これからは君の自室だ。皆が帰ってくるまで自由にしてていいぞ。」
とりあえず指示された通り右から2番目の部屋に入った。
部屋の中は生活するために必要な家具は一通り揃っていて、生活には困らなさそうであった。嬉しい限りである。
「家具を揃える面倒が省けたな。」
腰につけていた剣を外し、扉の横に置いてあるボックスの中にしまい、そのままベッドにダイブした。
「少し寝るか。」
コメント
ダン
地の文開けておっと読みやすいなって思えました!
でもそのあと納豆の話からの文が長いですね〜
あと良いところー
っーぶはっ!! ってさせてくれる言葉使いの表現確かいちはで…
逆流してそれを飲み込んだような顔っー!
確かこんな表現してたと思いますが笑
そんな顔だよそれ笑笑
って何か面白かったです笑