そのお面の下は。

ノベルバユーザー168745

未知の少年

洞窟は思ったより長かった。
これが近道だったら普通の道はどんなに長いのだろうと考え、果てしなさを感じ考えるのを辞めた。
洞窟を抜けたと同時にティオが声を掛けた。

「ネア、大丈夫?」

「だ、大丈夫…よ…で、でも…ティオは疲れてるんじゃ…ない…休んでも良いわよ…」
途中競争で走ったのもあり、肩で息をする。
もう13になると言うのに情けない。

「え?大丈夫だよ僕まだ歩ける…」

「ティオ!」
察しなさいよ!と言うふうに視線を投げると
ティオはあぁ、と小さな声で呟きわざとらしく

「あーあー!疲れたー!休みたいなー休憩しよー!」

「…(イラッ)…そうだねー!もうそろそろお昼時だし丁度良いわねー!じゃあ休憩しましょうかー!」

昼のご飯はティオがあらかじめ持ってきたサンドイッチだった。
レタス、トマト、キュウリ、目玉焼き、干し肉…パンから溢れんばかりの野菜や肉がぎゅうぎゅうに挟んであった。野菜はみずみずしく、目玉焼きは少女が好きな黄身が固めのやつで肉はジューシーだった。

二人はお腹が膨れ、草むらに寝転がった。
日の光が熱くなく、かといって寒くもなく、少女達の眠気を誘うぐらいの丁度良い温度だった。

少女は、寝転びながら近くの花に手を伸ばした。
少女の家の近くにあった森とは違う色、違う感触がした。

少女の家の近くの森は、暖かかったが、少女の心を寂しい気持ちにさせた。だが、この森は違う。暖かく、居心地がいい。少なくとも、少女を一人にはしない。そんな気がした。

と、側にあった木の陰から白い兎が飛び出して来た。そのまま逃げるのかと思いきや少女に近づき頰を擦り寄せて来た。ふわふわとした感触が頰に触れる。

その瞬間、少女は幸福になった。溢れんばかりの暖かい思いが、少女を幸せにした。
少女は笑った。幸せだからだ。笑った。あぁ、最後に笑ったのはいつだろうか。今住んでいる家に住み始めた時だろうか?それともこの村の人々に拾われた時だろうか?どっちにしろ久々に少女は笑った。いや、初めて少女は笑ったのである。

笑い声に驚いたのか兎は姿を消してしまっていたが、またいつか会えると何故か思った。



少女がいる場所からそう離れていない場所にある山の頂上にあの白い兎がいた。

と、次の瞬間。白い兎は少年に変わった。だが、普通の子供ではない。目は赤く、髪は白と灰色で後ろに束ねてあり、服は誰もがみたことないと言うであろう白と青の服に金色の龍が右袖に刺繍されてあった。そして何より目を引くのは背中に生えた白色の大きな翼だった。

そして、少年らしき人物はこう言った。誰にも聞かれないような小さな声で。



「ミシリア…9年ぶりだね。」

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