インカイゼル戦記

虎丸リウ

第13話 覚悟

第13話

Raika Story

一方観月と共に早朝から出かけている雷火。
B市にある喫茶店でのんびりとお茶を楽しんでいた。

「あー…なんかいい案転がってないもんかねぇ…」

「あはは…ほんとに落ちてたら楽でいいんですけどね…」

楽しんでいた…?

「封印を解くって出来ないんですか?」
「封印石を預けちゃってる上にその預けた人物はそれを守るために身を隠してるからなぁ…」

政府との対立、という現実が重くのしかかる。実際問題勝ち目が無さすぎる。

「「はぁー…」」

大きなため息は重なる。
ふと窓の外に目をやるとフードを被った人影を見つけた。

「悪い観月、少し待っててくれるか。」

「え?あぁわかりました…?」

早足で外に飛び出しフードを追う。
その姿には見覚えがあったからだ。
フードは大通りからどんどん外れ人気のない路地に進む。
その先で待ち構えていたのだ。

「…まさか日本に居るとはね…ゼクス。」

「今はその名で呼ぶんじゃねえよタコが、てめえの任務は中国との戦争を止めることだろうが。なんで全面戦争になってんだ?」

そう、オレが日本に来るきっかけを作ったフード二人組の一人、コードネームアルヴァである

「クロノスに勘づかれてな。予定が変わったんだよ…」

「チッ…なるほどな…まぁそれも奴には想定内だろうが…どうするつもりだ。」

「何とかなるよ。うちの仲間はなかなか粒ぞろいだから。」

「なんだ、随分仲良くやってるみてえだな。まあいい、プランCに以降だ。手筈通りやれよ。」

「へいへい。」

途端にフードの男は屋根に上り屋根を飛び移り消えていった。
話を終え観月の待つ喫茶店へ戻ると顔色の悪い観月が座っている。

「おまたせ。なんかあったか?」

「た、隊長!大変です、今連絡があって本部に中国の劉李飛がきたって!」

劉が!?もう攻めてきたのか?いくら何でも気が早すぎる!

「そりゃまずい。すぐに戻ろう」

「それが…戦う意志は無いらしくて交渉しに来ただけだって…」

「交渉…?」

「どういうことでしょう…」

何となく読めたかな…

「大方、オレを売れば日本は救うとか言う話じゃないか…?」

紅茶を頼むとサービスで付いてくるお手製クッキーをかじる。
甘さ控えめで紅茶にあうなぁ…おいしいー
などと思っていると観月は急に立ち上がるのです。

「そ、それどういう事ですか!?」

「びっくりしたぁ…話の通りだよ、奴らはオレの力が欲しいんだからそれが手に入れば日本に興味はないのさ、それを種に交渉しに来たんだろうね。」
 
計算外の話ではない、日本という国にとってはこれ程都合のいい話はない。オレ一人か日本の全国民を天秤にかける事で精神的に追い詰める腹だろう。

「そんな…」

「どんな結果になろうとオレはそれを受け入れるさ、というかオレを売る方が正しい選択だよ。」

もっとも国か一人の人間かを選べと言われたら国を守るための選択をするのが普通だ。
それを分かっててその選択を強いる連中もやり手だな。

「私は…隊長を守ります、たとえ全てを敵に回しても。」

「…守る…か…」

その一言はオレの心深くに突き刺さる。かつて師とも呼べる男にずっと守られてきた、力がないばかりに。だが今は違う、何かを守れるだけの力がある。

「…ありがとう、頼りにしてるよ。瑠依」

オレのために命を張る必要は無いよ、何があっても仲間は守る、『あいつら』に教わったんだ。

「はい!任せてくださ…い、いま名前で呼びました!?」

「あっ、悪い、ついな」

「い、いーんです!むしろ嬉しいです!」

少し赤くなりながら腕をブンブンと振り回す瑠依

「そりゃ良かった、気安く名前で呼ぶなー、なんて言われたらどうしようかと思ったよ」

「そんなことありえませんから!その代わり一つお願いが…私も名前で呼んでも…いいですか…?」

もじもじと上目遣いで問われるといいえとは言えない、そもそも拒否する理由もないが。

「当たり前だろ、好きに呼んでくれていいよ。仲間だろ?」

歓喜の表情が一瞬だけ濁る。

「そうですね、仲間…ですもんね…」

その言葉の意味は今のオレには理解できなかった。

「本部に戻ろうか。」


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