インカイゼル戦記

虎丸リウ

第7話 守るべき者

7話

Common Story



「こっちは終わったで、大和」

「ああ、そろそろ終わりにしよう、如月よ」

天馬は外に吹き飛ばされ安否が分からない、如月は真堂を背に薙刀を構える。

「もうよせ…これ以上犠牲はいらん…!天馬の元にゆけ如月ぃ!」

横たわり力なく真堂は言う。

「あなたを守ることがあの子の意志です…それに…先輩達が道を踏み外したのなら、それを正してみせるのも部下の…弟子の役目だから…!」

私は入団した頃、武術の才には恵まれず能力もそれほどのものでは無かった、自然と落ちぶれて行く私に声をかけ騎士として生きる道をくれたのはあの二人だった。少なくともあの時私に声をかけ騎士としてのあり方を説いてくれたのは先輩達。

「例え今までの時間がまやかしだったとしても…あなた達の教えてくれた騎士道まで嘘だったとは思えない…!」

「…お前も騎士なら敵を見定めよ、戦場では迷ったものは死ぬ。そして改めて言おう、貴様の前にいるのは紛うことなき敵だと。」

「それでも私にとっては…一番尊敬する師匠です…」

「くだらん…お前は何も分かっていない…ならばその敬愛する俺に殺されてもいいというのだな!!」

如月に向かい怒りを露わに突っ込む大和。

「元より死ぬ覚悟は出来てます、でも…」

薙刀を振り抜き大和の剣と激しくかち合い火花を散らす

「この命に変えてもあなた達を止める!!」

「…フッ…それでいい!」

ニヤリと笑い薙刀を弾くとすぐさま次の攻撃に移る。
斬撃をかわした如月だが逆の手での打撃面を喰らう。

「くっ…」

その腕を掴み髪を結っていた髪留めをその腕に突き刺し反撃をする

「この髪飾りは…」

「あなたが訓練の邪魔にならないようにと私にくれたものです…そしてこれが…私の切り札!」

体内の全てのマナを大和の傷口に集中させる。

「これは…!」

「私の能力は傷をいやす能力じゃない、傷の度合いを操る力!少しの切り傷でも触れさえすれば致命傷にする事も出来るの!」

みるみる大和の傷は広がり激痛が襲う。

「ぐあああああぁ!」

傷を抑え立ちすくむ。

「さよなら。師匠…」

薙刀で一閃、大和を切り裂きそのまま大和は倒れる

これで暫くは動けない…あとは武蔵さんだけ…でももうマナが残って…。

「いやぁお見事やな。ええもん見せてもらったわ。せやけど遊びは終わりや。な!」

マナを使い切り体の自由がきかない、その中武蔵は如月を蹴り上げ腹部に強烈な掌底を放つ。
壁に叩きつけられ満身創痍となる如月、その限界の体を這わせて真堂の前に再び立ち上がる。

「ま…だ、終わって…な…」

「悪いなぁ…如月、もう戻れへんねん…なぁ?大和。」

夢か幻か…そこには倒したはずの大和が立っていた。

「見事な攻撃だったよ…強くなったな、お前には…こんな姿を見せたくはなかった、すまない。」

「し、しょう…?…っ!」

胸には剣が深く刺さり如月は倒れた。

「相変わらず甘ちゃんやな、わざとやられやがって」

「如月の思いだ、よけてはならんと思ったまでだ。」

そのすぐあとに司令部の扉が蹴破られ一人の男が突っ込んで来る。

「おいでなすったか…飛鳥ぁ!」

「そこをどけえええええェ!!!」

闘気を纏い二人に切りかかり二人は距離をとる。
すぐさま如月に近寄る。

「おい!如月!しっかりしろ!!!おい!!」

「…飛鳥…?ごめんね…負けちゃった…団長は守ったよ…だから…あと宜しく…ね…?」

手を握り如月は笑うとそのまま気を失った。

「あァ…任せろ…」



遅かった…もう少し早ければ天馬も如月もこんな目に会わなくて済んだものを…

「今更お前一人来た所で何も変わりはしない、お前の実力も俺達が一番よくしっている。如月を連れて逃げることを勧める。」

「いきなり過ぎて状況が全くわかんねえが…なんの冗談だこりゃ…」

「同じ説明何度もするんは勘弁やが、ワイらは別の組織の人間で団長の命取りに来たっちゅーことや。」

詳しくは分からないがこの状況を見ればあいつらが天馬や如月をやったことは明白だ。理由なんざどうでもいい、今はこいつらをどうにかしねェと!

「如月はてめェの弟子じゃなかったのかよ…大和ォ!!」

「…死ぬ前に最後の教えを説いたさ、師匠としてな…!」

二人は武器を構え間合いを詰める

「もう、俺の知るお前らじゃねェってことか…なら…俺が斬るのはただの反逆罪の敵ってことでいいんだなァ!」

「その通りやが、やれるもんならやってみぃや!」

二対一、明らかに不利な状況だが大和は如月の決死の力で傷を負っている、付け入る隙があるとすればそこだ…あとは頼りたくはねェがあいつが来てくれるまでの…
そうじゃねェだろ!俺はもう…負けねェ!!

「油断するなよ武蔵!仮にも日本の最高戦力だ!本気で行くぞ!」

「わーっとるがな。そりゃ!」

ペンデュラムを飛ばし飛鳥の動きを制限し大和が切りかかる

「ちぃっ!」

大和の斬撃を刀でいなしペンデュラムを掴み武蔵を引き寄せまとめて斬ろうとするがら武蔵はひらりとかわし掌を飛鳥の胸に当てると思いっきり後ろに吹っ飛んだ。

「な…にぃ…」

なんだ今のは…衝撃波…?

「がはっ…おいおい…戦闘は苦手じゃなかったのかよ…糸目ニヤけマン…」

「設定守るんは苦労したでぇ?ようやく発散できるわ。」

「おまけに随分とおもしれェ能力まで隠してやがって…」

「バレたかいな、せや、わいの能力はマナを衝撃波に変えて放つことが出来る、例え直接触れずともお前の体には確実なダメージが残るっちゅーことや。」

思いのほかダメージがでかい、外傷はそうでもないが蔵に直接的きやがる…何発も受けたらやべえ…

「悪いがこれは一対一ではないぞ…?」

咄嗟に振り向くと大和が攻撃モーションに入っていた。
刀で弾きパンチを繰り出し大和を退ける。
狙いを見定め即座に武蔵を攻める、衝撃波を放ち少しすつダメージを受けるがお構い無しに切りかかる、ペンデュラムが刀を絡めとり手元を離れる。

「てめェのパンチじゃ俺には響かねえぞ!糸目野郎がァ!!」
 
刀を使わず武蔵を思いっきり殴る。 

「くがっ…剣士ちゃうやんけ…」

吹き飛ぶ武蔵だが血を吐いて膝をついたのは飛鳥だった。

「奴の衝撃波はじわじわとお前の内蔵を痛めつける。勝負ありだ。」

大和の剣技が飛鳥を襲う。

「へっ…なめんじゃねェよ!!」

闘気を纏う刀で大和を吹き飛ばす。

「闘気か。厄介な…」

「まだまだ戦いはこっからだろうが…かかってこいやァ!」






曇天の中土産屋をハシゴする二人の騎士。

「これは如月、これは飛鳥。あとは真堂にも買わないとね」

「こ、こんなに買うんですか…早くしないとA市便でちゃいますよぉ」

深月は呆れ顔で紙袋を沢山抱えている

「折角遠出してきたって思うとつい買っちゃうよね、これでよしと!」

両手に大量の荷物を抱えた二人は店をあとにし空港へ向かう。

「いやぁ悪いね、荷物持ち手伝ってもらって」

「いえ、修行のお礼もありますし。その肩じゃ大変だと思いまして…一緒に買い物出来て楽しかったですよ」

ニッコリと笑顔をむける深月

「A市まで3時間弱はかかりますし、お弁当とかも買いますか!」

「そーだね、何が食べたい?」

「あっ、おれカツ丼弁当がイイっす!」

「はいはい、カツ丼…ってお前だれだ!」

さりげなく会話に混ざりこんできてびっくりした…

「やだなぁ、忘れちゃったんすかー?おれっすよおれ!勝男っす!」

勝男、以前オレにボコボコにされたかつあげ君だ。何でこんなところにこいつが…てかこいつこんなウザキャラだったか…?

「そ、それで勝男さんはどうしてここに?」

「あぁんクラァ?だれだてめぇわぁー?誰の許可得てここにおるんじゃいぃ??」

「えっ、あの。ごめんなさい。」

「謝るなよ…この子は深月、訳あって任務に同行してもらってる、オレの自慢の教え子だよ。」

「そうなんすか!それなら早く言ってくださいよー、人が悪いなぁアニキぃ」

殴りたいと思う衝動を抑え疑問を投げる

「んで、何しにきたのさ」

「そうなんす!神宮隊長から伝言頼まれてたんすよ!緊急だそうで!大至急本部に戻れとのことっす」

飛鳥が?あいつ戻っていたのか、ただ事じゃなさそうだけど…

「何があったんだ?」

「詳しくはおれもわかんないんすけど、御堂先輩がボコにされてましてね、訳を聞いても何も話してくれないんす。」

天馬が…いったい誰に…何が起きているのかさっぱりだな。でもあいつが俺を呼ぶってことはやばい匂いがするな…

「てかそれいつの話なのよ」

「1時間前の話っす!」

「1時間!?どんなに早くても飛行機で3時間はかかりますよ!?」

深月の言う通り、A市からe市はかなり距離が離れていて基本空の便を使って移動する。ジェット機をつかっても3時間近くはかかるのが普通だ

「ふふふーん、それはおれの能力が無せる技なんすよ!」

「お前能力者だったの…」

「すばりおれの能力は1度記憶した場所にポータルを作ることでその場所に行き来できる能力っす!すごいっしょ!」

確かに便利な能力だ、戦闘向きとは言い難いけど…

「そりゃすごい、じゃぁその能力で本部までつれてっておくれ」

「それがおれのマナじゃ片道分しかポータル維持出来なくて!さーせんっす!!」

前言撤回、役に立たん。
片道だけって不便極まりねえよ!なんの意味があんだよ!
というツッコミは心でしつつ

「…まぁ。なんとなくそんなオチだとは思ったよ…。」

然しながら嫌な予感がする。今から普通に戻ったら手遅れになる、そんな気がする…マナの消費は激しいけどアレをやるか…。

「深月、荷物をたのむ、ゆっくり帰っておいで。勝男、深月を頼むよ。」

「えっ、えっ?」

雷火の身体をバチバチと雷が纏う。
大地を蹴り走り出すとそこにはもう雷火の姿は無くなっていた。

「えっ、えっー!?」



二対一で善戦する飛鳥、大和と武蔵の連携に苦戦を強いられる。
何より武蔵の攻撃で自らの攻撃でさえダメージになってしまう、おまけに大和はまだ能力を使ってはなく、絶望的な状況の中、ピンチに燃えるのもまたこの男。

大和の剣を捌く飛鳥に容赦なく追撃を行う武蔵だったがある異変に気づく。

「こいつ…もう何発入れてるとおもてんねん…普通なら立ってられるはずが…」

「へっ、気づくのが遅かったな」

呆気に取られた武蔵に今まで以上に鋭い一撃を放つ。
風月を抜き武蔵の懐深くに切り込んだ。
血しぶきを上げ跪く武蔵。

「この短期間でマナのコントロールが格段に…いったいこいつに何があったんや…」

以前ライカに言われたマナの使い方という課題をクリアし武蔵の能力を軽減していた、無論ダメージが無い訳じゃないが隙をつくことが出来た。
そこで大和が前に出る

「二対一とはいえ油断していたようだ…貴様には、手加減など必要ないだろう…ゆくぞ…神宮飛鳥!」

きやがった…『猛獣』と呼ばれる奴の能力が…! 
みるみる大和の姿は変貌し獣のような姿になる、鋭い爪に牙を光らせ禍々しく雄叫びをあげる。
これが大和の能力…獣人化!
だいぶ体にガタが来てるこの状況でこれとやり合うのは相応の覚悟が必要だな…だが関係ねェ、俺は上り詰めてやる、高みへ…!


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