インカイゼル戦記

虎丸リウ

第2話 イギリスの使者

2話

Raika Story

「日本に?構わないけどどうして突然?」

イギリスの寺院跡にローブ姿の人物が二人、そのうちの一人にとある任務も課せられる
日本騎士団に入り中国とのいざこざに終止符を打てとのことだ

「このままでは遅かれ早かれ中国と日本はぶつかる、母国が滅ぶのはお前も困るだろう」

「そりゃいい気はしないけど…中国と日本がぶつかり合っても日本に勝ち目はないでしょ、それに俺一人助太刀してもなにも状況は変わらないと思うんだけど…」
そう、日本と中国には圧倒的に戦力が違う、その上イージスまでいるとなると結果は目に見えている。

「日本には腕の立つ『侍』がいるらしい、会ってみて損は無い筈だ、お前のためにもな」

「へぇー、それは楽しみかも、まぁやれるだけやって見るよ」

「こっちの仕事は俺に任せとけ、ウルフ」

もう一人のローブが口を開く

「お前の心配などするものか、信頼している、アルヴァよ」

ウルフと呼ばれたローブはそう言うとアルヴァを退席させる。

「日本支部へはイギリス騎士団からの転属という事にしておく、わかってるとは思うが…」
何かを危惧するかのようにしているが。
「分かってるよ、『時が来るまで』は俺達の素性は隠せって言いたいんだろ?」
オレはある組織に所属している、騎士団ではない。ウルフ曰く『時が来るまで』は正体がバレてはいけないというのだ。
「お前にとって得るものは大きい筈だ、頼んだぞ、レイシス」

「了解」
レイシス、そう呼ばれたオレは寺院をあとにした。
レイシスというのは組織でのコードネームでありアルヴァ、ウルフも同じである。
オレは組織に課せられた任務を真っ当すべく日本に向かった…

この時のウルフは全てを見透かしていたのかもしれない。
俺の運命を変える出会いがあることを…



13年ぶりとなる日本への帰国、オレは日本で生まれたが7歳で不幸に会いイギリスに渡った、今はあのころを不幸だと思うことも少なくなったかな。
今の日本は中国との均衡状態が1年近く続いている、そもそもなぜ中国と日本がこんな状態なのかと言えば、中国マフィアによる日本人拉致、そして虐殺。それに激怒した日本のお偉いさん方が世界政府に講義をしたが聞き入れられることは無かった。日本の前騎士団が独断で中国に使者を送るも無駄に終わった、日本の蟠りは消えぬままに今に至るということだ。
普通そこまで理不尽な事をした中国に非があると思えるがそれを覆すことが出来るのがやはりイージス保有国という世界政府の強力な後ろ盾があるからであろう。
気に食わない、俺の嫌いなやり方だ。
今の日本は中国のイージス、劉李飛に手も足も出ない、それもそのはず、劉はイージスの中でも2nd、イージスの中で二番目に強い男だ
いつかオレも戦ってみたいものだ。

「たしかここが日本騎士団の本部だな…」
何重にもかかったセキュリティを超えなければならないが、ウルフから預かった日本支部のパスポートをかざし中に入る
なんかVIP感あって気分いいよね。
入ってすぐ日本の兵士であろうものに声をかけられた。

「見ない顔だな、新兵か?」

「イギリス騎士団からここに転属になった神崎って言えば伝わると思うのですが、騎士団長に取り次いでもらえますかね?」
よし、割と丁寧に言えた、あまりかしこまった喋りは苦手だ、これもまた任務の一環か。
順調に事は進む…はずだった。

「転属だかなんだか知らねえが新参如きが天下の真堂団長に会えるかよ!イギリスじゃ通用しねえから日本に来たんだろうがここもあまかねぇんだよ!分かったか白髪頭!」

えぇ〜…
「あ、ああ、すみません、団長じゃなくても少し偉い感じの人でもいいんd

「てめえがここに相応しいかテストしてやるよ、俺に勝てたら認めてやる!しかし負けた時は大人しく帰んな!そうだな、それからその得物置いてってもらおうか」

要するにカツアゲなのかこれは…
天下の騎士団が蓋を開ければこれか、困ったものだね。

「オレもこいつ持ってかれるのは困るからなぁ…相手になるよ、怪我しない程度にね」
「上等だコルァ!!!」

どうしてこうなった…

すぐに広場へ移動し戦ったのだが…

「あべし!!!」

特に書くこともなく呆気なく勝利…
何がしたかったんだこいつ…

「俺に勝つとはやるじゃねえk」

「か~つ〜お〜く〜ん〜????」
勝男はひどくびっくりしたような怯えている、その後ろには鬼の形相で仁王立ちをする男が一人
ていうか名前勝男っていうんだ…

「たたたたたたたたたたたいちょー!!!これにはわけがあっt」
「いつもの訓練メニュー10倍だ、覚悟しとけ」
「ひえええええええすみませんでしたあああああああ!!!!」
勝男は逃げるかのようにすっ飛んでいった、まぁ、自業自得だわな。
「部下が失礼をした、私は春日大和と言う、君がイギリスから来てくれたという神崎殿だね?」
「あ、ああ、そうです。貴方があの『猛獣』の通り名を持つ春日隊長ですか、会えて光栄ですよ」
通り名とは騎士団である程度の戦果をあげると世界政府から送られるいわゆる称号である。イージスや色んな猛者達はこういう通り名を持っている。
「ははは、この年にもなって猛獣なんて呼ばれるのはいささか恥ずかしいんだがね、歓迎するよ、団長が会いたがっている、こちらへ」

春日に連れられ向かったのは司令部の一室だった

「よくきたな、待っていたぞ、神崎」
この男、日本支部の騎士団長真堂恭介、実は面識がある。
「しばし席を外してもらえるか、春日」
了解、と頭を下げ部屋から出ていく春日を確認したあと真堂は告げる
「久しいなレイシス、ある程度話は聞いている、正体がバレぬよう私も努力しよう、来てくれて助かるよ。」
「バレないように協力してくれるならコードネームで呼ぶなよ…まぁオレも目的があって来たしね、お互い様だよ」
かつて日本最強と呼ばれた真堂とは昔組織で面識があった
真堂のかつての通り名は『神槍』文字通り槍を扱う戦闘スタイルだった。今は老いて前線に出ることは無くなったが…
「すぐに隊長たちを集めよう、恐らくすぐに隊長就任してもらうことになる。」
来て早々に隊長に?絶対一悶着ありそうな感じだ。
通信で誰かを呼びすぐに扉が開く
「お呼びですか?」
「御堂、悪いが隊長達を緊急招集してくれるか?」
見たところ15.6歳だろうか、明らかにまだ子供だが御堂と呼ばれた少年は顔をしかめ口を開く。
「あ、あの、申し上げにくいんですけれど…バカの三番隊隊長がまた中国騎士となんかやったみたいで…先ほど楠先輩に連れ帰るようお願いしたんです…」
こんな状況で中国騎士とやり合うなんてよほどのバカか肝の座ったやつか、はたまたただの命知らずか…何にせよ面白そうな奴がいるな。
「またか…分かった、如月にはことを荒立たせないようにと念を押しておいてくれ」
了解、とまたまた頭を下げて退出していく
「との事だ、騒がしくて済まない、まだ時間がかかりそうだ、それまで施設の中を自由にしててくれ」
「そうさせてもらうよ」

オレは司令部を出ると木漏れ日の指す庭園のベンチへと腰掛ける、すると聞き覚えのある声が。

「あのー…先程はすみませんでした…あんなにお強いなら言ってくだされば良かったのにぃ」
あはあはあはと苦笑いをしながら言う、先程さらっと戦闘を飛ばされた勝男くんである
「だってこっちの話全然聞いてくれなかったじゃない」
嫌味たらしく睨みつけながら勝男のおどおどする姿を楽しむ。
趣味悪いかな?
「も、申し訳ございませんでした…これから隊長達と顔合わせするですよね!良かったら隊長達のこといろいろ教えますよ!」
ゴマでもすってるつもりなのか、なんとなく憎めないやつだ。まぁ時間もあることだし聞いてみることにしよう。

「じゃぁお言葉に甘えようかな」

「さすがは兄貴!はなしがわかるぅ!」

誰が兄貴だ。

「まずは我らの一番隊隊長春日大和さん!彼はこの騎士団きっての古株で今年38歳になるそうで、それなのに衰えを感じさせない戦いっぷりには男も惚れちまいます!さらには騎士団一の軍師であの人が指揮を執る戦いはいつも安定しています!ついた通り名は猛る獣のような戦い方から『猛獣』と呼ばれています!」

猛獣でありながら知将といかに…
今の日本は確かにこの男のおかげでどうにか成り立っているということか。
負け戦でも引き際を見極める事で被害を最小限に抑え後の戦いに響かないようにするのはなかなか難しいことだ。

「次は二番隊の隊長の嵐山武蔵さん、武蔵隊長は戦闘はあまり得意ではないんですが春日さんと同じく作戦指揮が非常に的確なんです、春日さんが負け戦の処理が担当だとすれば武蔵隊長は勝ち戦専門ってところですかね、とにかく勝つことを考えた作戦で指揮をとりますが…ここだけの話かなり無茶なこともします、仲間の死より勝つことを優先し非常な決断を敢えて請け負ってくれてるのだと俺は思ってます!通り名はまだありません」
嵐山武蔵、名前は聞いたことがある、大胆かつ奇抜な作戦を立てて意表をついていたと聞いている、だがオレは彼の作戦には賛成しかねる、勝つために犠牲を払うなんて馬鹿げている、綺麗事かもしれないが…

「四番隊隊長の御堂天馬隊長はなんと16歳にして隊長になった実力者です、短剣を自在に操り戦場を駆ける姿は正しく天馬!頭もかなり良くて非のうちどころがないいわゆる天才ですね、切り込み隊長って感じでしょうか、さらに天馬さんの強みはなんといっても風を操る能力です!数少ない日本騎士団の能力者の一人です!通り名は『疾風』です!」

能力者か、やはりいるんだな、イギリスには多くはないがそれなりに能力者いたから何度か戦った、能力にはそれぞれ系統があり同じ能力でも個人が持つ力によってはまるで別物になる、風を操る能力者も見たことがあるがあれはそよ風程度だった記憶がある。日本の風はどのレベルなのか楽しみだ。
「五番隊隊長はクールビューティでダイナマイトボディの楠如月様でっす!他の兵士からも人気があるんですよ!」

ダイナマイトボデーねぇ…

「いるだけで兵士の士気も上がりますよ!戦う姿は美しく可憐にまう蝶のような…、それはさておき、彼女もまた能力者です、なんと傷を癒す能力をもっています!さすが女神様!!!通り名はまだありませんがつくとしたら絶対女神とか聖女とかですよね!?」

俺に聞くなよ…治癒の能力か、珍しい能力だ、昔最強クラスの治癒能力持っていた者は不治の病をも治したと言われている、使い方によっては自らを不死にしたりもできるとかできないとか。

「そして最後が日本騎士団最強の三番隊隊長神宮飛鳥さんです!日本ではあの人を超える剣士はいないってくらい剣術がすごいです、怒涛の成長を遂げてきた御堂さんでさえあの人には全く歯が立たなかったそうです、特出すべきは無能力者でありながら能力者達を倒してしまうほどの実力です、確かに兄貴も強いですが神宮隊長には及ばないと思いますよ!」
神宮飛鳥、恐らくウルフの言う侍とは彼の事だろう、話を聞くところ相当な使い手らしいが…会って見ないことにはなんとも言えないな…
「神宮隊長は普段日本の刀を持っていて一つは全長2mを超える長刀を背負っているんですが、彼がそれを使う所は俺は見たことないです、いつもは腰に指した日本刀で戦っています。通り名はまだありませんが恐らくすぐに付くでしょうね」
「なるほど、なんとなく分かったよ、ありがとな」
使わない刀を持ち歩く必要がどこにあるんだろうか、ますます会ってみたいものだ、期待に胸を膨らまし隊長達の話を聞き終えたオレは勝男に例を言って司令部に戻った。後ろで勝男が深々と頭を下げ見送っていたが気のせいだろう。


司令部の扉から入れ、と真堂の声が聞こえた。
「お待ちしておりました、どうぞこちらへ」
小柄な女の子が司令部に招き入れてくれた、騎士団のバッジをつけているところを見ると彼女も騎士なのだろうか。

扉の先には先程説明を受けた面々が立っていた、威圧感のあるメンバーに少しテンションが上がる、その中に明らかに異質なオーラを感じた、背中に長刀を背負った赤髪の青年、奴が日本最強と謳われる剣士…


彼との出会いが俺の運命を変える事になるが…


それはまだ先のお話…




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