異世界ファイター ~最強格闘技で異世界を突き進むだけの話~

チョーカー

作戦 トーヤ対レオ戦直前

 
 「ここでええんか?」
 「あぁ、試合まで2週間だ。時間がない」

 場所は明の部屋。両者は構える。

 「レオは触れるだけで、相手を戦闘不能にできる」
 「……つまり、相手に触れられず、こちらが一方的に攻める展開作りか。条件がキツイな」
 「あぁ、だからヒット&アウェーだ。……いや、それは無理だから相手に近づけさない方法を取る」
 「うむ、どうやって?」
 「お前の最大の武器である尻尾を使う」

 そう言って、明は腕を上げる。

 「ここを打て」

 がら空きになった場所を指す。
 その直後、明のわき腹に炸裂音が響いた。
 鞭のように撓り、太ももより一回りも二回りも大きい尻尾の一撃だ。
 一瞬、明の表情が歪み、そのダメージを知らせる。
 だが、すぐに表情を戻し――――

 「今度はこっちだ」

 打たれたわき腹と逆の箇所を無防備に晒す。
 再び炸裂音。
 今度は、明の顔に歪みはない。

 「続けて、左右連続で」

 そんなやり取りを何度か繰り返していると不意に明が前にでた。

 「距離を縮めさせるな。前蹴りストッピングで相手を止めろ」

 近づく明をトーヤは足で後ろへ下がらせる。

 「うん、やはり良いな。その尻尾」

 明はトーヤの尻尾を絶賛した。
 足より太い尻尾は、通常の回し蹴りよりも相手に多くのダメージを与えられる。
 それに、トーヤ自身の体が目隠しブラインドの役割を果して、前にいる相手には左右のどちらから尻尾が襲い掛かってくるかわからない。 ノーモーションの蹴り技みたいなものだ。

 「人間は、膨大な戦闘の記憶量があるから咄嗟に素早く反応する事ができる。逆に初めて見る技は対処できない……とは言っても3分も同じ攻撃を続けていたら相手も慣れてくるだろう。そこまでにどのくらいダメージを与えれるかが勝敗を分ける」
 「ダメージを与えたところで、一回でも触られたら終わりやろ?」
 「……いや、一度だけなら、俺がお前を動けるように鍛えてやる」
 「一度だけかいな」
 「あぁチャンスは一度だけだ。相手が勝利したと勘違いした瞬間に、取っておきを叩き込んでやれ」

 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 ―――2週間後―――

 準々決勝開始直前

 準々決勝では、明対カスミ戦よりも早く、トーヤ対レオ戦が行われる。
 予選でバトルロワイヤル方式だったため、予選会場は各所に別れた広い場所であったが、準々決勝からは普通の会場だ。
 1対1で戦うには不便のない広さ。 代わりに観客席が多くなっている。
 そこに早くもトーヤが姿を現した。そして、一緒に現れた人物が明だとわかると観客たちのボルテージは跳ね上がった。
 前評判だと、レオ聖下の圧勝だと口にしていた人は多かったらしい。
 しかし、魔王の息子である明がセコンドにつくと彼らの中に――――

 (もしかしたら、なにか波乱が生まれるかもしれない)

 そんな期待に似た感情が生まれたのだ。
 そして、レオ聖下が現れた。
 彼はゆっくりと歩く。まるで、先に待つ者が挑戦者。後から悠々と現れるのが王者である自分だと宣言しているように――――

 不意にレオの足が止まった。
 会場で待つ者がトーヤだけではない事に気づいたのだ。
 その人物が明だと気がつくと――――

 「兄さん。もう、そこで待っていてくれたんだ」

 誰にも聞こえないように呟く。 しかし、その浮かべた笑顔には――――

 黒いものが張り付いているようだと明は感じていた。

  

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