異世界ファイター ~最強格闘技で異世界を突き進むだけの話~

チョーカー

クロムストーリー


 「アイツの戦い方には脈絡がない」

 クロムは、そう語った。

 「……脈絡がないですか? それは一体、どういう意味でしょうか?」

 そうした質問にクロムは目を閉じた。おそらく、アキラとの戦いを思い出しているのだろう。

 「まず、俺にはアキラが消えて見えた。当然だが、俺は幻術だと思い抵抗レジスタンスの魔法を使用した。だが、奴は本当に消えていたんだ」
 「私の眼には、ただアキラ選手がクロム選手に抱きついたとしか……」
 「そうさ。奴はシンプルに俺の動体視力を超え、認識できない動きをしたのさ」

 タックルと言うらしい。
 ただ、シンプルに相手の両足、あるいは片足を掴み倒す動作。
 しかし、実際に経験したクロムは違うという。

 「巨人種が現れた。あの瞬間、俺はそう思ったね」
 「巨人種? あのタックルという技を受けた瞬間の事ですか?」
 「そうさ。突然現れた巨人に下半身を掴まれた。オタクも想像してみろ。できねぇだろ? 抵抗なんて」
 「は、はい。確かにできません」
 「恐怖だったね。見ただろ? コスタレス戦のアキラを……あれを俺にもやれって言われたみたいで……本当はできませんって正直に逃げ出したかったぜ」

 アキラからタックルを受けたクロムは、逃げるように体を捻らせ、うつ伏せに地面に倒れた。
 しかし、その後、すぐに解放された。 観客の誰もアキラとクロム、どちらが、何をしたのか理解できなかった。
 その事を質問すると――――

 「あれか。倒された直後にコツンってね。軽く後頭部を叩かれた。それだけ。それでおしまい」
 「おしまい……とは?」
 「おしまいは、おしまいだよ。俺にも意味がわからなくて立ち上がると、アイツは驚いていたよ。まだやるつもりなのか? ってね」
 「? それは、一体?」
 「死に体って言うらしい。本気で後頭部を叩いてたら、アンタ死んでたぜって事だ。ようするに怪我もなく実力差を分からせて棄権を促されたわけだ」
 「なるほど、それで――――」
 「そう、それでさ。 それでカッって血が頭に昇ってね。無防備に突っ込んで行ったのさ。気がついたら、病室のベットの上だったね。試合時間はたったの10秒だったが……俺の人生を塗り替えるほど貴重な10秒だったと今は思っているよ」 
 「それほど、まで濃密な時間だったのですね」
 「あぁ、あの時、アキラと戦わなきゃ俺の人生は、ただ戦って、戦って、戦うだけの人生になってたね。もっとも――――今も戦う人生だけどね」

 クロムは、笑いながら、こう付け加えた。

 「オタク、アキラ・クズの取材をしてるんだろ? もし、本人と出会ったら伝えてほしい事がある」
 「はい、もし出会えたら、必ず……」
 「10年前は何もできずに負けた。けど、まだ現役で戦い続けているなら、ここにきてくれ。俺は現役を退けたが、今のここにはあの時の俺より10倍は強い弟子たちが大量にいるってな」

 異世界流柔術代表 クロム・ド・マクドナルドへのインタビュー


 

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