異世界ファイター ~最強格闘技で異世界を突き進むだけの話~

チョーカー

VSコスタレス戦 その②

 予選の様子は、上空に浮かぶ魔具によって、離れた場所の観客たちに見る事ができる。
 そして明対コスタレスの戦い。 今日、行われた試合で一番のざわめきが起きる。
 その理由は両者が何をしているのか理解できた者は1割にも満たなかったからだ。

 おそらく、この世界の人々が始めてみる寝技の攻防。

 この世界でも関節技は存在している。
 しかし、戦闘の基本は剣と魔法の世界だ。そして、敵対する存在は人よりも魔物が多い。
 だから、無手による格闘術は対人戦闘の補助的なものに過ぎず、十分な発達はしていなかった。

 そして、寝技の攻防を理解できた1割の人間――――対人戦闘に特化した達人クラス。あるいは人体に精通する医学を修めた者――――そんな彼らを持ってすら思い浮かぶ心情は同一のもの。
 単純に――――

 (そこまでするか!?)

 という驚きであった。

 その戦いは、まるで仲睦まじい男女が行う夜の営みのように見える。
 それでいて、館に巻きつき成長するツタのようにグニャグニャであり、手足のない爬虫類の戦闘風景にも見えた。

 明が倒れたコスタレスに覆いかぶろうとしていく。
 対してコスタレスは抵抗するわけでもなく、逆に明を引き寄せると胴に両足を絡ませて動きを封じようとする。

 ガードポジション

 さらに明の首に腕を巻きつけようと動き。
 しかし、これは拳で弾かれた。そのまま、明はコスタレスの顔面へ拳を振るった。
 両者の体格差。体重の乗せた強い打撃は放てない。
 だが、それでも十分だ。
 一瞬、明の胴の締め付けが緩む。
 明はコスタレスの太ももに肘を叩き込む。
 1撃、2撃、3撃……緩みが広がる。
 そのまま、一気にパスガードを狙う。

 馬乗りマウントポジション

 子供の喧嘩で見る光景だ。倒れた相手の上に乗っかり、一方的に殴る光景。
 しかし、その優位性は、大人になり、戦う技術を学び、体を鍛えても変わらない。
 ゆえに、総合格闘技の高等技術は、この状態を防ぐ――――あるいはこの状態を狙う事に心血を奉げられた時代があったほどだ。

 だが、マウントポジションを奪った明は――――

 動揺。

 自分が跨るものから、自身の股下から膨大なエネルギーのようなものを感じ取った。
 明は首を横に振り、動揺を消し飛ばすと、コスタレスの顔面に拳を叩き込む。

 だが、コスタレスもやられるだけではない。 
 長い手足を利用して高いブリッチ。上に乗る明のバランスを崩そうとしてくる。
 実際、ブリッチのパワーとスピードに明の体がフワリと浮かんだ。
 明は、振り落とされないように動きを止めバランスを取る事に集中する。
 しかし――――
 コスタレスの動きは止まらない。

 まるで、ロデオだ。
 去勢されていない1t超えの雄牛ブルにのるカウボーイは、8秒耐えれば成功とされる。
 訓練されたカウボーイ――――ブルライダーですら、僅か数秒が限界なのだ。
 何度目か――――否。すでに二桁の回数になるブリッチ。
 僅かながらも浮かび上がろうとする明の体。その直前でコスタレスは明の両太ももを掴み、押し上げた。
 これまでにない力の入れよう。 明の肉体は3メートル近くまで投げられた。

 素早く立ち上がったコスタレスは明の足首を掴み、勢いよく地面に叩きつけた。
 明は両腕で頭部を守る。だが、ダメージは深い。
 視界はぼやけ、コスタレスの体がブレて二重に見える。
 だから、対応が遅れたのだ。
 コスタレスは明の足首をワキで固定。そのまま、背後に倒れるような動きを見せて――――

 アキレス腱固め


 

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