異世界ファイター ~最強格闘技で異世界を突き進むだけの話~

チョーカー

予選 降魔摂津流コスタレスとの戦い

 予選開始の合図。ブザーのような音が響く。
 左右から2人組みから攻撃を受ける。

 「やれやれ……確かに武器の使用を禁じたルールもないが、いきなり暗器か」

 拳の間から細い刃物が見え隠れしている。
 一応、審判もいるが、離れた位置からは見えないであろう大きさ。
 暗殺者アサシンというやつだろう。
 向かってくる白刃に対して、迎えるように明は自ら前に出る。
 前に出ると同時に回避。 回避と同時に打撃を入れる。

 「ぐっ……」 「がっ!?」

 それぞれ、腹部を殴られ暗殺者は前のめりに倒れていく。
 だが、させない。
 倒れいく彼らの手首を掴み、強引に立たせる。
 男たちは「あ、足が動かねぇ!」と恐怖と悲鳴交じりの声を上げた。
 そのまま、さらに手首を捻り、他の相手に投げつけた。
 極少の動きで最大の成果を――――

 本戦出場は16人。
 参加人数が2064人から計算すると予選は150人が入り混じったバトルロワイヤル方式。
 当然、その150人の中には優勝が狙える有力選手が何人もいる。
 この直後、明の目前に現れた男は、その中の1人だった。

 明が投げ飛ばした暗殺者。それが空中で停止する。
 掴まれたのだ。投げ飛ばされた人間2人を同時に……それも空中で……

 それをなし得た人物は――――

 見上げるほどの巨体だった。
 そして、人間ではない。魔族だ。

 ゴツゴツとした肉体。
 まるで肉体美を表現した彫刻へ、岩を体に無造作に貼り付けたような体だった。
 いや……よく見たら、本当に岩が体に張り付いている?

 「降魔摂津流 魔王四天王の1人 コスタレス」

 そう名乗った男はゴーレムだった。
 そして、掴んだ男2人を明に投げ返してきた。
 当然、明は避ける。 
 それを見越した動きでゴーレムが――――コスタレスが間合いを詰める。

 (――――速い!)

 コスタレスが放ったのは前蹴り。
 避けれない。 明は前蹴りを受ける。

 爆発。

 その威力から明は爆発をイメージした。
 体が浮かび上がり、後方へ飛ばされる。
 魔法や未知の力ではない。純粋な打撃に込められた力だけでだ。
 今までに戦ってきた相手には様々な怪力自慢、パワーファイターたちがいた。
 しかし、単純な打撃で体が浮かび上がり吹き飛ばされる事なんて経験がない。

 明は空中で体勢を整え着地。それに合わせて、再び間合いを縮めたコスタレスが前蹴りを放つ。
 腕を重ねて、腹部を守る明。 今度は、浮かび上がるほどの威力は込められていなかった。

 だが―――― しかし―――― 

 ゴーレムの巨体が華麗に舞上がる。
 空中では放たれた蹴りが明の側頭部へ迫りくる。

 ダッキング――――腰を曲げて、頭部を下へ動かし、蹴り避ける。

 だが、下から跳ね上がってくる物を見る。
 それは、コスタレスの足だった。

 『降魔攝津流 鳳凰飛剛脚』

 (空中三段蹴り!? この巨体でか!)

 コスタレスが空中で行う蹴りの連続技。
 ギリギリで回避に成功する。
 そのまま後ろへ下がり、明はコスタレスとの距離を取った。 

 あの巨体、あのパワーを持ちながら、技は軽業師の如く華麗さを持っている。
 明は、目前の相手、コスタレスに対して――――

 面白い!

 そう評価した。


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