異世界ファイター ~最強格闘技で異世界を突き進むだけの話~
摂津流対神聖摂津流
紛れもなく、その顔は『教会』の最高位指導者であったレオ聖下だった。
「神聖摂津流? 国栖 獅子? 俺の妹だと?」
明は一瞬、混乱する。
「そうだよ、兄さん。僕は父親である国栖源高を倒して、後継者になるために生まれ男として育てられたんだ。 たまに、こうして女性に戻って町を散歩するのは趣味なんだけど……たまたま、偶然に兄さんを見かけて……ついやっちゃったんだ」
レオは、まるでいたずらが見つかった子供のように舌を出した。
正体は話した彼――――いや、彼女には、もはや感情を隠す気すらないようだ。
登場直後に見せた淡々としたした口調は砕けたものへ変わっている。
「本当は、トーナメント開催時に驚かせようと思っていたんだけど……」
「トーナメント?」
「あぁ、これも秘密だった。けど、もういいや。実は、お父さんは和平交渉の材料として、格闘トーナメントを開いてね。優勝者には『魔王』の座を賭けてお父さんと戦う権利がもらえるんだ」
「あは……親父らしいな」
「でしょ? だから、勝てば魔界の権利も手に入るって王族たちも熱狂しちゃってね」
「だろうな。和平どころか、殴り合いに勝てば人界の王族から一気に世界の王へステップアップだ」
「だから、見逃してあげるよ。 ここで兄さんに勝っても、意味がないからね。 お父さんとお母さんの前じゃないと……僕が国栖源高の血を濃く継いだ後継者だってね」
「へっ……逃がすかよ。 お前のダメージだって、本来なら試合を止められるレベルだろ」
「ダメージね……」とレオはクスリと笑う。
「兄さんは、まだこの世界の理になれていないから仕方ないけど……」
まるで映像の逆再生。
捻じ曲がっていた指が元に戻っていく。
赤く染まっていた眼球が白へ。
耳から流れていた血も止まり――――
「魔法。回復呪文ってやつか?」
「ん? 全然、違うよ。不正解!」
またも、レオは笑う。
「これは僕だけが授かった、この世界の能力で『HP吸収』だよ」
「……HP吸収?」
「そうさ。兄さんから奪ったHPをストックして、自分にダメージを受けた際に回復に使ったんだ」
「それを自分で作った『神聖摂津流 達磨落とし』なんて技に組み込んだのか?」
「そうだよ? 悪い? 本家の当主さまに取ってみたら後ろから銃……だっけ? 後ろから銃で撃たれるみたいなもんでしょ? 未知の技を奇襲的にかけられるって比喩表現があるんだよね?」
「いや、いいぞ?」
「ん?」
「銃でもなんでも、使えばいい。それは弱者の権利だ」
「へぇ~」とレオの顔色が変わった。
「僕を弱者扱いする人なんて久々だ。流石だね。兄さんは言う事が違う」
レオは両手を大きく左右に広げてジリジリと間合いを縮めてくる。
一見すると隙だらけの構え。 しかし、違う。
「流石にわかっているね。そうだよ。どんなにダメージを受けても触れさえすれば僕は回復する。だから、狙うなら一撃。そうじゃないと倒せないからね」
「違うだろ?」
「ん?」
「正確には、腕で掴まないとできないんだろ? その『HP吸収』ってやつは」
「ん~ どうだろうね。 試してみるしかないんじゃないの?」
「今まで、自分の戦法をペラペラ喋っていて、ここにきて黙るんだな」
「……」
「……」
互いに沈黙。
先に動いたのは――――
『摂津流 幻虎突き』
明だった。
一瞬で間合いを詰める諸手突きの技。
対してレオは――――
『神聖摂津流 達磨落とし』
自ら体を晒し、明の攻撃を受けに行く。
そして、両者は接触した。
「神聖摂津流? 国栖 獅子? 俺の妹だと?」
明は一瞬、混乱する。
「そうだよ、兄さん。僕は父親である国栖源高を倒して、後継者になるために生まれ男として育てられたんだ。 たまに、こうして女性に戻って町を散歩するのは趣味なんだけど……たまたま、偶然に兄さんを見かけて……ついやっちゃったんだ」
レオは、まるでいたずらが見つかった子供のように舌を出した。
正体は話した彼――――いや、彼女には、もはや感情を隠す気すらないようだ。
登場直後に見せた淡々としたした口調は砕けたものへ変わっている。
「本当は、トーナメント開催時に驚かせようと思っていたんだけど……」
「トーナメント?」
「あぁ、これも秘密だった。けど、もういいや。実は、お父さんは和平交渉の材料として、格闘トーナメントを開いてね。優勝者には『魔王』の座を賭けてお父さんと戦う権利がもらえるんだ」
「あは……親父らしいな」
「でしょ? だから、勝てば魔界の権利も手に入るって王族たちも熱狂しちゃってね」
「だろうな。和平どころか、殴り合いに勝てば人界の王族から一気に世界の王へステップアップだ」
「だから、見逃してあげるよ。 ここで兄さんに勝っても、意味がないからね。 お父さんとお母さんの前じゃないと……僕が国栖源高の血を濃く継いだ後継者だってね」
「へっ……逃がすかよ。 お前のダメージだって、本来なら試合を止められるレベルだろ」
「ダメージね……」とレオはクスリと笑う。
「兄さんは、まだこの世界の理になれていないから仕方ないけど……」
まるで映像の逆再生。
捻じ曲がっていた指が元に戻っていく。
赤く染まっていた眼球が白へ。
耳から流れていた血も止まり――――
「魔法。回復呪文ってやつか?」
「ん? 全然、違うよ。不正解!」
またも、レオは笑う。
「これは僕だけが授かった、この世界の能力で『HP吸収』だよ」
「……HP吸収?」
「そうさ。兄さんから奪ったHPをストックして、自分にダメージを受けた際に回復に使ったんだ」
「それを自分で作った『神聖摂津流 達磨落とし』なんて技に組み込んだのか?」
「そうだよ? 悪い? 本家の当主さまに取ってみたら後ろから銃……だっけ? 後ろから銃で撃たれるみたいなもんでしょ? 未知の技を奇襲的にかけられるって比喩表現があるんだよね?」
「いや、いいぞ?」
「ん?」
「銃でもなんでも、使えばいい。それは弱者の権利だ」
「へぇ~」とレオの顔色が変わった。
「僕を弱者扱いする人なんて久々だ。流石だね。兄さんは言う事が違う」
レオは両手を大きく左右に広げてジリジリと間合いを縮めてくる。
一見すると隙だらけの構え。 しかし、違う。
「流石にわかっているね。そうだよ。どんなにダメージを受けても触れさえすれば僕は回復する。だから、狙うなら一撃。そうじゃないと倒せないからね」
「違うだろ?」
「ん?」
「正確には、腕で掴まないとできないんだろ? その『HP吸収』ってやつは」
「ん~ どうだろうね。 試してみるしかないんじゃないの?」
「今まで、自分の戦法をペラペラ喋っていて、ここにきて黙るんだな」
「……」
「……」
互いに沈黙。
先に動いたのは――――
『摂津流 幻虎突き』
明だった。
一瞬で間合いを詰める諸手突きの技。
対してレオは――――
『神聖摂津流 達磨落とし』
自ら体を晒し、明の攻撃を受けに行く。
そして、両者は接触した。
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