異世界ファイター ~最強格闘技で異世界を突き進むだけの話~

チョーカー

ペット探しの依頼完了

 
 「そう言えば、召喚者の多くは好んで魔物の肉を食べたと伝承が残っていますが、アキラさまは食べないですよね」

 スイカは状況にそぐわない事を言い始めた。

 「そりゃ、食べないだろ。脂質、たんぱく質、カロリーの想像がつかない肉なんて」

 「それに」と話を続ける。

 「親父から聞いたんだが、この世界の職業ジョブには魔法みたいな特殊技術エクストラスキルってのが使えるようになるんだってな」
 「はい、そうですね。大金が必要なので、お金で職業を買うなんて言われてますけど……なにか、成りたい職業でも?」
 「あるよ。調理師だ」

 予想外の答えに「へぇ?」とスイカは変な声を漏らした。

 「今更、戦闘スキルなんて強くなる技量は俺に必要ない」
 「んん? それは確かに……そうかもしれませんが……」
 「強くなるための鍛錬法なら知っている。知らないのは、この世界で強くなるために何を食べるかだ」

 そうして、こう付け加えた。

 「強くなるためなら、俺は魔物の肉だって食べるさ」

 そして、明たちの目の前には、魔物の肉を食らって巨大化した犬が――――

 否。

 魔犬がいる。

 「さて、問題はどうやって捕まえるか……だな」
 「――――できますか?」
 「できるとは、断言できない。犬は最強の生物と言われる事もある」

 犬は自分よりも遥かに巨大な生物に挑む恐れ知らずの生き物だ。
 訓練された犬は戦場を駆けり、銃の弾丸をも恐れない。
 厄介なのは俊敏性。それに鋭い牙。
 素早く飛び掛り、動脈を一噛みするだけで人間なんぞ、簡単に――――

 いや、犬の武器は高い闘争本能と戦闘能力だけではない。

 優れた五感。嗅覚はもちろん、聴覚と視力も優れている。

 「すでに、こちらを察知しているな」

 グルグルと敵意を隠さない音を喉から発している。

 「地属性の魔犬で足止めを、罠を作れ!」

 「はい」とスイカの返事をまたずに明は魔犬の前に飛び出していく。
 魔犬は飛びかかって――――こない!?

 発達した体が取得していた新たな武器に気づいているらしい。
 その巨大化した前足を上から叩きつけてくる。
 明は『金剛石』を使用して、前足の打撃を受ける。

 (――――防御しても体がバラバラになりかねない威力。これほどまでとは……そして速い)

 前足の一撃はフェイントだった。
 防御して動きの止まった明の腹部を狙い。開いた魔犬の牙が襲い掛かってくる。

 「流石に食わせてはやらん」

 明は上あごを片手で押さえると力強くプッシュ。
 噛み付きの軌道をずらしながら、自身も横回転で避ける。
 しかし――――

 (動作の1つ1つが、攻撃の起りが異常に速い)

 すでに魔犬の前足が新たな攻撃を開始する。
 それをギリギリで回避。そのまま距離を取って仕切り直しを狙うも、魔犬の追い足が速い。

 (ここまで、接近されるとスイカの援護は無理か。罠なんて作ったら俺にまで被害が出る可能性がある。ならば――――)

 「スイカ、檻を――――檻を作って俺ごと封じろ」

 「はい!」と返事と共に、魔剣の効果により檻が魔犬と明の両者を中に閉じ込めた。

 ぐるぐる……

 (コイツは何を考えている?)

 魔犬は初めて餌をして見ていたニンゲンに興味を持った。

 (こんな逃げ場のない場所で戦うつもり……馬鹿なのか?)

 だが、明が見せる表情は余裕綽々。まるで挑発行為だ。
 それにイラついた魔犬は、前足を叩きつけ――――

 ガッシャン

 前足を振り下ろしたと思った次の瞬間にはゲージへ肉体が投げつけられていた。

 (何をした? 何をされた!?)

 混乱する魔犬を前に明は――――

 「さて、厄介なのは森の中で逃げられる事だった。これで逃げられないし、逃がさない」

 魔犬は言葉がわからないまま、明の意思を察する。

 (このニンゲンは本気じゃなかった。それどころか……手加減をされていた)

 「悪いね。依頼はお前を無事に連れて帰る事だ。怪我をさせるわけにはいかなかった。けど、檻の中なら――――お前が疲れ果てて大人しくなるまで遊んでやれる」

 3日、3日で森の支配者になった。この森で自身よりも強い存在はいない。
 かつて魔犬だった犬は、久々に恐怖を感じていた。

 『摂津流捕縛術 墨西葛』

 明は、まるで軟体動物のように犬の体に巻きついていく。

 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 夕方の町はざわめきに包まれた。
 2人組みの冒険者が奇妙な生物に跨り、帰還したのだ。
 どこをどう見ても魔物だが、2人は「これは犬だ。冒険者ギルドからの依頼を果たしただけだ」と言う。
 騒ぎを聞きつけた城の兵士たち、憲兵も集まり混乱は広がりを見せたが、魔術師が行った鑑定の結果、魔物ではなく犬だった事が判明して事なきを得た。
 しかし、この出来事が明とスイカの名声を、さらに広げる事になった。
   

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