異世界ファイター ~最強格闘技で異世界を突き進むだけの話~

チョーカー

真の免許皆伝 『化身』に隠された秘密

 
 「どうだ? 明、ワシと一緒に魔界に来ないか?」

 源高は言う。

 「魔界には、文字通り怪物ぞろいよ。戦う相手に暇する事はない。それに……」
 「それに?」
 「実を言えば、近いうちに人界と和平交渉を行う予定じゃ」

 それを聞いたスイカが叫んだ。

 「和平交渉ですか? 500年も人界と魔界は不可侵だったのにどうして? 今?」
 「おいおい、お嬢ちゃん。 不可侵ってのはワシが魔界を統治して、強い奴と遊んでいたからだぞ。やろうと思えば、明日にも人界に攻めれるさ」 
 「そ、それなのに……どうして和平を?」

 源高は「ほう、意外と恐れないタイプのお嬢ちゃんなんだな」と笑った後――――

 「人界の武道武術に興味が出てきた」

 予想外の答えに「えっ?」とスイカは惚ける。

 「魔界の強い奴とは戦って勝ち抜いた。今度は、俺がいなくなった人界が500年でどんだけ変化したか、興味が出てきた。ぶっちゃけ、さっきした教会の話も、その延長だ。人を強くする秘術があるならいくらでも使えばいい。極限まで強化された人間と戦う。くっくっく……想像するだけで体が疼いてしかたねぇ」

 「俺が魔界に行く事となんの関係があるんだ?」と明が口を挟んだ。

 「決まっているだろ? ワシの息子として一番、近くで見せてやるよ。ワシの喧嘩とな!」

 自身に溢れた源高の言葉だった。しかし、明は――――

 「それは興味あるが、駄目だ」
 「ふむ、その理由は?」
 「俺は元の世界でやり残した事がある。どうも、元の世界に戻るには、彼女を――――スイカを鍛えて、魔力を高めない駄目らしい」

 「なるほど」と源高はスイカを顔を窺う。

 「『英雄召喚の儀式』の代償か。それなら……いや、明。少し付き合え」

 源高は席を立つ。そのまま家の外に出て行った。

 「仕方がないな。スイカ、少し待ってろ」
 「はい……って、それだと私、トーヤさんと二人きりになるのですが!」

 どうやら、スイカはトーヤに苦手意識があるらしい。
 脅しとは言え、危害を加えられたのだ。仕方がないだろう。
 一方のトーヤは「そんなに怖がらなくてもええやん」とニヤニヤとしている。

 「一応、スイカを苛めるなよ」
 「最初からそのつもりやけど、まぁ御子息が言うなら……魔王軍四天王の名に誓って最上の接待をさせていただきましょう」

 深々と頭を下げたトーヤを背に、明は源高を追った。

 「一体、なんのつもりだい? 親父」
 「うむ、やはり気づいていないのか」
 「え?」

 明は信じられなかった。 
 源高は自身に対して敵意と殺気を送ってきたのだ。

 (なぜ、このタイミングで!) 

 反射的に構えを取る明。 
 源高の右足が跳ね上がる。摂津流の右独楽が襲い掛かってくる。
 明はそれを受ける。

 だが――――

 常識ではあり得ない破壊力を秘めた蹴りだった。

 「――――ッッッ!?」

 だから、明はすぐに気がついた。

 「親父、どうして禁術を! 『化身』を使っている!」

 源高は、ニヤリと笑った。
 その姿には『化身』の副作用である感情の暴走が見えて取れない。

 「勘違いするなよ。『化身』が禁術って言ったのは、お前と聖也じゃ到底扱いきれぬからよ。お前も『化身』を使ったのなら、ちょうどいいのさ。真の『化身』の使い方を見せてやる!」

 『摂津流 幻虎突き』

 その技は両手を前方に突き出す諸手突きと言われる技だ。
 諸手突きは、両手を下げノーガードにならざる得ない点から、およそ実戦的ではないと考えられているが、摂津流では違う。
 『幻虎突き』は、距離をとった状態から放たれる遠距離打撃。
 たった一歩で数メートルの距離を0にする突進力。
 いくら無防備の顔面とはいえ、カウンターを決めるのは不可能だ。
 その理由は、自身に向かってくる車を殴るをイメージしてもらうとわかりやすいだろう。

 それをギリギリで回避する。

 『化身』の効果で強化された『幻虎突き』。
 速度スピード破壊力パワーも通常の技とは段違いにあがっている。
 もしも、服に掠るだけでも体を巻き込んで、吹き飛ばされるだろう。
 ならば――――

 『摂津流柔法 曲泉戒』

 明は脱力した肉体を無防備に『幻虎突き』へ晒す。
 そして接触。
 だが、明に肉体は弾き飛ばされる事なく、源高が前に飛ぶ速度と同等の速度で後ろに下がっていく。
 脱力した体が『幻虎突き』の衝撃を体外に逃がしたのだ。
 そして、2人は同時に着地する。 
 着地と同時に明は源高の懐に入り込み、源高の体を持ち上げる。
 柔道でいう肩車という技に近い。 そのまま源高を地面に叩きつける。

 明に、とある感情が芽生えた。

 組み手ではなく、実戦で父親から一本奪った。 

 (歓喜している? ……この俺が戦いの中で?)

 明は違和感に気づいた。 自身の感情が暴走している。まるで――――

 「まるで『化身』を使ったみたいだろ?」

 地面に叩きつけた父親が立ち上がってくる。その様子にダメージはない。

 「殺意や敵意、感情を読む事に優れた摂津流ゆえに自身の感情を徹底的に殺す。しかし、『化身』の使用によって、自身の感情を暴走させた事に気づいちまったのだ」
 「……気づいた? 一体、何に?」
 「感情なんてものは殺せないって事にさ」
 「……ッッッ!?」
 「本当のことを言うぜ。真の『化身』とは自身の感情をコントロールを完成させるための技。ワシの死によって現当主に祭り上げられちまったお前だが……安心しろ。今日、お前の摂津流は完成を迎える。抑えていた感情を外にだせ。戦いによって自分を表現するんだ」

 父の言葉、それは明も薄々と気づいた事だった。
 そもそも、父親である国栖 源高が自身の感情を抑えている姿を見た記憶がない。
 それなのに摂津流は感情を殺さなければならないという矛盾。
 だから、わかってしまう。

 今日が摂津流現当主 国栖明が本当の免許皆伝を受ける日なのだと

 

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