異世界ファイター ~最強格闘技で異世界を突き進むだけの話~
親子の食卓
明は肉を食べていた。それも大量の肉だった。
それを横目に源高はつまらなそうに言った。
「相変わらず、メシはウォリアーダイエットか。不味いメシの食い方しやがって」
ウォリアーダイエット。
イスラエルの軍で肉体改造に使われていた食事法だ。
朝、昼は少量のたんぱく質を摂取して、夜に2時間ほど、ひたすら肉を食べ続けるというダイエット法。
原始の時代、人間は朝は長距離を移動して、昼に狩りを開始して、夜に持ち帰った肉を食べたという。
それを正しい人間の食事法として再現したのが、このウォリアーダイエットだ。
それを批判されて「むっ……」と明が不快感を顕にした。
感情が希薄な明にとって珍しい反応だが、食にこだわりがあるのかもしれない。
あるいは、相手が父親だからかもしれない。
源高は瓢箪を加工した水筒(?)から乳白色の液体をお猪口に注いで飲んでいた。 それを手放した隙に明が奪った。そのまま、明は口に流し込む。
「あっ! てめぇ!」と源高は抗議の声を上げるが、もう遅い。
「……小麦粉を水で溶かしたような味だ」と明が感想を述べた。
源高は「ちっ……」と舌打ちを1つ。
「ソイツはチーズを作る時にできる不要なたんぱく質だ。この世界じゃ、まだコレを有効活用できてねぇ」
「チーズからできるたんぱく質の塊……」
明には、心当たりがあったらしい。少し間が空いて……
「つまり、異世界でプロティンを作ったって事か?」
「悪いかよ? ソイツはまだ試作品でな。元の世界で言えば20年くらい前のプロテインの味だ。今はまだ蜂蜜と牛乳が必須だが、ここから元の世界のクオリティに持っていく」
源高はしみじみと言う。
「こっちの世界じゃ、なにがどんな食材かわからなかったから、500年間苦労したんだぜ?」
「その500年っていうのは、どうやって生きていたんだ?」
「へっ、聞きたいか? ワシの武勇伝を」
源高が話しかけた時だった。
「あっ、すいません。私、気を失っていたみたいでして」
別室で眠っていたスイカは起きてきた。
「えっと、確か……依頼主さんが、人間に化けていたオークで、アキラさまと戦い始めて……あれ? そこから記憶が……」
「お姉ちゃん、堪忍な。ワイも御子息と戦ってみたくなったんよ」と部屋の隅で待機していたトーヤ。
なぜか、関西弁に戻っている。
「おぉ、うちの弟子たちが迷惑かけたな」と源高が立ち上がって頭を下げた。
「え? 弟子達……ということは?」
「あぁ、俺の師匠というよりも、父親だ。今は、こっちで魔王をしてるらしい」
「へぇ……魔王ですか……え? 魔王!? アキラ様の父親が魔王!」
スイカは混乱した。
そのまま、再び失神しそうになった。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
源高が異世界に召喚されたのが500年前。
その時は魔界から魔王軍が、人界に進軍を開始して、その領土の半分を奪っていた時代の話だ。
『英雄召喚の儀式』によって、救済の英雄として召喚されたらしい。
「その頃は勇者さまとしての召喚よ。まさか、それが魔王と言われるようになるとはな。皮肉な話だぜ」
くっくっくっ……と源高は笑った。
仲間たちとの冒険。
それにより、人界の領土を取り戻して、魔王軍を追い返していく。
そして、ついに訪れた魔王との激突。 そして勝利。
魔界に逃げる魔王を追いかけて、仲間たちと別れて単身魔界へ乗り込む。
魔王を倒した後、魔界を修行の地と定めて旅を開始。
――――今に至る。
「信じられません。アキラさまのお父様が、あの伝説の『救済の勇者』であり、現『魔王』だなんて……」とスイカ。
「ソイツはちょいと不敬やろ?」
トーヤが笑った後、ジロリと睨み付けた。
「おい客人を脅かすな」
「これは失礼をしました。魔王様」
トーヤは一礼をして部屋の隅に戻っていった。
「それで明、お前はこの世界をどう思う」
「どう……とは?」
「無論、人の強さの事よ。奇妙とは思わねぇか?」
「うむ……」と明は考える。
「……レベル。人が強くなる過程が簡単すぎる」
「その通りよ。 ワシが最初に来て感じた違和感がソレじゃ。貢献度に合わせて、教会が強くしてくれる? 怪しいにも程があるってもんだぜ」
武術家である2人は人が強くなる難しいを知っている。
鍛錬に次ぐ鍛錬。常軌を逸脱したトレーニング。
それでも人は易々と強くなるものではない。
頭打ちというものだ。 そこから、強くなるために工夫が必要になってくる。
例えば、持ち合わせていなかった技術を他流派から取り入れるか。
例えば、1つの技術を研磨していくか。
人それぞれ、そこから強くなる方法は千差万別。
人間は強くなるだけではなく、鍛錬の結果、弱くなる事もある。
「だが、教会ってのは認めた人間を強化してるんだろ? コイツは怪しいぜ」
「魔界じゃ、そういうの……レベルって概念はないのか?」
「あぁ、ないね。……少なくとも、外部的要因で得た強化が永続するなんで事はない」
「それを調べるために親父は、魔界から人界にきたのか?」
しかし源高は――――
「ド阿呆。息子が来たのに顔を見に行かない親がどこにいる」
「お前に会いに来たんだよ」と照れくさそうに付け加えた。
その言葉に明は――――
「くっくっく」と父親そっくりな笑い方をした。
それを横目に源高はつまらなそうに言った。
「相変わらず、メシはウォリアーダイエットか。不味いメシの食い方しやがって」
ウォリアーダイエット。
イスラエルの軍で肉体改造に使われていた食事法だ。
朝、昼は少量のたんぱく質を摂取して、夜に2時間ほど、ひたすら肉を食べ続けるというダイエット法。
原始の時代、人間は朝は長距離を移動して、昼に狩りを開始して、夜に持ち帰った肉を食べたという。
それを正しい人間の食事法として再現したのが、このウォリアーダイエットだ。
それを批判されて「むっ……」と明が不快感を顕にした。
感情が希薄な明にとって珍しい反応だが、食にこだわりがあるのかもしれない。
あるいは、相手が父親だからかもしれない。
源高は瓢箪を加工した水筒(?)から乳白色の液体をお猪口に注いで飲んでいた。 それを手放した隙に明が奪った。そのまま、明は口に流し込む。
「あっ! てめぇ!」と源高は抗議の声を上げるが、もう遅い。
「……小麦粉を水で溶かしたような味だ」と明が感想を述べた。
源高は「ちっ……」と舌打ちを1つ。
「ソイツはチーズを作る時にできる不要なたんぱく質だ。この世界じゃ、まだコレを有効活用できてねぇ」
「チーズからできるたんぱく質の塊……」
明には、心当たりがあったらしい。少し間が空いて……
「つまり、異世界でプロティンを作ったって事か?」
「悪いかよ? ソイツはまだ試作品でな。元の世界で言えば20年くらい前のプロテインの味だ。今はまだ蜂蜜と牛乳が必須だが、ここから元の世界のクオリティに持っていく」
源高はしみじみと言う。
「こっちの世界じゃ、なにがどんな食材かわからなかったから、500年間苦労したんだぜ?」
「その500年っていうのは、どうやって生きていたんだ?」
「へっ、聞きたいか? ワシの武勇伝を」
源高が話しかけた時だった。
「あっ、すいません。私、気を失っていたみたいでして」
別室で眠っていたスイカは起きてきた。
「えっと、確か……依頼主さんが、人間に化けていたオークで、アキラさまと戦い始めて……あれ? そこから記憶が……」
「お姉ちゃん、堪忍な。ワイも御子息と戦ってみたくなったんよ」と部屋の隅で待機していたトーヤ。
なぜか、関西弁に戻っている。
「おぉ、うちの弟子たちが迷惑かけたな」と源高が立ち上がって頭を下げた。
「え? 弟子達……ということは?」
「あぁ、俺の師匠というよりも、父親だ。今は、こっちで魔王をしてるらしい」
「へぇ……魔王ですか……え? 魔王!? アキラ様の父親が魔王!」
スイカは混乱した。
そのまま、再び失神しそうになった。
・・・
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源高が異世界に召喚されたのが500年前。
その時は魔界から魔王軍が、人界に進軍を開始して、その領土の半分を奪っていた時代の話だ。
『英雄召喚の儀式』によって、救済の英雄として召喚されたらしい。
「その頃は勇者さまとしての召喚よ。まさか、それが魔王と言われるようになるとはな。皮肉な話だぜ」
くっくっくっ……と源高は笑った。
仲間たちとの冒険。
それにより、人界の領土を取り戻して、魔王軍を追い返していく。
そして、ついに訪れた魔王との激突。 そして勝利。
魔界に逃げる魔王を追いかけて、仲間たちと別れて単身魔界へ乗り込む。
魔王を倒した後、魔界を修行の地と定めて旅を開始。
――――今に至る。
「信じられません。アキラさまのお父様が、あの伝説の『救済の勇者』であり、現『魔王』だなんて……」とスイカ。
「ソイツはちょいと不敬やろ?」
トーヤが笑った後、ジロリと睨み付けた。
「おい客人を脅かすな」
「これは失礼をしました。魔王様」
トーヤは一礼をして部屋の隅に戻っていった。
「それで明、お前はこの世界をどう思う」
「どう……とは?」
「無論、人の強さの事よ。奇妙とは思わねぇか?」
「うむ……」と明は考える。
「……レベル。人が強くなる過程が簡単すぎる」
「その通りよ。 ワシが最初に来て感じた違和感がソレじゃ。貢献度に合わせて、教会が強くしてくれる? 怪しいにも程があるってもんだぜ」
武術家である2人は人が強くなる難しいを知っている。
鍛錬に次ぐ鍛錬。常軌を逸脱したトレーニング。
それでも人は易々と強くなるものではない。
頭打ちというものだ。 そこから、強くなるために工夫が必要になってくる。
例えば、持ち合わせていなかった技術を他流派から取り入れるか。
例えば、1つの技術を研磨していくか。
人それぞれ、そこから強くなる方法は千差万別。
人間は強くなるだけではなく、鍛錬の結果、弱くなる事もある。
「だが、教会ってのは認めた人間を強化してるんだろ? コイツは怪しいぜ」
「魔界じゃ、そういうの……レベルって概念はないのか?」
「あぁ、ないね。……少なくとも、外部的要因で得た強化が永続するなんで事はない」
「それを調べるために親父は、魔界から人界にきたのか?」
しかし源高は――――
「ド阿呆。息子が来たのに顔を見に行かない親がどこにいる」
「お前に会いに来たんだよ」と照れくさそうに付け加えた。
その言葉に明は――――
「くっくっく」と父親そっくりな笑い方をした。
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