異世界ファイター ~最強格闘技で異世界を突き進むだけの話~
少女の名前は
「なるほど、ここは異世界なのか」
「……意外と冷静ですね」
明は「?」と頭に浮かべ「そう見えるか?」と返した。
「えぇ、やっぱり異世界に呼び出された『英雄』さまは、驚き、動揺して、そのまま錯乱して呼び出した術者を殺める方もいると聞いています」
「あぁ、それでアンタも緊張してるのか。流石に初対面の人間をいきなり殺したりはしないさ。それにタメ口でいい。立場じゃ召喚士さまの方が上だろ?」
明は少女の緊張を解すように戯けて見せた。
しかし、少女の方は――――
「は、はい! わかりました」
とわかっていない様子だった。
「しかし、『英雄召喚の儀式』ね。別に俺は英雄なんて称えられる行為はしてないはずだけなぁ」
心当たりと言えば、兄貴の世界征服計画を阻止した程度の事だ。
しかし、それはヒッソリとした戦いであり、少数の人しか知りえない。それが英雄に該当するのだろうか?
「そう言えば……」と少女にも、何か心当たりがあるみたいだ。
「英雄召喚の儀式を行ったのは、この近くなのですが……えっと、あなた様が……」
「明で良いよ」
「はい、アキラ様が現れたのは、少し離れた場所でした」
少女が指差した場所を見ると、地面には魔方陣が書かれていた。
なるほど、明が召喚される直前に見た魔法陣と一致して見える。
「つまり、英雄召喚の儀式は失敗したから、想定外の場所から想定外の人物が現れたって事か?」
「いえいえ、想定外なんて! 滅相もございません!」
ぶんぶんと音を出して、首を横に振る少女。 このままだと土下座しかねない勢いだ。
可愛い……というよりも綺麗という言葉が似合う少女だ。
そんな彼女から怯えられると若干傷つく明だった。
しかし、傷ついている場合ではない。彼には重要な事を聞かなければならなかった。
「それで、俺は元の世界に戻れるのか?」
「……」
返ってきたのは無言だけだった。
「なぁ、おい……」
「ひぃ! ごめんなさい! ごめんなさい! 何でもしますから、殺さないでください!」
「だから、殺さねぇよ! 命の価値が低すぎるのは、お前だからか? それともこの世界の方か?」
「いえ……その……」と少女は言い難そうに言葉は続ける。
「召喚士に取って『英雄召喚の儀式』は全ての魔力と引き換えに使用できる。切り札でして……魔力が回復するまで送り返す事はできないのです」
「なんだ、そんな事か。じゃ、アンタの魔力回復まで待つよ。何時間くらいなんだ?」
「えっと……」と少女の目が泳いだ。
「1ね……半年くらいですね」
「え? そんなに?」
「実は……儀式によって、全て消費し尽くした魔力は回復する事ありません。ですから、同等の魔力を手に入れるまで魔力0の状態からレベル上げをしないと……」
「レベル上げ……まるでゲームだな」と明は呟いた。
しかし、その直後に――――
「半年……やばい留年する」と現実的な問題を前に頭を抱える明だった。
「まぁ、学校卒業したら道場経営と人生のレールが引かれているから、モノトリアムと割り切って楽しむか」
「では、これからもご指導ご鞭撻の方をお願いします」と深々と頭を下げる少女だったが、その様子は、どこか嬉しげですらあった。
「OK OK 俺はアンタの召喚獣として、レベル上げを手伝えばいいんだろ? それじゃ質問だがレベル上げるには魔物を倒すだけで良いのか? ただ、倒すだけじゃなくて、キッチリと殺さないといけなかったのか?」
「いえ、それは冒険による経験値が一定になれば、『教会』で『神々の恩賞』を受ける事でステータスがUP、つまりレベルアップが行われるわけです」
「そうか、よかった」
「?」
「こいつ等みたいに、絶対に殺さないといけないわけじゃないんだな」
明が指差したのは倒れているゴブリンたち。
よく見れば、動いている?
「まさか! 殺していなかったのですか!?」
「あぁ、俺も未知との生物相手に恐怖があったから、少々、技を強めにかけていたが命までとっていない」
「いけません! あれはただのゴブリンでありません。魔王直属の配下です! 早く殺してください!」
叫ぶように言う少女。対して明は――――
(やれやれ、ただの高校生に殺せとか無茶を言うお嬢さんだぜ)
心中で悪態をつくも、転がっているゴブリンの名刀を手に取ると――――
「南無阿弥陀仏!」
と一切の躊躇なく、トドメをさした。
これには「殺してください」と言った少女もドン引きである。
「やれやれ、全部終わったぜ」
「意外と躊躇なく殺しましたね」
「ん? あぁ、生き物を殺すのに禁忌的な考えか。今まで召喚された『英雄』さまにも躊躇があったと記録でも残ってるの?」
「えぇ、英雄さまは慈悲深く、時には魔物相手ですら殺める事を嫌ったと習いました」
「慈悲深いって解釈ね」と明は少し笑う。
「俺の場合は大型連休になると荷物も持たずに山篭りするからね。野生動物と戦い、命を頂く事に、他者よりは慣れてるのかもしれないな」
「……なるほど」という少女は、解せぬと顔に書いているような表情だった。
「そう言えば、アンタの名前を聞いていなかったな。俺の名前は国栖 明だ」
「はい。私の名前は――――
スイカです」
「……意外と冷静ですね」
明は「?」と頭に浮かべ「そう見えるか?」と返した。
「えぇ、やっぱり異世界に呼び出された『英雄』さまは、驚き、動揺して、そのまま錯乱して呼び出した術者を殺める方もいると聞いています」
「あぁ、それでアンタも緊張してるのか。流石に初対面の人間をいきなり殺したりはしないさ。それにタメ口でいい。立場じゃ召喚士さまの方が上だろ?」
明は少女の緊張を解すように戯けて見せた。
しかし、少女の方は――――
「は、はい! わかりました」
とわかっていない様子だった。
「しかし、『英雄召喚の儀式』ね。別に俺は英雄なんて称えられる行為はしてないはずだけなぁ」
心当たりと言えば、兄貴の世界征服計画を阻止した程度の事だ。
しかし、それはヒッソリとした戦いであり、少数の人しか知りえない。それが英雄に該当するのだろうか?
「そう言えば……」と少女にも、何か心当たりがあるみたいだ。
「英雄召喚の儀式を行ったのは、この近くなのですが……えっと、あなた様が……」
「明で良いよ」
「はい、アキラ様が現れたのは、少し離れた場所でした」
少女が指差した場所を見ると、地面には魔方陣が書かれていた。
なるほど、明が召喚される直前に見た魔法陣と一致して見える。
「つまり、英雄召喚の儀式は失敗したから、想定外の場所から想定外の人物が現れたって事か?」
「いえいえ、想定外なんて! 滅相もございません!」
ぶんぶんと音を出して、首を横に振る少女。 このままだと土下座しかねない勢いだ。
可愛い……というよりも綺麗という言葉が似合う少女だ。
そんな彼女から怯えられると若干傷つく明だった。
しかし、傷ついている場合ではない。彼には重要な事を聞かなければならなかった。
「それで、俺は元の世界に戻れるのか?」
「……」
返ってきたのは無言だけだった。
「なぁ、おい……」
「ひぃ! ごめんなさい! ごめんなさい! 何でもしますから、殺さないでください!」
「だから、殺さねぇよ! 命の価値が低すぎるのは、お前だからか? それともこの世界の方か?」
「いえ……その……」と少女は言い難そうに言葉は続ける。
「召喚士に取って『英雄召喚の儀式』は全ての魔力と引き換えに使用できる。切り札でして……魔力が回復するまで送り返す事はできないのです」
「なんだ、そんな事か。じゃ、アンタの魔力回復まで待つよ。何時間くらいなんだ?」
「えっと……」と少女の目が泳いだ。
「1ね……半年くらいですね」
「え? そんなに?」
「実は……儀式によって、全て消費し尽くした魔力は回復する事ありません。ですから、同等の魔力を手に入れるまで魔力0の状態からレベル上げをしないと……」
「レベル上げ……まるでゲームだな」と明は呟いた。
しかし、その直後に――――
「半年……やばい留年する」と現実的な問題を前に頭を抱える明だった。
「まぁ、学校卒業したら道場経営と人生のレールが引かれているから、モノトリアムと割り切って楽しむか」
「では、これからもご指導ご鞭撻の方をお願いします」と深々と頭を下げる少女だったが、その様子は、どこか嬉しげですらあった。
「OK OK 俺はアンタの召喚獣として、レベル上げを手伝えばいいんだろ? それじゃ質問だがレベル上げるには魔物を倒すだけで良いのか? ただ、倒すだけじゃなくて、キッチリと殺さないといけなかったのか?」
「いえ、それは冒険による経験値が一定になれば、『教会』で『神々の恩賞』を受ける事でステータスがUP、つまりレベルアップが行われるわけです」
「そうか、よかった」
「?」
「こいつ等みたいに、絶対に殺さないといけないわけじゃないんだな」
明が指差したのは倒れているゴブリンたち。
よく見れば、動いている?
「まさか! 殺していなかったのですか!?」
「あぁ、俺も未知との生物相手に恐怖があったから、少々、技を強めにかけていたが命までとっていない」
「いけません! あれはただのゴブリンでありません。魔王直属の配下です! 早く殺してください!」
叫ぶように言う少女。対して明は――――
(やれやれ、ただの高校生に殺せとか無茶を言うお嬢さんだぜ)
心中で悪態をつくも、転がっているゴブリンの名刀を手に取ると――――
「南無阿弥陀仏!」
と一切の躊躇なく、トドメをさした。
これには「殺してください」と言った少女もドン引きである。
「やれやれ、全部終わったぜ」
「意外と躊躇なく殺しましたね」
「ん? あぁ、生き物を殺すのに禁忌的な考えか。今まで召喚された『英雄』さまにも躊躇があったと記録でも残ってるの?」
「えぇ、英雄さまは慈悲深く、時には魔物相手ですら殺める事を嫌ったと習いました」
「慈悲深いって解釈ね」と明は少し笑う。
「俺の場合は大型連休になると荷物も持たずに山篭りするからね。野生動物と戦い、命を頂く事に、他者よりは慣れてるのかもしれないな」
「……なるほど」という少女は、解せぬと顔に書いているような表情だった。
「そう言えば、アンタの名前を聞いていなかったな。俺の名前は国栖 明だ」
「はい。私の名前は――――
スイカです」
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