【佳作受賞作品】おっさんの異世界建国記

なつめ猫

正妻戦争(27)レッドドラゴン強襲!




「それなら、これだけ好意を向けられていたことに気がつかないカンダさんは、どうやって責任を取るつもりですか?」
「……どうやってって……」

 ソルティの言葉に言葉が詰まる。
 それと同時にドラゴンが詰め寄ってくる。

「カンダさん、私とリアがドラゴンの気を引いておきます! ですから男らしく責任を取ってください!」

 何やら意味深な物言いをして、リアとソフィアが俺達から離れていく。
 そのあとをドラゴンが追っていくとすぐさまソルティが「また、そうやって先送りするつもりですか?」と語りかけてきた。

「ま、またって……」

 まるで、俺が問題ばかり先送りするような日本人の典型的な特徴を指摘しなくてもいいだろうに……。
 そもそも、男にとって結婚は一大事な問題なわけで。
 それと異世界の女性達は簡単に言いすぎだ! と、言う突っ込みをするとまた文句を言われるかも知れないから黙っておく。

「それに、カンダさん」
「……」
「あのエンシェントドラゴンの元の戻し方を知っているのは、このソルティだけなのですよ? つまり私の協力が無いとマリーさんを救えないということです」
「ソルティ。ま、まさか……、お、お前……」
「察しが良くて助かります」
「どうりで非常に協力的だと思っていた。報酬は何がいいんだ?」

 さすがの俺も、冒険者として一緒にパーティを組んだこともあり飲み仲間でもあったガーランドの娘をドラゴンのまま放置しておくわけにはいかない。

「カンダさんの子供がほしいです。以前もお伝えしたとおり女神に復帰するのが目的ですし、それに好意も抱いていますから」
「そ、そうか……」

 好意が後付けに聞こえるのは気のせいだろうか?
 不審な気持ちになったのを察したのか、ソルティが「本当です! カンダさんだって私のことが必要とか言ってくれたから!」と、頬を赤く染めて力説してくる。
 今回の話し方は、嘘ではないような気がするが……。
 
 ――いかん。どうもエルナの暗躍などを見ていたせいか女性不審になっている気がする。

「つまり、ソルティの話を受け入れないと情報は貰えないと言う事か?」

 俺の言葉に彼女は頷いてみせる。
 
「……分かった」

 横目で戦況を確認しながら俺はソルティの言葉に頷く。
 ターゲットがリアとソフィアに移ったことで、彼女たちは俺達が少し離れた場所に移動して、ドラゴンの攻撃から人が扱う魔法と、エルフが扱う精霊魔法で身を守っている。
 だが、それがいつまで持つか分からない。

「本当に本当ですよ? 約束しましたから!」
「分かったよ……、でもリルカにも相談しないといけないからな」
「カンダさん、獣人の群れの中では雄が決定権を持ちますので! カンダさんが決めたことは決定ですよ?」
「な――!?」
「それでは、説明いたしますね」
「ちょ! まっ――」
「まず、メディデータではなく人間とドラゴンの混血児であるマリーさんを人間に戻すためには、人間としての自我を取り戻すことは必要不可欠です。そして、人間と魔物の一番の大きな違いは精神感応物質をどれだけ取り入れているかだけ。つまり、人間に戻すためには、魔法を発動させるために必要な精神感応物質を除去する必要があるのです」

 俺の制止を無視して、ソルティは俺とセフィにマリーが魔物に変化した理由を説明してきた。
 その中には、いくつか気になった要素があった。
 もう――、この際、毒を食らうならば皿までだ!
 最後まで話を聞くために、セフィの同意を得るために彼女のほうへと視線を向けると、セフィも頷いてくる。

「ソルティ」
「はい?」
「精神感応物質と言うのを俺は以前、本で読んだことがある。たしか――オレイカルコスと言ったような気がするが?」
「はい、オレイカルコスは精神波を増幅する力を持っているのです。それは、生物という物が存在している場所には少量ながらも必ず存在するものです。そう、どこの惑星であっても。問題は、この惑星は、その物質そのもので作られているために魔法が使えるという点です。そして、その精神感応物資に効率よく人の意識を伝達するために神代文明の時代に異世界から来た人間に作られたのがナノ・ニュートリノ・マシン。現在は、それが大気中に散布されているのです」
「なるほど……、異世界人というのは地球人だよな?」
「前も、カンダさんに言いました。A―327の惑星です。惑星名までは分かりません」
「そうか……」

 ソルティの言葉に溜息をつく。
 やはり、この世界は異世界人が深く関わっている可能性がある。
 ただ、情報が制限されている可能性がありそうだが……。

「――あ、あの! 娘は、その精神なんとかというのを取り除けば?」
「ええ、元に戻るわ。問題は、カンダさんや私では、それが出来ないってこと」
「どういうことだ?」
「助けるためには……」

 ソルティは、口を閉じると逃げ回っているソフィアとリアのほうへと視線を向けた。

「エルフと、進化したメディデータの力が必要なの。彼女たちの協力を得られないと、マリーさんを助けることは出来ないわ」
「なら!」

 リアとソフィアなら俺の仲間だ。
 俺からの頼みなら二つ返事で聞いてくれることだろう。

「ソフィア、リア! マリーを救うために力を貸してくれ!」
「結婚してくれるなら考えるの!」
「結婚するならいいけど、それ以外は無理です!」
「なん……だと……!?」


  


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