【佳作受賞作品】おっさんの異世界建国記

なつめ猫

正妻戦争(26)レッドドラゴン強襲!




「と、言うことは……」

 それが本当なら……。

「俺とセフィが夫婦では無かった事実。そのショックを取り除くってことか?」
「カンダさん……。一体……、何をしているの?」

 ソルティが、苛立ちを含んだ声色で問いただしてきた。
 
「いや、何というか……。こんな事態になるとは思わなかったというか、流れ的にそんな感じになってしまったというか」
「違います! カンダさんに私が頼んだのです」

 セフィが俺を庇うようにソルティと俺の間に割って入ってくる。

「貴女は黙っていてくれる? 私は、カンダさんと話しをしているの」
「ソルティ。ドラゴンと変化したリアの父親は、俺と同期の冒険者なんだ」
「同期?」

 俺の言葉に反応したのは、ソフィア。

「ああ、知っているだろ? ニードルス伯爵事件を」
「そ、それって……、ガーランドのこと?」

 ソフィアが震える声で言葉を紡ぐと、リアが大きく眼を見開く。

「――も、もしかして……。貴女、ガーランドの奥さんなの? そ、それじゃ……、あの子は娘? ガーランドの?」
「は、はい。ガーランドは私の旦那です。貴女達は?」
「こいつらは、ガーランドとパーティを組んだこともある俺の冒険者パーティの連中だ。もちろん、マリーの父親ともパーティを組んだこともある」
「そう……、だったのですか……」

 セフィは、小さく自分自身を納得させるように言葉を紡ぐ。
 彼女が何を思っているのか俺には分からない。
 
「カンダさん! それじゃ、あのドラゴンがガーランドの娘なの?」
「ああ……」

 リアの問いかけに言葉を返しながらも俺はドラゴンへと視線を向け続ける。
 先ほど、母親であるセフィを攻撃してきたことから、マリーの意識が無いというのが予測できたからだ。

「……それでガーランドの娘が小さかったから、父親のふりをしたということですか?」
「そうなる」
「はぁ……」

 ソルティが大きく溜息をつくと口を開く。

「――それで、どうするのですか? 自分の両親が嘘をついていたことにショックを受けたのなら、その問題を取り除くには一つしか方法がありませんが?」
「それは?」
「セフィさんと、カンダさんが結婚すればいいのです」
「いや、それはダメだろ」

 俺は頭を左右にふりながらソルティの言葉に答える。

「そうですよ! 結婚するならリアなの!」
「私と結婚するといいですよ!」
「二人とも、こんな時に冗談を言っている場合ではないだろう?」

 まったく、もう少し人の気持ちを考えて発言してもらいたいものだ。
 今は、マリーの対応が最優先だろうに。

「冗談じゃないの!」
「そうですよ! 正妻戦争に私達は勝ったのですから!」
「――え? 正妻戦争って、こんな事態になっているのに、そんなことを言っている場合じゃな――「カンダさん!」――なっ!?」

 突然、ドラゴンになったマリーの目が真っ赤に染まる。
 すると、3メートルを超える巨大な火の玉をソルティやリアに向けて吐き出した。
 とっさに二人を押し倒す。
 頭上を火の玉を越えていく。
 熱気が遅れて押し寄せてくる。

「どういうことだ? さっきまでと、全く違う――」
「どうやら、さっきまでカンダさんとセフィさんに向けられていた怒りが、リアさんとソフィアさんに向けられているようですね」
「何故だ? 二人は、関係ないはずだが?」
「いい加減、現状を把握してください。マリーさんは、カンダさんとセフィさんを実の親だと思っていたのでしょう? そして、それが嘘だったことが判明してドラゴンに変化したのでしょう? そして二人揃って、嫁と言ったのですから――」
「つまりリアがカンダさんを略奪したと勘違いしたということなの?」
「わ、私も!?」
「つまり……、リアとソフィアの悪ふざけが原因で、さらにマリーの暴走が酷くなったということか!」

 まったく、二人とも場を荒らすような真似はしないでもらいたい。

「悪ふざけじゃないの!」
「そうよ! 何のためにカンダさんの後を追ってきたと思っているの?」
「……もしかして、本気で言っているのか?」

 俺の言葉に二人が頷いてくる。
 
「まったく……、気がつかなかった……。俺は、少し鈍かったようだな……」
「少しじゃないの!」

 リアが、俺の言葉に突っ込みを入れてきたが返す言葉もない。

「――で、俺はどうすればいい?」

 現時点で、どうやって問題を収束すればいいのか想像もつかない。
 こういうときに、エルナが居れば相談することもできるのだが……。
 そんな俺にソルティが「セフィさんと再婚すればいいのではないですか?」と提案してきたが、俺にはリルカがいるから……。

「いや、それは……。俺にはリルカが居るからな……。そんなことをしたら裏切りになるだろうし……。第一、何人も妻を取るなんて貴族でも――」
「それなら、建国すればいいのではないですか?」
「おい、そんな夕飯の買い物を行くように簡単に言うなよな」

 
 


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