G線上の終焉歌
第三話 ロボット:モエ
「お帰りなさいませ、ご主人。遅かったですね」
寝巻に着替えているモエが出迎える。
「ああ、迷惑な試練とやらがあってな」
「?でもご主人なら瞬殺でしょう?」
首を傾げつつ、軽くそんなことを言う。
「いや。モンスターじゃなくて魔力計測だったからな」
「へえ。ではどうやって解決を?」
「・・・」
どうしよう?言うべきだろうか?そもそも会話を油断していた。
「その前に、お前は定期的に親父とか国に報告を行うとかなのか?」
「うーん。ですが私は基本的にご主人に従うようになっているので、報告しないように言われたらちゃんと聞きますよ?モエいい子です!」
「ほお。お前の仕事はオレの監視だろ?」
「監視を必ずしも報告するとは限りません。しかも私の仕事は監視ではなく奉仕です。ですからご主人が望まれれば夜の方も・・・」
「黙れ」
「・・・」
「あとお前これまで何してたんだ?」
「殺戮です」
へえ、そうか殺戮ねえ・・・って
「は?」
「モン○ンで」
「・・・ゲームせずに働け。っていうか飯も風呂もできてねえじゃねえか」
「あ、もしかしてご主人」
「何だよ?」
「あの定番の奴やって欲しかったんですか?ほらほら。ご飯にします?お風呂にします?それとも、わ・た・し?キャー」
「それ今、実質一択だろうが。っていうか黙って働け」
モエは嬉しそうにキッチンへと向かう。オレも風呂を沸かしにいく。
しばらくして沸いた風呂に入る。
アイツも入るんだろうな。うるせえなあ。
そして、悲しいなあ。アイツのことすら信じられないオレが。結局ごまかしてしまった。アイツは分かっていてオレのごまかしを信じてくれた気がする。
「あ、ご主人。私はもう入ったんで結構ですよ」
「・・・なぜ湯を捨てた」
もっともただの馬鹿かもしれないが。
「飯は・・・?」
「あ、ええと・・・その・・・」
黒焦げの何かが目に入る。
「・・・」
「あうっ、ご、ごめんなさい・・・」
「もういい。オレが作る」
どうやら夕食を作っては失敗し、作っては失敗し、を繰り返していたようだ。こんな優しい嘘を疲れたのは初めてかもしれなかった。
てきとうにあり合わせのもので野菜炒めとシチューを急いで作った。ちなみに肉はすべて焦げていたのでなしだ。
「あ、これおいしいです~」
「そうかよ。そのうち教えてやるよ」
人に出してやるのは初めてだな、などと思う。いやそもそも誰かと共に飯を食うこと自体ごく稀である。
「すごいですよ、ご主人は。何でもできて」
「そういってくれたのはお前が二人目だ」
「へえ。もう一人は?」
「従姉妹だよ」
彼女もまた呪いを背負っているはずだ。
おそらくそれを知っているであろうコイツは何も言わない。
そしてコイツが着替えている点にも、風呂に入った点にも・・・飯を美味いと言って食べたことにも、あえてオレも何も言わない。
人間じゃないオレたちが互いに相手を人間扱いするために。
これでもし疑うことさえなければ・・・なければどうなっていた?友達?恋人?そんなものがいたらオレは弱くなる。いたことなどないが。
まあコイツにしろ飛鳥にしろ決して現実にならないifの話をしても仕方がない。
オレはどうしようもなく悪魔に呪われ、世界を呪っているのだから。
「二つほど・・・聞いてもいいか?」
ある程度予想は立てているが。残念ながらコイツがオレに優しく接すれば接するほどオレはコイツを信じられなくなっていった。
「はい?」
「お前はどうやって動いているんだ?」
さっきの前置きには二つの意味がある。一つは一時的にロボットとして扱うがいいな?ともう一つは命に関わる重要なことを聞くぞ、という。動かし方を知るというのは止め方を知るということでもあるのだから。
シュルシュル
モエは胸元のリボンを解き上半身裸になっている。恥ずかしそうにこちらを見ている。襲いますか?いいえ。
「は?」
「これです。ここの水晶に込められた魔力で動いています」
「補充とかしないのか?」
「一年程は普通ならこの水晶がもちますから」
止め方は水晶の破壊になるだろうが。補充はなし、は本当だろうか?見張る必要があるな。それにしても・・・高性能だ。恐らく作ったのは国の最高の機関だな。だがまだ試供品、いやそれ以前の危険物扱いか。
「あれ?もしかして興奮しちゃいましたか?」
「してねえよ」
「またまた~」
「悪かったな」
「へっ!?」
「もう二度とこんなことは聞かない。お前はオレが接してきたなかでは一番の人間だ」
まあ飛鳥は置いておく。兄はいろんな意味で人間じゃなかったしな。オレの周りはそんなんばっかりだった。
一瞬驚き、何を言っているのか分からないという様子になった後
「う、うえ・・・うえ~ん」
「あーもう。うるせえ、泣くな」
ポンポンと茶髪の頭に手をおく。
「ますたぁ、一生着いていきますぅ。ううぅっ」
こんな料理すらできねえヤツが一生お荷物かよ、と笑みがこぼれた。いつもの卑屈な苦笑とは少し違ったものだった。
しばらく胸に顔を埋めてえくえぐと泣くモエの頭を撫で続けていた。ちなみにメイドカチュは外して、しかもツインテールも解いている。コイツ完全に寝る気だったよな。
「じゃあ二つ目」
表情を変え、部屋の空気も変える。
「いえ。それは私が当てましょうか?」
「ほお」
「そこの客人はご主人に呼ばれたと言っていたんですがね。驚かしたいという理由で屋根裏へ」
「そうか」
「・・・確かめないんですか?」
「いや。もう確かめた」
「なっ!い、いつの間に?」
「聞きたかったのはそこじゃなくてな。なぜそれをお前が黙っていたか、だよ。まさかそのくだらない嘘を信じた訳じゃないんだろう?」
「いえ。それは・・・その・・・」
「もう嘘をつくのはやめてくれよ?オレはお前を信じたいんだ」
「失礼ながら、ご主人様を試させてもらいました。私が仕えるのに相応しいかどうか」
「で、どうだった?」
「概ね合格です。流石です。ですが、殺しちゃいけませんよ、誰であろうと」
「へえ。なんで?」
「殺すという行為はそれを行った人を人をならざるものに変えてしまいます」
飛鳥の時と正反対に自分の問いに、ほぼ完璧な正解がきた。
「…オレはもうとっくになっちまってるさ」
オレがそううそぶいて、終わり、のはずだった。
「いいえ!違います!ご主人様はまだ人間です」
今度は根拠のない肯定だった。でも、オレにはとても暖かくそして嬉しいものに感じられた。
寝巻に着替えているモエが出迎える。
「ああ、迷惑な試練とやらがあってな」
「?でもご主人なら瞬殺でしょう?」
首を傾げつつ、軽くそんなことを言う。
「いや。モンスターじゃなくて魔力計測だったからな」
「へえ。ではどうやって解決を?」
「・・・」
どうしよう?言うべきだろうか?そもそも会話を油断していた。
「その前に、お前は定期的に親父とか国に報告を行うとかなのか?」
「うーん。ですが私は基本的にご主人に従うようになっているので、報告しないように言われたらちゃんと聞きますよ?モエいい子です!」
「ほお。お前の仕事はオレの監視だろ?」
「監視を必ずしも報告するとは限りません。しかも私の仕事は監視ではなく奉仕です。ですからご主人が望まれれば夜の方も・・・」
「黙れ」
「・・・」
「あとお前これまで何してたんだ?」
「殺戮です」
へえ、そうか殺戮ねえ・・・って
「は?」
「モン○ンで」
「・・・ゲームせずに働け。っていうか飯も風呂もできてねえじゃねえか」
「あ、もしかしてご主人」
「何だよ?」
「あの定番の奴やって欲しかったんですか?ほらほら。ご飯にします?お風呂にします?それとも、わ・た・し?キャー」
「それ今、実質一択だろうが。っていうか黙って働け」
モエは嬉しそうにキッチンへと向かう。オレも風呂を沸かしにいく。
しばらくして沸いた風呂に入る。
アイツも入るんだろうな。うるせえなあ。
そして、悲しいなあ。アイツのことすら信じられないオレが。結局ごまかしてしまった。アイツは分かっていてオレのごまかしを信じてくれた気がする。
「あ、ご主人。私はもう入ったんで結構ですよ」
「・・・なぜ湯を捨てた」
もっともただの馬鹿かもしれないが。
「飯は・・・?」
「あ、ええと・・・その・・・」
黒焦げの何かが目に入る。
「・・・」
「あうっ、ご、ごめんなさい・・・」
「もういい。オレが作る」
どうやら夕食を作っては失敗し、作っては失敗し、を繰り返していたようだ。こんな優しい嘘を疲れたのは初めてかもしれなかった。
てきとうにあり合わせのもので野菜炒めとシチューを急いで作った。ちなみに肉はすべて焦げていたのでなしだ。
「あ、これおいしいです~」
「そうかよ。そのうち教えてやるよ」
人に出してやるのは初めてだな、などと思う。いやそもそも誰かと共に飯を食うこと自体ごく稀である。
「すごいですよ、ご主人は。何でもできて」
「そういってくれたのはお前が二人目だ」
「へえ。もう一人は?」
「従姉妹だよ」
彼女もまた呪いを背負っているはずだ。
おそらくそれを知っているであろうコイツは何も言わない。
そしてコイツが着替えている点にも、風呂に入った点にも・・・飯を美味いと言って食べたことにも、あえてオレも何も言わない。
人間じゃないオレたちが互いに相手を人間扱いするために。
これでもし疑うことさえなければ・・・なければどうなっていた?友達?恋人?そんなものがいたらオレは弱くなる。いたことなどないが。
まあコイツにしろ飛鳥にしろ決して現実にならないifの話をしても仕方がない。
オレはどうしようもなく悪魔に呪われ、世界を呪っているのだから。
「二つほど・・・聞いてもいいか?」
ある程度予想は立てているが。残念ながらコイツがオレに優しく接すれば接するほどオレはコイツを信じられなくなっていった。
「はい?」
「お前はどうやって動いているんだ?」
さっきの前置きには二つの意味がある。一つは一時的にロボットとして扱うがいいな?ともう一つは命に関わる重要なことを聞くぞ、という。動かし方を知るというのは止め方を知るということでもあるのだから。
シュルシュル
モエは胸元のリボンを解き上半身裸になっている。恥ずかしそうにこちらを見ている。襲いますか?いいえ。
「は?」
「これです。ここの水晶に込められた魔力で動いています」
「補充とかしないのか?」
「一年程は普通ならこの水晶がもちますから」
止め方は水晶の破壊になるだろうが。補充はなし、は本当だろうか?見張る必要があるな。それにしても・・・高性能だ。恐らく作ったのは国の最高の機関だな。だがまだ試供品、いやそれ以前の危険物扱いか。
「あれ?もしかして興奮しちゃいましたか?」
「してねえよ」
「またまた~」
「悪かったな」
「へっ!?」
「もう二度とこんなことは聞かない。お前はオレが接してきたなかでは一番の人間だ」
まあ飛鳥は置いておく。兄はいろんな意味で人間じゃなかったしな。オレの周りはそんなんばっかりだった。
一瞬驚き、何を言っているのか分からないという様子になった後
「う、うえ・・・うえ~ん」
「あーもう。うるせえ、泣くな」
ポンポンと茶髪の頭に手をおく。
「ますたぁ、一生着いていきますぅ。ううぅっ」
こんな料理すらできねえヤツが一生お荷物かよ、と笑みがこぼれた。いつもの卑屈な苦笑とは少し違ったものだった。
しばらく胸に顔を埋めてえくえぐと泣くモエの頭を撫で続けていた。ちなみにメイドカチュは外して、しかもツインテールも解いている。コイツ完全に寝る気だったよな。
「じゃあ二つ目」
表情を変え、部屋の空気も変える。
「いえ。それは私が当てましょうか?」
「ほお」
「そこの客人はご主人に呼ばれたと言っていたんですがね。驚かしたいという理由で屋根裏へ」
「そうか」
「・・・確かめないんですか?」
「いや。もう確かめた」
「なっ!い、いつの間に?」
「聞きたかったのはそこじゃなくてな。なぜそれをお前が黙っていたか、だよ。まさかそのくだらない嘘を信じた訳じゃないんだろう?」
「いえ。それは・・・その・・・」
「もう嘘をつくのはやめてくれよ?オレはお前を信じたいんだ」
「失礼ながら、ご主人様を試させてもらいました。私が仕えるのに相応しいかどうか」
「で、どうだった?」
「概ね合格です。流石です。ですが、殺しちゃいけませんよ、誰であろうと」
「へえ。なんで?」
「殺すという行為はそれを行った人を人をならざるものに変えてしまいます」
飛鳥の時と正反対に自分の問いに、ほぼ完璧な正解がきた。
「…オレはもうとっくになっちまってるさ」
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