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Each other's backs

有賀尋

Put a thought on a small mechanism

もうすぐいつきの誕生日が来る。

正確に言えば、誕生日ではなく、目を開けて、一嶋係長に「加々美いつき」と名前をもらった日だ。
誕生日には必ず花を贈るのが習慣となっている。物でなくていいのか、と聞いたことがあったが、いつきは花が欲しいと言った。毎年違う花を贈っているが、正直そろそろネタが尽きかけてきた。

というか、大体花を贈るなんて、俺の柄じゃない。

「…今年は何の花を贈ろう…」

昨年は確か黄色とピンクのゼラニウム、花言葉は「予期せぬ出会い」「決心」「決意」だったか。

今年はどうしよう…

PCで花を調べながら、何がいいのかを探していた。
バラ、ユリ、ウメ、コチョウラン…どれも違う。

そもそも、俺達は友情で表せるものじゃないし、かと言って恋人かと言われても違うし…相方…相棒…?
でも明らかにお互いの距離はゼロに近いわけで…じゃなきゃ後ろから抱きしめたり一緒に寝たりしないし…。

久しぶりの自宅で頭を抱えていた時、ふと目に止めた花があった。何故か、1番いつきらしい気がした。

これだ。

部屋着から着替えて花屋に向かう。
花屋でそれなりの花束を作ってもらい、誕生日に俺の部屋に届くようにしてもらった。
これで喜んでくれるといいが。

数日後にいつきは誕生日を迎えた。
花束を鯰尾達の部屋に隠して、誕生日を祝った。
花束を部屋から持ち出して、いつきの目の前に差し出す。

「いつき、誕生日おめでとう」

選んだ花はアングレカム。冬の花で、色は白や淡緑。

花言葉は「祈り」「いつまでも一緒」

「ありがとう…!きれいだね…」

いつきがふわっと微笑む。

「あら、アングレカムじゃない。いつきにぴったりね」
「流石百瀬さんですね」
「当然よ。…有賀君らしいわね」

多分小さな仕掛けに気がついたんだろう。百瀬さんが俺にだけ聞こえる声で呟いた。俺はいつきに見えないように百瀬さんに向かって人差し指を口に当てた。百瀬さんは微笑んで頷いてくれた。

「母さん、花瓶なかったっけ?」
「後で生けてあげるわ」

賑やかに誕生日は過ぎていった。

次の日に俺は任務があって自宅に戻った。
今頃、いつきは花言葉を調べているはずだ。

アングレカムの中に見えないように上手く隠した一輪だけ差した紫色のチューリップ。

花言葉は「不滅の愛」

色合いが目立つからどうしようかと迷った挙句、作ってくれた花屋の店員さんが上手く隠してくれた。

…気づくといいが。

気づいてほしいような、そうでないような。
複雑な気持ちになりながらも、それに気づいたいつきがどんな反応を示すのかを少し楽しみにしながら、俺はもう来年の今日のことを考え始めた。

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