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Each other's backs

有賀尋

My little angel

「おとーさん!起きてー!」

元気な息子の声で目を覚ました。尋は俺の上に乗って、俺が起きるのを待っている。

「尋…?早いな…?」
「おとーさんお外で遊ぼ!」
「……外?」

早く起きろと急かされて寝間着のまま尋を抱いてリビングへ向かう。百瀬と有賀が起きていて、キッチンに立っていた。

「おかーさん!おとーさん起きた!」
「おはよう雛森。尋ちゃんお父さん起こせたのね、えらいわよ」

百瀬が尋の頭を撫でた。

「おはようございます、雛森さん」
「おはよう、百瀬、有賀。あれ、いつきと鯰尾と長谷部は?」
「鯰尾と長谷部くんは早朝から任務に行ったわ。今回は少し長いみたいよ」
「いつきはまだ寝てます」

そういえばそんなことも言ってた、とあとから思い出す。
鯰尾と長谷部は今チャーチで新人教育を任されているらしい。新人教育をしながら自分たちの任務もこなすとなると、よっぽど大変なはずだ。

「なんで俺起こされたの?」
「外見てごらんなさい」

そう言われてリビングの窓から外を見る。
すると、辺り一面が真っ白になっていた。

「…雪…」
「外見た瞬間尋ちゃん興奮しちゃって。お父さんと遊ぶんだって起こしに行ったのよ」
「雪だるまつくりたいみたいですよ」

雪を見て、俺は胸が痛んだ。
雪は…嫌な思い出しかない。

「…おとーさん?」

尋が俺の顔を心配そうに見つめていた。
俺は何も無かったように笑いかけ、頭を撫でた。

「あぁ、ごめん、ご飯食べたら遊ぼうな」
「うん!」

朝食を終え、百瀬が尋に子ども用のニット帽を被せ、つなぎのウェアを着せ、手袋をつけさせていた。

「…それ、いつの間に買ったの?」
「昨日よ。尋ちゃんとデートして買ったの。ねー?」
「ねー!」

百瀬と尋が顔を見合わせて笑う。
こんなに幸せでいいのかと思うくらいだ。
厚手のダウンを着て、長靴を履いて外に向かう。辺り一面が雪で覆われていて、日光が当たって眩しいくらいだ。

「わぁ…!」

庭ではしゃいで走り回ったり、雪の上に寝そべってみたり、転んでみたりする尋を横目に、俺はただ見つめるだけだった。

「おとーさーん!」

庭の真ん中の雪山に尋が座って手を振っている。
手を振り返すと尋が駆け寄ってきた。ウェアが雪まみれになって頬と鼻が赤くなっていた。

「尋、お鼻真っ赤だぞー?」
「トナカイさん!」
「真っ白になってるし全く…」

と、雪を軽く叩いて落とす。
実の子どもじゃないが、尋は可愛い。
きっと優しいまま育っていくんだろうなと思った。

「雪だるま作るー!」
「お、じゃあ作ろうか」

尋と雪玉を作り、雪の上を転がす。しばらく転がすと大きくなりはじめ、雪だるまを組み立てた頃に百瀬がやってきた。

「おかーさん見てー!雪だるまできた!」
「あら、随分大きな雪だるまね。尋ちゃん、お顔作ったら?」
「雪だるまさんにお顔?」

尋が首を傾げると百瀬は笑って続けた。

「そうよー、お顔作るの」

そう言うと、百瀬は炭やら人参やらを尋に渡した。

「お父さんと一緒に作ってらっしゃい」
「はーい!」

雪だるまに近寄って、尋を抱き上げると目を付けたり鼻を付けたりした。専らやるのは尋で、俺はただ抱いていただけだが。

「お顔できたー!」
「お、出来たなー」

それからは雪山から滑ってみたり、走ってみたりした。雪の上だから冷たいが転んでも痛くない。むしろ転んでも笑っているくらいだ。
しばらく遊ぶと、疲れてきたようでぐずり始めた。

「お家入ろー…?」
「疲れたか?じゃあお家入ろうか、お母さんや兄ちゃん達が待ってるぞー」

庭から戻って玄関でウェアを脱がせる。上から下までびしょ濡れだ。

「おかえり。あら、だいぶ遊んだのね」
「ただいま。疲れたって言ってたから戻ってきた」
「ウェアとか手袋貰うわ。乾かさないとね」

ウェアや手袋を受け取った百瀬は先にリビングへ戻っていった。俺は尋を抱いてリビングへ戻る。

「あ、おかえり父さん、尋」
「おかえりなさい、なにか飲みますか?」

リビングにはいつきと有賀がいた。PCを開いていたことから作戦でも練っていたんだろう。

「じゃあ俺コーヒーかな。尋は?」
「…ここあがいい…」
「わかりました、待っててください」

有賀が立ってキッチンへ向かう。その間尋を抱いて炬燵に入る。

「尋眠そうだね」
「はしゃぎまくってたからなぁ…。疲れたんだろ」
「ここあ…飲む…」

眠そうに目を擦りながら尋は大人しく腕の中に収まっていた。
しばらくして有賀がお盆に全員分の飲み物を乗せて戻ってきた。

「お待たせしました。ついでだし、俺達も休憩しよう。百瀬さんもどうですか?」
「あら、じゃあそうしようかしら」

尋の前にココアを置いて、俺と百瀬といつきにはコーヒーを置いた。

「尋、ココア来たぞー…って…」

尋に声をかけると、穏やかに寝息を立てていた。どうりで少し重くなっていたわけだ。

「あら、寝ちゃったのね」
「よっぽど楽しかったんだね、雪遊び」
「はしゃいでる声ここまで聞こえてたからな」

起こさないように抱き直してコーヒーに口をつける。

「…あの時を思い出すわね」
「…そうだな」

尋を初めて抱いたあの日。
笑ってくれたあの日。
指を掴んでくれたあの日。

そっと頭を撫でて炬燵の布団をかけ直した。

「…雪だるまー…」

寝言で呟いたのを聞いて、その場にいた全員が笑った。

「あらあら、夢の中でも雪遊びしてるのね」
「今度は俺達が相手しようか、涼」
「そうだな」

俺は腕の中にいる小さな天使を微笑んで見つめていた。

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