それぞれの愛の形

嘉禄(かろく)

Canaria

君が僕の前から消えて、少し経った。
夢に見るのは、君と過ごした楽しかった日々ばかり。
君といた部屋に残されたのは僕と、君が愛したカナリア一羽。

『この鳥可愛いね、カナリアっていうんだ…綺麗な声で鳴くんだって、ねぇ飼おうよ』

一目で気に入った君は、僕が首を縦に振るまでそこから動かなかったね。
君の意思で一緒に暮らすことになったカナリアは、君からずっと離れずに愛されて育った。
正直、僕なんかより愛されてるんじゃないかってくらいに。
誰よりも優艶な声で歌って…けれど、もうそれすら君の元へは届かない。

夜になるといつも同じ夢を見る。
僕が羽を羽ばたかせて、君と見た場所へのぼる。
けれど何かに阻まれて、僕はそのまま空に消える。
そして、一人きりの部屋で目がさめる。

…もう一度、君の声で「愛してる」と言われたい。
そう願いを込めて、僕は今日も空へ羽ばたく。

コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品