異世界をギルティ&フェイムで人生謳歌

深谷シロ

二話:異世界 - Another world

「【ヘルプ】。」


何をして良いかも分からなかったので取り敢えず言ってみた。


『<転生プログラム>のコマンドに反応。<補助プログラム>を起動します。ダウンロード開始……0%、1%……』


また、別のプログラムをダウンロードするのか。しばらく待つとしよう。


待つこと10分。ダウンロードが完了した。


『ダウンロード完了。<補助プログラム>が起動します。』


脳内に機械音が流れた。PCなどを起動する際の音に似ている。


『このプログラムは異世界生活において、あなたを補助します。検索欄にキーワードを入力するか音声検索をして下さい。また、ステータスを表示したい場合は【ステータス】と唱えて下さい。』


タイピングは得意だ。【文字検索】を押す。空中にキーボードがAR表示された。


キーボードは異世界語だ。全く読めない。どうしようか待っていると、<自動翻訳>が起動した。


『自動翻訳中……完了しました。』


キーボードを再度見てみると、文字が元の世界でも見たことのある英語と日本語の文字で構成されたキーボードになっていた。


これなら楽々タイピングが出来る。ブラインドタッチも可能である。


カタカタカタと鳴らせながらタイピングしていく……と思ったが、キーボードは全く音が鳴らなかった。押している感じがしないな……。


僕が検索枠に打ったのは、『この異世界について』だ。


検索枠の横にある検索ボタンを押した。元の世界と変わらない。


『検索します……検索完了。検索結果を表示します。』


おっ、出るようだ。どれどれ……


◇◇◆◇◇


【検索結果】


検索内容:この異世界について
検索結果:


この世界は<地球>とは異なる異世界。
この世界は<テルメリア>と呼ばれる。様々な種族が共存する世界。


宗教は二つ存在する。<正教>と<魔神教>である。
<正教>は、絶対神を主神とする宗教。この世界の9割がこちらの宗教の教徒となっている。


<魔神教>は、魔神を主神とする宗教。この世界の1割がこちらの宗教の教徒となっている。


互いの宗教は争っており、大陸間での宗教戦争が激しくなっている。この戦争は100年前から続いている。


戦地付近の住民は重税で苦しみ、飢饉が大量発生している。


また、<テルメリア>には3つの大陸が存在する。


1つがこの地。<中央大陸アルメンテ>である。最も人口が多い大陸。そして最も文明が発展している大陸。<正教>を統一宗教としている。


1つがここより南にある地。<魔大陸ゼルネンス>。魔族が多く住む。文明があまり発展していない。力至上主義の大陸。<魔神教>を全ての種族が信仰している。


1つがこの下にある地。<地下大陸グランデル>。他二つの大陸より逃げてきた、難民などが住む。<アルメンテ>程ではないが、文明も発展している。<アルメンテ>より逃げてきた科学者などが発展させたと考えられている。また、軍隊を結託しているという噂がある。


<テルメリア>では魔法が盛んである。スキルは盛んでなく、珍しい。場合によっては差別対象となる。奴隷制度がある。地球に比べるとあまり文明が発展していない。


様々な職業も存在している。職業持ちは特有の<職業スキル>を保持している。例として、皇帝や王であれば<統治>というスキル。農家であれば<農作>というスキル。剣士であれば<剣術>というように。


この<テルメリア>に転生者はあなた以外にもいます。


◇◇◆◇◇


……情報を整理しよう。


まずこの世界の名前は<テルメリア>。地球とは異なる世界である。この世界に転生者は僕以外にもいる。


「いつか探しに行くとしよう。」


<テルメリア>には<中央大陸アルメンテ>と<魔大陸ゼルネンス>、<地下大陸グランデル>の3つの大陸がある。


<アルメンテ>では<正教>が主流。絶対神を崇める。人口が多く、文明も発展している。


<ゼルネンス>では<魔神教>が主流。魔神を崇める。魔族が多く、文明があまり発展していない。


<グランデル>には他の大陸から逃れた難民が多い。文明はそこそこ。


魔法が盛んな世界でスキルはあまり盛んでない。<職業スキル>は特別扱い。各職業に職業スキルがある。


僕は……確認するためには【ステータス】と唱えるって言ったっけ。


「【ステータス】。」


◇◇◆◇◇


【ステータス情報】


名前:三笠ミカサ水斗ミナト
年齢:15歳
性別:男
種族:人間ヒューマン
職業:鍛冶師、魔物調教師モンスターテイマー
称号:転生者


レベル:1
経験値:0
有罪ギルティポイント:0
名声フェイムポイント:0


レベルアップのために
必要な経験値:10
必要な有罪ギルティポイント:10
必要な名声フェイムポイント:10


取得スキル:
〈固有スキル〉
大賢者:レベル1
自動翻訳:レベル1
成長促進:レベル1


〈職業スキル〉
鍛冶:レベル1
魔物使役::レベル1


〈通常スキル〉
未取得


◇◇◆◇◇


僕は<鍛冶師>と<魔物調教師モンスターテイマー>のようだ。


スキルと職業の説明も見たいな。調べてみようかな。


『【ヘルプ】。』


同じようにキーボードがAR表示。一つ一つ調べていった。


◇◇◆◇◇


【検索結果】


検索内容:大賢者、自動翻訳、成長促進、鍛冶、魔物使役、鍛冶師、魔物調教師モンスターテイマー
検索結果:
<大賢者>はステータスに補正がつく。また、レベル無制限・成長促進を得られる。さらに1度見たスキルを手に入れる事が出来る。


<自動翻訳>は、ありとあらゆる言語を脳内で自動翻訳する。種族が違う場合も翻訳可能である。
翻訳するのは言葉だけでなく、文字も翻訳して知っている言語で視ることが出来る。


<成長促進>は、魔物討伐時の経験値獲得量を上昇させるスキル。またレベルアップ条件を緩和する。ギルティ&フェイムポイントの獲得量も上昇させる。レベルアップ時のステータス上昇値も大きくなる。


<鍛冶>は、様々なものを作り出せるスキル。スキル発動には必要な原料を揃える事が必須となる。
さらに新しいものや改造などもアイデアがあれば作り出すことが出来る。
このスキルによって得られる職業は<鍛冶師>。


<魔物使役>は、魔物を使役するスキル。使役した魔物は召喚した者の命令に従う。どのような命令にも従うが、感情を使役する事は出来ない。
使役した魔物は、召喚した者に攻撃する事が出来ず、召喚した者が死んだ場合は共に死ぬ。
このスキルによって得られる職業は<魔物調教師モンスターテイマー>。


<鍛冶師>は、鍛冶をする者達に与えられる職業名。鍛冶師は必ず<鍛冶>スキルを持つ。鍛冶する際には素材が必要であるが、鍛冶道具などはいらない。鍛冶の成功確率はスキルレベルに比例する。


魔物調教師モンスターテイマー>は、魔物を使役する者達に与えられる職業名。魔物調教師モンスターテイマーは必ず<魔物使役>スキルを持つ。


◇◇◆◇◇


ふむ……。僕が選んだ<大賢者>というスキルは正解だったようだ。見たスキルを手に入れることが出来るか……。


さっき、キーボードが見やすくなったのは、<自動翻訳>のお陰みたいだな。これは重宝しそうだ。


<成長促進>や<鍛冶>と<魔物使役>も使えるかもしれない。考えて使おう。


さて、ここはどこだろうか。


【ヘルプ】には……


◇◇◆◇◇


【検索結果】


検索内容:ここ周辺の情報
検索結果:


今、立っている場所はウルグレス王国のシュナー市近郊。シュナー市まで東に1kmの地点。


シュナー市は人口100万人のウルグレス王国王都。シュナー市の中央には白い王城が聳え立つ。王城の近くにはウルグレス騎士団の本隊がいる施設がある。


また、シュナー市内には冒険者ギルドの本部、商業ギルドの本部、職業ギルドの本部、研究者ギルドの本部、学者ギルドの本部、魔術ギルドの本部がある。


<中央大陸アルメンテ>最大の都市であり、様々な種族の行き来が激しい。また、最大の観光都市でもある。


<中央大陸アルメンテ>で最も大きい都市ということは、世界でも最も大きい都市であるということだ。


転生してきた土地としては良い土地では無いだろうか?さて、市内に入ろうかな。


ここからは僕の視力では門が見えないけど、に1km歩けば良さそうだ。


【ヘルプ】によると太陽の昇り沈みの方向は地球と同じようだ。太陽の動きを確認すると……


太陽が2つあった。2つの太陽は距離が違うようだ。片方だけ大きい。どちらも東から昇り、西に沈んでいる。西へ流れているから、あちらの方向か。


僕は右を向いて、歩き出した。


太陽が照りつけて若干眩しい。左を向くと、森がある。休憩したいが、休む場所がない以上、早めにシュナー市に辿り着きたい。


今の僕はスキルがあるが、装備はない。この異世界のものと思われる服を着ているのみだ。飲み物も食べ物も無い。


衣食住の衣しかクリアできていない。食事や住宅は宿があれば良い。要するに市へ行きたい。


10分歩いて辿り着いた。1kmは長そうで長くない。ゆっくり歩いていたから時間が掛かった。


門の前には商人などだろう。馬車や旅人が並んでいる。僕も最後尾に並ぶ。


1人、また1人と門を通っていった。ここから市内が見えるが、活気づいている。皆が生き生きとしている。流石、世界最大都市と言ったところか。


次の並んでいる人は追い出された。どうやら指名手配中の盗賊だったらしい。バレて逃げたようだ。その後ろを門番の人が追いかけている。


「お前、退け!!」


言われたのは僕だった。僕の背後には人がいない。前も馬車だ。100%、僕だ。どうしよう。


退かねえと殺すぞ!」


盗賊は懐からナイフを取り出した。元から持っていたものだろう。護身用という訳か。


こういう時に焦る・油断するの2つは厳禁だ。ギリギリまで落ち着く。そして、最適解を求める。焦って失敗するより落ち着いて導き出した最適解の方が結果が良い。


僕は最適解・・・を選ぶ。


盗賊の身体はあまり大きくない。性別は男……ではない?体つきから男だとしても力は無い。身長が約150cmと低めなことから女だろう。


足は早いが、武道を習っている者の動きでは無い。ナイフの持ち方から素人だろう。殺人もした事が無いのではないか?


そうだ。【ヘルプ】だ。僕は小声で「【ヘルプ】。」と呟いた。


コンマ差で<補助プログラム>が起動。キーボードが空中に出現する。目の前の盗賊が驚いているのが見える────が、気にしない。


高速タイピングを目の前の盗賊に披露しつつ、検索する。検索結果が出た。


僕が調べたのは、目の前の盗賊のステータスだ。プライバシーなんてものは無いようだ。もしかするとスキルで隠せるのかもしれないが……今は急いでいる。スキルでステータスを偽装していないと仮定しておこう。


◇◇◆◇◇


【検索結果】


検索内容:目の前の盗賊のステータス
検索結果::


名前:メル・クレシア
年齢:13歳
性別:女
種族:人間ヒューマン
職業:盗賊見習い
称号:未取得


レベル:2
経験値::17
有罪ギルティポイント:10
名声フェイムポイント:5


レベルアップのために
必要な経験値:20
必要な有罪ギルティポイント:15
必要な名声フェイムポイント:15


取得スキル:
〈固有スキル〉
未取得


〈職業スキル〉
盗賊:レベル3


〈通常スキル〉
隠密:レベル5
敏捷:レベル5
跳躍:レベル5
無音:レベル5


◇◇◆◇◇


盗賊系スキルが多い。盗賊として持て囃されてもおかしくない。だが、盗賊見習いである。盗賊ではないのだ。


まだ盗んだ経験も無い可能性がある。恐らく仲間の盗賊が捕まった時に見られたか何かして指名手配。ここらの線で間違いないだろう。


未だに有罪ギルティポイントや名声フェイムポイントについては調べてないが、今は時間が無い。


深呼吸をする。この相手ならば、ナイフで刺すか、切りつけるかのどちらかだろう。ならば直前の動作で見極める。


振り上げれば、突っ込む。突き出してくれば、避ける。


その後の動作は同じだ。ナイフを取り上げて抑える。それで完了だ。


さて、どうしてくるかな?


目の前の盗賊さんは振り上げてきた────そちらか。ならば、突っ込む……!!


振り下ろす前に突っ込み、ナイフを払う────そして、背後に周り組み伏せる。完了。


門番が話し掛けてきた。


「ありがとう、そいつは盗賊なんだ。こちらに渡してくれるか?」
「この人はどうするんですか?」
「恐らく……犯罪奴隷に落とされるな。重労働を強いられるだろう。」
「何かしたんですか?」
「あぁ、そいつは公爵様の屋敷に忍び込んで、殺そうとしたんだ。殺人未遂で指名手配していた。市外に逃げられてしまったが、こうしてまた見つけれるとはな。」


どうしてこの子が盗賊だと思ったのだろう。フードを深く被って顔が見えない。分かるのは体つきと身長くらいだ。


「この子が盗賊だと分かったんですか?」
「何となくだよ。声が似ていたんだ。」
「そうですか……。」


どうしようか。この子は悪いことをしていない。僕に対してナイフを振り上げた時も僕が逃げるのを待ったのだろう。


隙だらけの僕にナイフで切りつけなかった。根は優しい子ではないかと僕は思っている。


僕はその時、ある案を思いついた。


「……この子は僕の知り合いですよ。遠く離れた田舎村から来たんです。先に行ってしまったので心配していたんですが、ここに着いたら追いかけられてるじゃないですか。少し痛い目を見てもらいました。恐らく盗賊とは別だと思いますよ。」
「お前に向かってナイフを振り上げていたんだぞ?」
「ナイフで僕を切りつける気は無かったみたいですよ?実際、僕は隙だらけでしたし。」
「……」


盗賊の女の子は全く喋らない。嘘ではないという事かな?


「分かった。俺が聞いた盗賊の特徴と違うようだ。すまない。離していいぞ。」
「あ、そうですね。お騒がせしてすみませんでした。」
「いや、良い。それよりお前、市内に入るんだろう?」
「ええ。」
「入らないくて良いのか?」
「あっ。」


目の前にはもう誰もいなかった。のんびりし過ぎたようだ。日も暮れてきた。早く入るとしよう。


「じゃあ、メル行こうか。」
「……!」


メルは大人しく僕の後に続いて市内へと入っていった。

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