勇者8度の世界で何思う

夢空

実力検定

「それじゃあこっちに来て」

「はい」

場所は移り変わり武道館のような場所にたどり着いた。中に入ってみると人が1人だけ立ってこっちを向いていた。すると、

「ん?その子が言ってた途中参加の子?」

その人は俺に指さして聞いてくる。

「はい。実力検定をタワさんにやって貰おうと思いまして」

「なんで俺なの〜。俺今年で30超えるのよ。他にも若い先生いくらでもいるだろ。子供の世話なんかしたくねぇよ」

見た目は美おっさんと言えばいいのだろうか。おじさん好きの女子にモテそうな顔である。しかし、今のを聞くとかなりの面倒くさがりのようだ。

「いま忙しくなさそうな人タワさんしかいないんですから。ちゃんと仕事全うしてください。」

タワというおっさんは頭をかきながら、

「はぁーこれだから年寄りいじりは嫌だわー。こんな事ならクラス分け進行役に入っとけばよかったぜ」

面倒くさがりながらも「こっちこい」と手招きをし検定をしてくれるそうだ。根は真面目らしい。

「んじゃ、説明するぞ。
俺を倒せ。以上」

は?

「え、それだけですか?」

俺はあまりに短い説明に困惑しながら聞くと、また面倒くさそうに顔を歪め、

「えぇー、もう説明することないでしょ。バリアはお互いが戦闘に了承すれば勝手に付くし。

あ、この戦闘魔法でも剣一本でもいいぞ。俺を倒そうとしてこい。無理でも10分でこれ終わるから」

そう言うとタワさんは片手剣を右手に持ち面倒くさそうに「んじゃこい」と言う。

「でも俺剣持ってないですよ?」

するともっと顔を歪め、

「えぇー?じゃあミィちゃんその子に好きな剣渡してあげなよ」

「はい。じゃあクロハくんあそこから好きな剣選んで」

ミィスさんは壁に付いてある机に指さす。見るとそこには色々な種類の剣が置いてあり俺はそこにある片手剣に目を注ぐ。俺はこの20年間ずっと片手剣で戦っていた。俺はもちろんと片手剣を手に取り「意外と重いな」と思いながらタワさんに振り向く。そして、

「じゃあ俺は剣と魔法で行きます」

そう言うと、

「んぇぇ、めんどっくせぇ
お前魔法剣士かよ」

そう言いながらも何故だろう。心なしか目が輝いたように見える。

「お前魔法どこまでつかえるの?」

俺はタワさんに近づきながら、

「2級までしか使えないです」

そう言うと次はあからさまに幻滅したように見えた。きっと魔法剣士と聞いて期待したのだろう。だが2級までと聞いて面白くないとか思ったのだろう。

(悪いが女神のミッションはSクラスに入る事だ。お前には絶対に勝たないといけない)

俺は剣先を下に向けを左右に少し振り手に馴染ませる。そして、ある一定の距離を開けて止まる。すると、

「では今から実力検定を始めさせていただきます。はじめ!」

声が響き緊張がはしる。俺はまず敵の動きを見ようとしたがタワさんは一歩も動こうとしない。あえて自分から攻めず俺に攻めさせ、俺の実力を出させようとしている。

(それなら…)

俺は体制を小さく屈め、

(初手から全力で行く!)

一気に加速する。1歩目の左足が地面についたその時俺は魔法も発動させる。俺の周りに先端が尖った土の塊が5個ただよう。そして、

「行け!」

土の塊はタワさんに向かって飛んでいく。車の速さと同じぐらいの速さで飛んでいるため普通に当たれば一発KOだ。

「くそ、無詠唱使いかよ。聞いてねぇぞ。」

しかし、さすが魔法学園の先生と言うべきだろう。一個一個を焦らずに見抜き全弾を避け切る。

「マジかよ。一個は当たると思ったんだけど…」

俺は頭を切り替え剣を構える。走る勢いは止めず剣を振りかぶる。

「ふん!」

右から左へと剣をなぎる。俺は左に剣をなぎいた後、上に持っていき叩きつけるつもりだった。しかしその思惑は、

ギィンッ

「おーおー若いねー」

止められることとなった。

「勢いはおじさん負けちゃってるけど大事なのは身のこなしだ。見てて思ったけど攻撃が直球すぎる。フェイントもなければ自分に有利な場の持っていき方さえ考えてない。それじゃあダメだな」

剣に入れる力を強くするが全くビクともしない。やはり俺の筋力はこの世界では普通よりちょっと強い程度なのだろう。だから俺は頭で勝つ。

「自分に有利な場…ですか。
それって今この状況のことを言ってますか?」

俺はニヤッと笑って問い返す。

それを怪訝な表情で見ているが急に理解したようで顔がこわばる。しかし、もう遅い。

ヒュッ、ヒュッ、ヒュッ、ヒュッ、ヒュッ

俺はタワさんの剣から自分の剣を離す。

「どうですか?動けないでしょ、それじゃあ」

横から伸びた棒がタワさんの各関節に巻き付き固定している状態である。それはクロハが先に飛ばしていた土の塊5個だ。そこから棒状に伸びタワさんの体に巻きついていた。簡単なことだ。魔力を込め大きめのサンドスピアを作る。そして、まだ全体ができず先端だけができた時に発射。後は棒状に伸びるサンドスピアに入れておいた魔力を操作してくにゃくにゃと曲げれば完成。圧倒的な魔力のコントロール力がないと霧散してしまうがこの世界のクロハには持ってこいの魔法だ。

「おいおい…こんなチンケな技使うとか聞いてねぇぞ、俺は。」

「言ってないですからね。それじゃあこれで終わりです。」

俺はタワさんの背後に回りその無防備な頭に向かって剣を振った。しかし、

ガァン!

その剣は弾かれてしまう。

「…あれ?なんで?」

「面白いなあんた、名前は?」

俺は試合を決める一手を弾かれ数歩後ろに下がる。

「俺はクロハっていいます。」

喉が乾く。唾液を飲み込み潤すが喉の渇きは癒えない。久しぶりの戦闘に体が緊張している。それに、

(このおっさん普通に強い。こんな見た目してるくせに)

俺は見た目とのギャップに驚きつつもそれよりもなぜタワさんの右手が拘束から抜けているのかに驚いている。

「んじゃクロハ。あんたは確かに俺の虚をついた。そこは認める。だが獲物を完全に仕留めれると思い込んでからが油断ダラダラだな。」

「…………」

「ん?ああなんで右腕が自由かって?そりゃあこんな拘束ぐらい関節を外せば簡単に抜けられるだろ」

は?と思ったのもつかの間、この通りと左腕も同じように関節を外す。

ゴキ、パキ、ガキ、色々な骨の音が武道館に響き俺は軽く引いていた。

「んで外れた関節を戻せば…はい、出来上がりってね」

唖然だった。今まで7つの世界を救済してきたが自分から関節を外すなんていうトンデモ技を見たことがない。

「おぉー痛てぇー」と肩をグルグル回しながらタワさんはぼやく。

それに、はっと目が覚める。

俺はまだ戦闘中だと左右に首を振り頭を切り替え、剣を握りしめる。

「なあミィちゃん、ちょっと遊んでいいかい?」

「え、ええ。試験監督が手を出してはいけないとは決まってませんから」

ミィスさんは困惑しながらも、それを了承する。

(いや、勝手に決めるなよ!)

俺は勝手に決められたことに胸の中でツッコミを入れるがしかし、タワさんはやる気みたいだ。

「そんじゃあ行くぞ。…っはあ!」


(は、はやい!)

片手剣はまるでムチのように縦横無尽にクロハを襲いかかってきた。俺はあまりの剣技に後ろに下がってしまう。タワさんは距離を開けるかと詰めてくるが、

(よし、ここだ!)

俺は地面からサンドスピアを発射させる。

「……!こんなんくらうかよ!ウォーターカッター!」

タワさんに向かったサンドスピアは水の圧力で粉々に砕け邪魔する者はいないと距離を詰める。

「くっそ!タワさんも魔法使うのかよ!」

「魔法使っちゃいけませんなんて言われてねぇからな。オラ!」

下から上に切り上げを仕掛けている。しかし、クロハは見落とさない。足先が右に向いている。つまりこれは上に切り上げると見せかけた罠。実は右になぎる横薙ぎだ。

(ならここで戦わずに更に後ろに下がるべきだな)

俺は冷静に考え後ろにジャンプする。しかし、

「…………!」

(なんだ?全然後ろに下がれていない!………これは体が追い付いていない?やばい!このままじゃ!)

「はい、入った。」

タワさんは予想通り右薙をしてきた。しかし、俺の体は完全に後ろに飛べきれてなく左手がタワさんの剣に吸い込まれ、

ザシュッ!

「くぅ…」

俺は左手を抑えながらも後退する。

「どうだ?痛みはないがジーンとくるだろ。しかも少しの間麻痺してまともに動かないしな。
終わるか?この検定あと5分あるけど」

これは煽りだ。すぐに理解した。このまま戦うと完全にこっちが不利だ。でもだからこそ、

「は、何言ってるんですか。こんなのちょうどハンデでいい感じになったじゃないですか」

(どうだ?俺の煽りにどう反応する?)

俺はドキドキしながらも目の前のおっさんを見る。

「はは、なるほどな。やっぱり今年はいい生徒が集まってんな。今後の学園がおじさんも楽しみで仕方ないよ」

(笑っている?え、怒りとか憐れだなみたいな蔑みとかじゃなく…笑っている?)

俺は困惑しているとひたすら笑ったタワさんは剣を持ち直して、

「それじゃあまだおじさんは楽しんでもいいのかな?」

タワさんは姿勢を低くし加速の準備に入る。

「ああ。俺もそろそろ行きますよ」

その一言が終わった瞬間タワさんは前に加速。俺はそれに応じるように「後ろ」へとジャンプ。

「?」

タワさんはどういうことだと怪訝になるが次の俺の行動に呆れを見せる。

「また同じか。大の大人が同じ技に二回引っかかると思うなよ」

タワさんは急停止し、迎撃の準備をした。

俺はというと後ろにジャンプした後、最初に出したように俺の周りに5個のサンドスピアの先端を構えている。

「それはどうかな。行け!」

5個のサンドスピアはタワさんに向かって加速。そして、

(避けない!?)

タワさんは全く動こうとせず剣を前に構えている。

(まさか5発全部切るつもりなのか?)

「避ければまたあのヘンテコ魔法を食らう羽目になんだろ。なら全部壊せばいい話だ。」

はっ、とタワさんは1発目のサンドスピアを壊す。

ドゴッという音を出し魔核の破壊された1発目のサンドスピアは霧散する。2発3発目も軽く粉々にし4発目も叩き潰される。俺は固まっていた。

(ただの土の塊でも車ほどの速さを誇ってるんだぞ!)

これが勇者の技なら納得だがこのおっさんはただの学園の教師のはずだ。

(全弾破壊できるのかぁ……良かった)

「ほら行くぞ!ふん!」

5発目も完全に見きったらしくタワさんは余裕な顔で剣で壊そうとする。しかし、

カッ!

剣が5発目に当たった瞬間閃光弾のように明るくなりそして、

ダンッ!!

5発目は爆発し辺りを火の海と黒煙で包む。

「決まった!」

俺はこれで終わったとは思っていない。しかし完全に今相手は隙を見せている。

(追撃をするなら今しかない!)

俺は少し円を描くように近づき、

「………クソ!」

大きな隙を出している脇腹に向かって剣を横になぎる。そして、

バサッ!

完全に刃が入った感触がある。

「へぇ……俺やられちったかぁ
やっぱ…年は取るもんじゃ…ねぇ…な」

タワさんはそれだけ言うと、バタンと倒れて動かなくなってしまう。

(やってしまった!)

俺は最悪の状況を考えてしまい、

「大丈夫ですか!タワさん!」

肩をさするが反応がない。最悪の状況になってしまったと冷や汗が大量に出てくる。すると、

「大丈夫ですよ、クロハくん。
ただ気を失ってるだけです」

それを聞きよく顔を覗いてみる。すると顔色が悪いにしても息はちゃんとしていた。俺は驚かすなよという意味で頭を叩く。

「んんー待ってよぉ、サーメルちゃぁん…
おじさんを癒してよぉ…」

なんて独り言まで呟いている。

「はぁ、疲れた」

俺は溜息をつき立ち上がる。すると、

「おめでとうございます、クロハくん!見事試験監督を打破したので次の戦いに進めます。すぐにでも説明会場に行ってください。会場はこの地図の…この第3体育館と呼ばれる場所です。あ、これ次戦への許可証です。私はタワさんを保健室に連れていくので。」

一息にそう言うとタワさんを連れてミィスさんはさっさと出ていってしまった。

「え?」

俺は武道館でたった一人フリーズしていた。





「…ん?あれ?どこだここ?」

「やっと起きましたか、タワさん」

その状況だけで今何が起こっているのかが分かった。

「俺はクロハに負けて気絶したのを俺のことが大好きなミィちゃんが運んでくれているって感じか」

「おっさん臭凄いんで下ろしていいですか?」

「おっさん臭はまだしてないよ!それに下ろそうとしないで!いま足動かないから!」

そして俺はそれにしてもと先ほどの戦いを振り返る。

「クロハか…いやぁほんとに強かったね彼。もう僕もお役御免の時代が来たらしいな」

「何を言ってるんですか。それはあなたが本職である槍を使ってなかったからでしょ?王に選ばれし7人の聖騎士、聖槍の使い手「タワク・レイベリウス」さん。
まあそれにしては早い終わり方でしたけど」


「いやいや彼は本当に強いよ。見たこともない魔法を使っていたのもひとつだけど恐れるところはその追撃のえげつなさだね」


「追撃がえげつない?」


「ああ。もしあれが本当の戦いだったなら俺は真っ二つにちょんぎられてるよ。
……彼はそれぐらい人を殺すことに躊躇いがなかった。」


「……………」


「彼はもしかしたら僕よりもずっと修羅場の数をくぐり抜けてきているのかもしれないな」


「はぁ。そうですか。
でもそんな事よりもあなたは王から大事な命令があってこの学園に来たのでしょう?早く調べなくていいのですか?」


「ああーそうだったぁ…
もうめんどくさいからすっぽかしてもいいかな?ミィちゃん」


「ダメです。ちゃんとしてください。」


「はぁ…まあ結構まじな話、俺はマイル村について調査を依頼された。これは聖騎士第二部隊全隊員に告げられ今も捜査をしている。」


「!………マイル村に何かあったの?」


「ああ…。……マイル村の村長から産まれたばかりの赤ちゃんまでみんな死んでいた。」


「……!はやくクロハくんに伝えないと。
実はあの子マイル村出身で!」


「え、………いやそれはありえない。」


「本当よ。村長からも直々に頼みの手紙が届いてるもの。」


「………実はマイル村をすぐ出たぐらいに空の馬車を見つけた。中には1人居た形跡があったが今も行方をくらましてる奴がいる。」


「じゃあその生き残りがクロハくん…やっぱり話聞いた方がいいんじゃない?」


「だから有り得ないって言ってんだろ。
マイル村から王都まで全力で走っても約5日はかかんだぞ。
それに今見た外見からしても山道を駆け下りてきた服装じゃなかったしな」


「でももしかしたら5日かけて降りてきた可能性だって…」



「だとしても俺は言えない。
村長から小さな子供まで全員自殺をしたなんて口が裂けてもな」

歩く足が止まる。

「え…自殺?」


「ああ。いくら傷の検査をしてもナイフの持ち方を見ても全員が全員自殺をしているんだ。赤ん坊は母親に殺されていたがこれは異常すぎる事態だ。だから衛兵をすっ飛んで俺たち聖騎士団の方に依頼が来たっていうわけ」

俺は肩を竦めながら機密情報をぺらぺらと打ち明けていく。


「……………」

「絶句か?まあしょうがないわな。
この俺でさえ言葉が出なかったからな、この事実を聞いて。」

しばらく無言の間が続き、

「はぁ…まあミィちゃんはこのままこの学園で『スパイ』していていいからさ
ちゃんと集めた情報こっちに流してくれよ」


「……………………」


「無言か…。
まあ確かにミィちゃんが話したことは録音されているって可能性もあんのか」

再び無言。しかし、目は口ほどに物を言うとはよく言ったものだ。じっと睨まれ「お前も聞かれているのかもしれないんだぞ」と言っていた。


「あ、俺?そんなヘマはしないよ。俺の水は音魔法さえ弾く代物だからね
まあだから聖騎士団の事は任せておいてよ
第三部隊隊長殿」

「……………………」


(こうなっているのもおかしな話だ。急に王が魔法学園の動向が気になるとか言い出してスパイまで派遣して。
いま世界で一体何が起きてんだ……?)


何か異常が起きている。それは分かるがそれに対してどうすればいいのかが分からない。歯がゆい気持ちを抑えながら次の思案を思い浮かべる。

「最悪の場合はあの二人にも力を貸してもらうか
めんどくせぇけど」

この学園のどこかにいるあの二人なら解決できるのではないかと希望の光を信じながら。


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