勇者8度の世界で何思う

夢空

魔力検定

「やっっっと!着いたああああああ」

俺は目に涙を溜めながら目の前の正門を眺める。宿を出たのが2時間前で今は朝の九時ぐらいだろう。俺が甘かった。大通りを適当に進んだらすぐつくだろうと思っていたが人の流れは動いたり止まったりを繰り返ししかも流れに身を任せれば同じ場所をぐるぐる回ったり。

(でも俺は着いた!助かったんだ!)

俺は溜息をつきながらやっと思いで今回の舞台である学園へと足を踏み入れ、

ビー!ビー!ビー!ビー!…

「不法侵入者だな!捕まえろ!」

どこともなく現れた警備員によって捕獲された。俺は取り押さえられ腕を後ろで括られる。警備員たちは清々しい顔で、

「今日も俺達が学園の平和を守ったぞ!

それじゃあ解散!俺はこいつを衛兵に持っていく。」

「「「「はい!!!」」」」

そして俺は有無を言わさず連れていかれ…

「いやちょっと待て!俺は何にもしてないぞ!」

(このままじゃ訳もわからずに牢屋に入れられる。それだけはダメだ。)

この世界の牢獄は物理攻撃はもちろん魔法は発動さえもしない。一度入れば誰も出られない陸の孤島と言われ俺自身今までの世界で一度入ったことはあるが冤罪だと釈放されるまで何も抵抗が出来なかった。

「説明しろ!俺は本当に何もしていない!」

その言葉だけの抵抗に警備員はニヤニヤと笑い、

「今更何言ってんだお前は。
許可証もなしに出入りするなんてスラム育ちの馬鹿でもしないことだぞ
見た感じ制服すら着用してないしこれで何もしてないぞは言い訳にすらならない」

「は?許可証?制服?何のことだ!」

俺は肩に担がれたのを必死の抵抗で降ろさせようとする。しかし、

(こいつ俺の全力ドタバタにまったく動じないだと!なんて奴だ!)

俺は必死の抵抗虚しく終わったかと諦めかけたその時、

「あら、事件ですか?警備長」

「ああ、これはこれは。
大変お騒がせさせています。すぐに追い出すので」

警備長は運ぶ速さを加速させ、もう終わりかと俺は悟った。しかし、

「いえ、待ってください
その少年を見せてもらっても構わないですか?」

救いの神は俺に微笑んだようだ。


「やはり、君…もしかして…」

俺を助けてくれたお姉さんはじっくりと俺の顔を覗き見る。普通ならドキドキしてとか恥ずかしいからと顔を背けるが俺は違う意味で顔を背けていた。

(なんだよ!俺の顔を見てもしかしてって。
まさか、転生者か?)

無い話ではない。前の世界でクロハと知り合いそしてその世界で死ぬと魂は別の世界、例えばこの世界に生まれ落ちる。その時に記憶は消去されるがごくごく稀に再認識をすることがあるらしい。これをデジャブというらしいがそんな事よりも、もしここでクロハが勇者であるとバレたらかなり厄介だ。今まで色々な世界で勇者と明言していいことは何も起こっていない。変な宗教団体に殺されかけたり、勇者の妃という地位を求めて愛のないプロポーズを求められたり。これを羨ましく思ってはいけない。明言した世界で俺はかなりモテモテになった。その時は俺の時代ついに到来とかなんとかほざいていたがたまたま開いていたドアの前を通った時の陰口を聞くとそれはもう。約5日は寝込んでいた。もう俺は勇者と明言することはやめ、長い間世界救済を続けている。

(それなのに今ここでバレたら絶対にあの時の二の舞になる!)

以上より俺は顔を背けているんだがこのお姉さんはまるで俺の心を見透かすようにじっくりと眺めそして、

「もしかして……マイル村の村長が言ってた子でしょ?」

「へ?」

「良かった、マイル村からこの王都に繋がる道にモンスターの群れがいるって聞いたから心配してたのよ。
警備長、はやく縄を解いてやってください。」

「そうとは知らず、すみませんでした。
すぐにでも」

俺は何が起こっているのか訳が分からないまま釈放される。手首に縄のあとが少しついているが麻痺はしてないし五体満足でなんとかこの事態を切り抜けれた。最悪魔法使って逃げようとも思ったがそれこそトラウマ再来となってしまう。

(それを考えるとこのお姉さんに感謝だな)

警備長は俺の背中をパッパとはらい、

「ごめんな。急に組み倒しちまってよ。俺の名前はダルバン。なんか困った事があったらいつでも言ってくれ。このことは貸しでいつか返すからさ。」

「こちらこそすいません。それじゃあ困った事があったら一番に頼みに行きます」

俺は苦笑いをしながらそれに答える。

「ああ。いつでも待ってるぞ。
それじゃあ俺はこれで。あとのことは任せます。」

最後にお姉さんに向かって頭を下げ仕事に戻っていく。

「大変だったわね。入学早々こんな事が起きちゃって」

「まあ俺にも非があったのでしょうかないですよ」

その返答を聞きお姉さんははにかむ。

「キミ見た目よりずっと大人っぽいのね
それじゃあ着いてきて、この学校のこと色々教えてあげる」

お姉さんは色っぽくウインクをして歩いていく。俺はドキッとしながらも後ろについて歩く。

「そうねぇ。何から話そうかな。
あ、まずは自己紹介だったね。
私はミィス。よろしくね。」

「あ、クロハです。よろしくお願いします。」

「クロハ…君ね。」と頷きながらミィスさんは話を続ける。

「まず君には魔法検定した後に実力検定をしてもらうわ。そこで優秀だと分かれば今日の昼に行われるクラス分け戦闘に参加してもらうよ」

「はあ。はあ!?」

「ん?どうしたの?」

「え、クラス分け戦闘って戦うんですか?生徒同士が?」

「ええ、そうよ。この学園では色々な役職になるためや上に上がるために行われるのは生徒同士の戦闘よ

ちゃんとバリア付きだけどね」

俺はホッとしてそれでも聞いたことのないワードについて疑問を抱く。

「バリアってなんですか?」

お姉さんは少し困りながらも、

「んー…そうね。簡単に言えば体にダメージが入らないって言えばいいのかな。その分、精神的にはかなりダメージが入っていくの。それで疲れて倒れたりしたら負けっていう先代勇者が編み出したすごい魔法だね。」

(え、そんなんあんの?むっちゃ便利じゃん)

俺が今まで色々な世界で訓練のようなものはしたがこんな便利な魔法はなかった。だから訓練中に死ぬ者は当たり前のようにいた。しかし逆にそれがかなり実戦でも役に立っていた。

(どっちがいいのかって言われたらかなり困る議題だろうけど)

そんな事を考えていたらいつの間にかある建物についた。

「ここは?」

「ここは中央東学園の誇る50の校舎のうち第四校舎。ここに魔法検査の水晶があるの。」

(ご、50!?!?!?
……いや、もう驚くのはやめておこう。なんか体が持たない。てかそれよりも…)

「 あの、さっきから誰1人として会ってないんですけど他の入学生は?」

そう。この第四校舎に着くまで誰一人として出会っていない。こんなに広い学園ならもっと人がいてもおかしくないはずなんだが。

「ああ。だってそれは君が遅れたからだね。君知ってる?本当の入学試験は昨日だったんだよ」

「え、昨日?」

(そう言えば昨日は森に転移してからこの国について一日まるまる潰したっけ)

「そう。だから本当だったら期日切れとして試験さえも受けられないんだけど君は特別。」

「あ、そっか。モンスターのせいだから」

「そう。だから他の優秀な入学試験生は第6校舎で今から行われるクラス分け戦闘の説明を受けているの。」

「じゃあそれって試験生全員で戦うんですか?」

もしそうならとんでもない大乱闘になってしまう。1人1人の実力云々の話にならない。

「いいえ、違うよ。言ったでしょ。優秀な試験生だけだって。これに落ちた子達はもう学生寮での待機が命じられているもの。
多くても30人いるかどうかよ」

(なるほどな。よく考えられている。これもそれも先代勇者が残したものなのかな)

そしてとうとう俺たちはとある部屋の前まで歩いてきた。

中に入ると色々な検査の機器があるが真ん中に水晶玉をおいた仰々しい台がある。

「それじゃあこれに触って魔力を流してみて」

「は、はい!」

かなりの緊張が俺を包む。昨日確かに使える魔法は調べた。しかし、もしもということがある。

約15年前、勇者を秘密にした世界でこういう場面があった。そこで俺は周りに使える魔法を明らかにしなければならないという状況に陥り俺はしぶしぶ水晶玉に魔力を流した。すると全属性分の色が現れ水晶玉は破裂。俺は女神のミッションとは関係の無い戦争に引っ張りだこになり無駄な時間を過ごしてしまった。

(だから昨日調べて安心したけど…
やっぱり緊張するな)

俺は水晶玉に手を付きそして魔力を流す。すると水晶玉に色が浮かんできた。

「ほっ。良かった」

出た色は三色だった。
火魔法を表す赤、風魔法を表す緑、土魔法を表す茶。

「おお!すごいねクロハくん!3属性魔法使いなんて早々いないよ!もしかして私が思ってる以上にクロハくんって凄い子?」

かなりの過大評価に苦笑いしながら、

「3属性っていっても僕2級までしか扱えないんですよ。だからこの学園でもっと成長したくて」

自分的にもかなりいい言い訳だと思う。

「それはたしかに勿体無いね。これが扱えれば果ては宮廷魔法使いにもなれるんじゃない?」

「はは…そうですね」

俺は乾いた笑いをしながら「もういいですか」と水晶玉から手を離しても良いか尋ねる。

「うん、そうだね。もう検査は終わったし……ん?あれ?」

俺はどうしたんだと手元の水晶玉に目をやる。すると、

「あ、ごめんね。故障かな。こんな事今まで無かったんだけど」

お姉さんもといミィスさんは水晶玉をペチペチと叩いている。水晶玉には3色の色が出ていた。だがそれ以上に、

(水晶玉に砂嵐か…)

そう。色ではなくテレビとかで流れるザーといった砂嵐が出ていた。俺はこれ以上はダメだと水晶玉から手を離す。すると砂嵐はゆっくりと止んでいった。

「やっぱり故障かな。これ何十年も使ってるって聞くし。それじゃあ次は実力検定だ。ここで優秀だと次に進めるから頑張ってね」

「はい…」

水晶玉に砂嵐。俺はこれを知っている。水晶玉はその属性を色として表現し見るものに伝える魔具だ。砂嵐というのはすなわち色に例えることが出来ないということ。火魔法、水魔法、風魔法、土魔法、闇魔法、光魔法。それらの魔法の原初に当たる零魔法。全ての魔法に共通し全ての魔法に当てはまらない魔法。その魔法を俺は「元素魔法」と呼んでいる。














「ん……ここは?」

目を覚ますと周りに騎士のような服をした人達が胸に剣を掲げ固まっている。俺はキョロキョロと周りを見渡す。

(たしか俺は学校の居残り授業に出ててそれから…
だめだ!何も思い出せない)

俺はひどい頭痛から頭を抑える。俺は再び目の前を向くと、正面になんか偉そうな人達が仰々しく椅子に座っていた。ただ全員共通する部分がある。

(みんな俺の方を見て恐れている?いや驚いているのか?)

俺はこの状況に疑問符だらけで頭を悩ましていた。すると、椅子に座っている人達の隣に立っている女性が、

「せいこう……成功しました!」

歓喜の声をあげ、そしてその一言で周りが「うおおおおお!!」と湧き立つ。

(え?なんだ?なんなんだ?)

俺はとうとう混乱し目をパシパシとしか出来ない。すると見た目からして一番偉そうな人が手を前に出し鎮める。そして、立っている女性に目配せをした。女性はそれに頷き階段を降り、『俺達』の目の前に来る。そして言った。

「私たちの世界を助けてください!勇者様!」

その声はこの広い部屋に響き渡り俺は息を飲んだ。

俺はこの光景を忘れることはないのだろう。


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