Lv.1なのにLv.MAXよりステ値が高いのはなんでですか? 〜転移特典のスキルがどれも神引き過ぎた件〜

ニムル

唐突なピンチですが?

「要するに、君は戻ってくる前になにかやり残した覚えがあるのだが、それを思い出すことが出来ずにいるためにあの世界に戻ってそれを確認したいと」

「まぁ、大まかにいうとそんな感じです」

 俺がコンタクトをとるに至った経緯を話して、あちらの世界に行くために協力して貰えないかという旨の相談を持ちかけた。

「正直、普通なら返事はNOだ」

「ですよね……」

 まぁ、そんなことだろうとは思っていた。一発目からそんな簡単にあたりを引けたら、それこそ運勢の値にステータスを極振りしてしまったんじゃないかと、自分のことが色々心配になる。

「でも、状況が普通じゃないからね。今回は僕達もあちらに戻らなくちゃいけないから」

「へ?」

「僕達はね、転移をして、魔王たちに協力を得るつもりだったのさ。絶対に殺されないでくれってね」

「魔王の、紋章は、宇宙の、厄災の種。彼らがその体に、封印していることで、辛うじて復活を止めている」

「……俺が聞いている話と違うのですが……」

「まぁ、それはそうだろうね。そのもう一人の子、最近こっちに戻ってきたばかりなんだろう? なら、まだノアの襲撃にもあってないはずさ」

 イマイチ話が飲み込めない。実際、話題の舞台に自分が立っていたという記憶が無いのだ。分かるはずもない。

「つまりね、もう一度救いに行くのさ。世界だけじゃなくて、この宇宙すべてを」

「はい?」

「魔神と鬼神の復活を許せば、この宇宙全体が滅ぶ。これはもう、あの世界だけの問題じゃないんだ。全ての元凶は、この星の神なんだから」

「幸運なことに、魔力源は、確保。これより次の満月、転移魔方陣を発動。こちらも、できるだけ、人数を集める。一斉に、あちらへ総進撃」

 どんどんと大きくなる話のスケールについていけない。何がどうなってるんですかね、これ。

「必要事項は、後日連絡する。次の満月は五日後。それまで、自宅待機」

「は、はぁ」

「じゃ」

「え?」

 肩を掴まれて回れ右させられた後、店の扉から出されたかと思うとそのまま扉を閉められた。

 これは閉め出し食らったやつですか、そうですか。

「自宅待機、ねぇ……」

 スマートフォンで時間を確認すると、まだ午後の4時。閉館時間までまだ1時間あったので、駅前で何かしら買い物をしてから拠点に戻ることにする。

 柳沼は、学校では漫研の部員達を奴隷のように扱っていたが、この数日同じ家で過ごしていると、変に姉御肌と言うか面倒見がよく、見た目にそぐわず家庭的だということがわかった。

 スマートフォンのチャットアプリで、柳沼に『買い物して帰るけど何か買っとくものはあるか?』と聞く。

 俺もなんだかんだで奴隷とまでは行かずとも、ある程度尻に敷かれている感覚があるのは確かだ。飯を作ってもらってる分、文句を言えないのもあるが。

 しかし、ここまで何事もないと、家に帰っても大丈夫なのではないかとも思ったのだが、1度家の様子を見に行った時に、家の前にパトカーが止まっていたので諦めた。

 そこまで真面目にやってるのにまだ俺のことを見つけられないのが謎なのだけれど、もしかして泳がされてます? なんちゃって。

 俺が柳沼以上に周囲に痕跡を残さないようにしていることは確かだ。

 家を出てくる時も指紋を残さないように音ゲー用の白い手袋を身につけて、毛の1本も落とさないように完全防備で支度したのはどう考えても厨二病臭くて黒歴史確定の光景だ。恥ずか死。

 スマートフォンのバイブレーションがなり、通知欄に『ロースハムが切れてるから1パックと、何かつまむ用のスナック菓子を2、3袋くらい買ってきて!! よろぴ!』と入ってきたので、近場にあった肉屋で購入することにした。

 秋葉原の日常的な風景ですら全ては聖域だ。アニメに一瞬でも写った後継がそこにあったのならば、それら全てがサンクチュアリに変わるのだ。

 秋葉原最高、秋葉原尊い!

 ヲタク独特の愉悦感に浸っていると、不意に足元から異音が響き出した。

 ズゴォォと体の芯に響く、地面の中を何かが這っているような音だった。

「ん? こんなところに地下鉄あったっけ?」

 元々こちらの住民ではないので、地理にはあまり詳しくない。何なら地図アプリがないと生活できないかもってくらいだ。

 地図アプリを開いて地下鉄の路線を調べるが、自分の足元はおろか、周囲にすら何かが地下に通っているようなことを示す表記はなかった。

『クラウクラウクラウクラウクラウクラウクラウ、クライツクス、ホロボスメッスルジョウカスルゥ!』

「なんだ!?」

 唐突に機械音のようにガチャガチャとした声が響いたかと思うと、地面を突き破って何かが飛び出してきた。

「これは、蛇?」

 明らかに地球の既存生物のサイズの比ではない、超巨大な蛇が地中から飛び出してきた。

 高架下から伸びたその蛇の胴体は、大きく動いて線路を突き破り、その後頭を下ろしてこちらを見据えている。

 頭部のすぐ下、喉というべきなのか、とにかくその部分には、私ただの蛇じゃないんですとでも言いたげな、短く、しかしガッチリとした太い腕がついていた。

「なんだなんだどうしたどうした!?」

『キサマハキュウジダイノイブツ、ユエニココデワレガクラウホロボスメッスルジョウカスル、ソレガヨノタメホシノタメェェェ!!』

 大蛇はそう叫ぶと、その口を開けて俺を飲み込もうと飛び出してきた。早すぎて全く反応ができず、体が動かない。

 え、ちょ、おま、なにこれ無理ゲーすぎるだろ!?

 そう思った時には、既に俺の視界は黒く染まっていた。

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