Re:現代知識チートの領地運営~辺境騎士爵の子供に転生しました~

なつめ猫

記憶の対価(26)




「アルス。すぐに朝食は出来ると思うから、すぐに帰ってくるのよ?」

 母親の言葉に頷いたあと、家から出るとアリサとフィーナと目が合う。
 二人とも、やはり期限が悪そうに見える。

「アリサさんもフィーナも、こんな朝早くからどうかしたのか?」
「アルス君、ちょっといい?」

 フィーナが俺の腕を掴むと引っ張ってくる。
 行先は、河原の方のようだけど。

「フィーナ、理由くらいは聞かせてくれ。何かあったのか?」

 ぐいぐいと引っ張るフィーナ。

「アルス」
「アリサさん、フィーナがおかしいんですけど……」
「大丈夫」
「そうですか?」
「ええ、私もアルスに聞きたいことがあるもの」

 ニコリとアリサが俺の見てくるが、その目は笑っていない。
 今回の周回では、二人に多少迷惑をかけたとしても致命的なミスは犯していないはず。

 ――なら、二人が何を聞きたいのか? と、言う答えが思い浮かばない。

 思考がぐるぐると答えが出ないまま、フィーナとアリサに連れらえて河原に到着。

「アルス君」
「フィーナ。一体、どうしたんだ?」
「えっとね……」

 そこまで話したところでフィーナの顔色が真っ赤に染まる。

「もう、これだから初心な子は――」

 突然、お姉さん風を吹かせたアリサ。
 そもそも、初心って言う前にアリサさって恋人は、まったく居た事がないはずなのに……、どうして、そこまで上から目線で語ることが出来るのか甚だ疑問だったりするけど、何故が突っ込みを入れたらいけない雰囲気な気がして口をつぐむ。 

「――え、えっとね……、あ、ある――、アルスって私と婚約していたわよね?」
「――え?」

 思わず俺は固まる。
 理由は、アリサが頬を赤く染めて婚約という言葉を口にしてきたことではなくて――、最初の巻き戻しの時に、彼女が俺を裏切ったことを思い出したからだ。

「……なぜ、それを……」

 口の中が渇いていく。
 それと同時に、心臓の鼓動が早鐘を打ち始める。

「以前に、魔王城に入ったときに同期したわよね?」
「ええ、まぁ――」

 何を言いたい?

「その時にね、私とフィーナちゃんは嘘を、貴方についたの」
「どういうことでしょうか?」
「アルスは、言ったわよね? 私とフィーナちゃんの記憶が見えたって――」
「言いましたけど……」
「じつはね……、私とフィーナちゃんも、あの時――、アルス君の記憶が流れてきたの」




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