Re:現代知識チートの領地運営~辺境騎士爵の子供に転生しました~
決戦への布石(13)
俺の言葉にアリサは座り込み、俺と目線を合わせると首をかしげ「そうなの? 試してみない?」と問いかけてきた。
俺はそっと目を逸らしながら「い、いえ――、別に興味はないですし……」と、言葉を返す。
正直なところ、以前に魔王が復活したタイミングと何が問題だったのか? という因果関係が実証できていない以上、余計なことはしないほうがいいと言うのが俺の見解だ。
まぁ、炭塵爆発で魔王を倒した後に余裕があれば城内を探索するのがベストだろう。
――魔王を倒した後に、城が残っていればの話だが……。
「むー。1000年前の遺産があるかも知れないのよ?」
「1000年前と言われても、僕は生まれていませんし……、いまの生活には、それなりに満足していますので」
「――本当に満足しているの?」
アリサが俺の瞳を真っ直ぐに見ながら語りかけてきた。
「何を言って……」
「だって――、アルス君は気がついていると思うけど……」
「――はあ?」
「貴方のお母さん、少し変な気がしない?」
「どういうことでしょうか?」
「えっとね……、これは魔法師としてじゃなくて長年人を見てきた経験からだけどね。溺愛にも限度が――」
「アリサ団長、門に書かれていた文字の解析が概ね終了いたしました」
「――うっ!? 分かったわ」
アリサは、魔法師に所属している団員の一人に連れられて魔王城の城門へと向かっていった。
俺は彼女の小さくなっていく後ろ姿を見ながら思わず溜息をついた。
母親がおかしいのは前からだ。
息子を溺愛するという範疇から、かなり逸脱しているのだって知っている。
それでも、俺にとって――アルスにとって母親は彼女だけで、最後まで守ろうとしてくれたのも母親だった。
だから、そんな母親を変だと言ったアリサに、怒気を孕んだ言葉で思わず応じてしまって――。
「駄目だな……」
俺は木に体を預けたまま、木の根の上に腰を下ろす。
どうも、5歳の体になってからと言うもの自分自身の行動に抑制がつけにくい。
いけないと思いつつも感情的になって対応するのは大人の行動とは言えない。
もっと論理的かつ理論的に行動しないといけないな。
「アルスくん、疲れちゃったの?」
「――んっ?」
俺の名前を呼んできた女性の言葉に、俺は顔を上げる。
そこには、アルセス辺境伯邸で魔術を教えてくれたアリサさんが立っていて、俺を心配そうな顔で見下ろしてきていた。
「はぁ……、アリサ先生ですか――」
「ええ? 隊長と受け答えに差があるのが納得いかないのだけどぉ」
「いえ――、あれです。魔法師団長となると、こちらも緊張しますから、それでつい――」
「そう、それでどうだったの? アルス君が魔法を使えるようなことをアリサ団長は言っていたけど?」
「そうですね。一応、魔力を貯めることが出来るみたいです」
「そうなの?」
「はい」
「それは、良かったわね。もしかして、それで疲れているの?」
「そうでもないんですが……」
俺は、アリサ先生の話に肩を竦めながら答える。
実際のところ、殆ど活動していないから疲れてはいない。
だが、どうやら周りから見た印象は違うようだ。
塞ぎ込んでいるようには見えていて、それが疲れていると思わせる要因なのだろう。
「そう、疲れていないなら良かったわ。でも、何か迷っているようなら私に言ってね」
「ありがとうございます。そうですね……」
俺は、彼女と受け答えしながら考える。
正直なところ、最初に出会ったアリサよりも、彼女の方が常識的に見える。
それに、将来的に領主として村を発展させていくためには人に物事を上手に教える人間というのは必ず必要になる。
そうすると、アリサ先生に移住を打診したほうがいいんだが――。
まだ、領主の身でもない。
政務を一度も手伝ったこともない子供が、引き抜き紛いのことをしてもいいのかと言うと、正直言って不味い。
ただ、提案するだけなら……。
「――アリサ先生」
「どうしたの?」
「以前にアリサ先生は、子供たちに勉強を教えることが目標だったと言っていましたよね?」
「そうね。でも、ある程度は給金も貰わないと仕送りもしているから……」
「なるほど……」
俺は彼女の言葉に頷く。
至極、真っ当な意見だ。
むしろ無償でも教えたいと言わないだけ好感が持てる。
「もし、僕が領主の仕事を引き継いだときには、アリサ先生に村の子供達の勉強を見て頂きたいのですが――、もちろん、給金も用意できるようにします。今は、まだ無理でも考えておいて頂けますか?」
「――え? 魔法師団の給料って結構高いのよ? 大丈夫?」
「ちなみに、おいくらなのでしょうか……」
「一ヶ月で金貨10枚ね」
「金貨10枚……」
そういえば、俺は貨幣単価を知らない。
「あの……、一ヶ月4人家族が暮らせるお金っていくらくらいなんでしょうか?」
「――だいたい、金貨2枚から3枚くらいね」
「そうですか……」
つまり、アリサ先生の給料は4人家族が暮らせる額の3倍から5倍は稼いでいるということになる。
たしか日本の一般家庭――4人家族が暮らすためには20万円から30万円と言われている。
ということは――。
アリサ先生の給料は、月60万円から150万円?
おいおい、すごく高給取りなんだが――。
父親のアドリアンとか騎士爵なのに俸給とか年間100万円くらいだぞ?
「ちなみに魔法師団長のアリサさんは、いくらくらいなんでしょうか?」
思わず敬語になってしまった。
俺の問いかけに彼女は首を傾げる。
「そうね――、詳しくは知らないけど……月に金貨100枚くらい貰っていると思うけど?」
「領主継ぐのを辞めて……、魔法師になろうかな……」
「アルス君、アドリアン騎士爵様が聞いたら冗談でも傷つくわよ?」
「……そうですね。思わず1%くらい冗談でした」
「待って! 99%本気だったの!?」
俺はそっと目を逸らしながら「い、いえ――、別に興味はないですし……」と、言葉を返す。
正直なところ、以前に魔王が復活したタイミングと何が問題だったのか? という因果関係が実証できていない以上、余計なことはしないほうがいいと言うのが俺の見解だ。
まぁ、炭塵爆発で魔王を倒した後に余裕があれば城内を探索するのがベストだろう。
――魔王を倒した後に、城が残っていればの話だが……。
「むー。1000年前の遺産があるかも知れないのよ?」
「1000年前と言われても、僕は生まれていませんし……、いまの生活には、それなりに満足していますので」
「――本当に満足しているの?」
アリサが俺の瞳を真っ直ぐに見ながら語りかけてきた。
「何を言って……」
「だって――、アルス君は気がついていると思うけど……」
「――はあ?」
「貴方のお母さん、少し変な気がしない?」
「どういうことでしょうか?」
「えっとね……、これは魔法師としてじゃなくて長年人を見てきた経験からだけどね。溺愛にも限度が――」
「アリサ団長、門に書かれていた文字の解析が概ね終了いたしました」
「――うっ!? 分かったわ」
アリサは、魔法師に所属している団員の一人に連れられて魔王城の城門へと向かっていった。
俺は彼女の小さくなっていく後ろ姿を見ながら思わず溜息をついた。
母親がおかしいのは前からだ。
息子を溺愛するという範疇から、かなり逸脱しているのだって知っている。
それでも、俺にとって――アルスにとって母親は彼女だけで、最後まで守ろうとしてくれたのも母親だった。
だから、そんな母親を変だと言ったアリサに、怒気を孕んだ言葉で思わず応じてしまって――。
「駄目だな……」
俺は木に体を預けたまま、木の根の上に腰を下ろす。
どうも、5歳の体になってからと言うもの自分自身の行動に抑制がつけにくい。
いけないと思いつつも感情的になって対応するのは大人の行動とは言えない。
もっと論理的かつ理論的に行動しないといけないな。
「アルスくん、疲れちゃったの?」
「――んっ?」
俺の名前を呼んできた女性の言葉に、俺は顔を上げる。
そこには、アルセス辺境伯邸で魔術を教えてくれたアリサさんが立っていて、俺を心配そうな顔で見下ろしてきていた。
「はぁ……、アリサ先生ですか――」
「ええ? 隊長と受け答えに差があるのが納得いかないのだけどぉ」
「いえ――、あれです。魔法師団長となると、こちらも緊張しますから、それでつい――」
「そう、それでどうだったの? アルス君が魔法を使えるようなことをアリサ団長は言っていたけど?」
「そうですね。一応、魔力を貯めることが出来るみたいです」
「そうなの?」
「はい」
「それは、良かったわね。もしかして、それで疲れているの?」
「そうでもないんですが……」
俺は、アリサ先生の話に肩を竦めながら答える。
実際のところ、殆ど活動していないから疲れてはいない。
だが、どうやら周りから見た印象は違うようだ。
塞ぎ込んでいるようには見えていて、それが疲れていると思わせる要因なのだろう。
「そう、疲れていないなら良かったわ。でも、何か迷っているようなら私に言ってね」
「ありがとうございます。そうですね……」
俺は、彼女と受け答えしながら考える。
正直なところ、最初に出会ったアリサよりも、彼女の方が常識的に見える。
それに、将来的に領主として村を発展させていくためには人に物事を上手に教える人間というのは必ず必要になる。
そうすると、アリサ先生に移住を打診したほうがいいんだが――。
まだ、領主の身でもない。
政務を一度も手伝ったこともない子供が、引き抜き紛いのことをしてもいいのかと言うと、正直言って不味い。
ただ、提案するだけなら……。
「――アリサ先生」
「どうしたの?」
「以前にアリサ先生は、子供たちに勉強を教えることが目標だったと言っていましたよね?」
「そうね。でも、ある程度は給金も貰わないと仕送りもしているから……」
「なるほど……」
俺は彼女の言葉に頷く。
至極、真っ当な意見だ。
むしろ無償でも教えたいと言わないだけ好感が持てる。
「もし、僕が領主の仕事を引き継いだときには、アリサ先生に村の子供達の勉強を見て頂きたいのですが――、もちろん、給金も用意できるようにします。今は、まだ無理でも考えておいて頂けますか?」
「――え? 魔法師団の給料って結構高いのよ? 大丈夫?」
「ちなみに、おいくらなのでしょうか……」
「一ヶ月で金貨10枚ね」
「金貨10枚……」
そういえば、俺は貨幣単価を知らない。
「あの……、一ヶ月4人家族が暮らせるお金っていくらくらいなんでしょうか?」
「――だいたい、金貨2枚から3枚くらいね」
「そうですか……」
つまり、アリサ先生の給料は4人家族が暮らせる額の3倍から5倍は稼いでいるということになる。
たしか日本の一般家庭――4人家族が暮らすためには20万円から30万円と言われている。
ということは――。
アリサ先生の給料は、月60万円から150万円?
おいおい、すごく高給取りなんだが――。
父親のアドリアンとか騎士爵なのに俸給とか年間100万円くらいだぞ?
「ちなみに魔法師団長のアリサさんは、いくらくらいなんでしょうか?」
思わず敬語になってしまった。
俺の問いかけに彼女は首を傾げる。
「そうね――、詳しくは知らないけど……月に金貨100枚くらい貰っていると思うけど?」
「領主継ぐのを辞めて……、魔法師になろうかな……」
「アルス君、アドリアン騎士爵様が聞いたら冗談でも傷つくわよ?」
「……そうですね。思わず1%くらい冗談でした」
「待って! 99%本気だったの!?」
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