王女は尻から魔石を生み、聖女のおしっこは聖水に ~エロいけどエロくない、変態達が織り成すラブコメ~

夕月かなで

02 二人の婚約者(なお両方変態)

 俺はアスタ=クロック。
 この国立ターヘイン学園の高等部2年生で、優秀な成績のお陰か既に婚約者を二人持っている、云わば勝ち組である。

 その婚約者達はどちらも非常に可愛い美少女なのだが、如何せん性格がおかしい。
 今は授業の間の休憩時間だが、皆には彼女達のことを聞いてほしい。
 いい加減、俺だけで背負うのは嫌になったからな。



 ――ウィンチアーナ王国の第一王女であり、俺のクラスメイトであるサーラ。

 金色のツインテールと鋭い目はまさに王女様といった貫禄を見せており、凹凸のある体形とロケットのような大きな胸も持ち合わせている。
 頭脳明晰だが運動神経が死んでいて、王家特有の不思議な力を持っている。

 その能力こそが、魔石の錬成。
 魔石とは、魔法を使う際に消費する魔法力が込められた石、または宝石のこと。
 これまでも王家の血を継ぐものは手の平に魔石を生み出し、その魔石で街の防御機能や有事に対応してきた。
 そんな王家の特別な、ありがたーい力だが。

 なんと彼女は。

 ――お尻の中でしか魔石を錬成することができない。

 しかもその魔石は、排泄と同等の行為によって外へ生み出される。
 云わば腸内で造られ、穴にいくまでに大きくなっていくのだ。
 聞かされたくもなかった秘密だが、魔石を捻り出すのはかなりの苦痛らしい。

 その痛みが最近になっては気持ちよくなってきた、と聞かされた俺の身にもなってほしい。
 婚約者だからと言って、年頃の娘がそんなことを言ってはいけません。

 極めつけに昨日の出来事だ。
 俺にだって男としての本能は持ち合わせている。
 これまでも王女のサーラ、幼馴染で聖女のノエル、姉のアイナと妹のリリカ、何故か母のカナタまでにも誘惑されてきた。
 いや、母については置いておこう、切実に。

 どれも必死に我慢して、初めてを迎えるときは二人の婚約者と結婚して、三人で一緒にベッドの上でと願ってきた。
 いや、いつもは二人共仲良いんだよ。
 二人が争うのは見てて嫌だし、俺は二人とも同じくらい愛してあげたい。

 それなのに。

「サーラの大事な所を初めて見るのが学校の教室で、しかも魔石を生み出すシーンだなんて誰が求めたんだよ……。もっとまともなシチュエーションが良かったよ……」

 俺は自慢じゃないが童貞だ、ピュアな少年の心を持ち合わせているんだ。
 二人との初めてを何度想像したことか、ずっと楽しみにして我慢しているのに。
 これは酷い、惨すぎる。

 あ、本人がやってきた。
 昨日の今日で少し気まずいな、大事な所……どころじゃないもの見ちゃったし。

「あらアスタ、もうすぐ授業始まるわよ? ボーっと突っ立ってないで準備しなさい」
「誰のせいだよ!?」

 ポカンとしているサーラを見て、婚約者でありながら頭を引っ叩きたい衝動に駆られるが、なんとか我慢した。
 こいつ、昨日のこと何も考えちゃいねぇ。

 駄目だ、カッカしたら負けだ。
 こいつは俺を誘惑ことする以外、特に何も考えていないアホなのだから。
 テストの順位は俺が毎回ベストスリーに入っているのに対して、サーラは中の下。
 王国の未来が心配すぎる。

「ちっちっち、サーラ。アスはボーっとしてるんじゃないよ。あれは私のことを考えているのさ! アスの中ではきっと私は脱がされていて、あんなことやこんなこと……」

 二人目のアホがやってきた。

 聖女として名高いノエル=オシーコン。
 とりあえずノエルは全国民に謝れ。
 殆どの国民はノエルのことを、可憐で民に優しい誰よりも他人のことを思っている聖女様、というイメージを持っているらしい。
 その実、俺と結ばれること以外何も考えちゃいない。
 成績は俺と肩を並べる位にいいのに、どうしてこうなった。

 確かに銀色の腰まで伸びる髪や、大きな丸い目はサーラと同等の美少女だ。
 体形がスレンダーな部分は残念だが、頑張って言えば美乳とも言えるだろう。
 昨日は激昂していたから方言がバリバリ出ていたが、通常は普通の喋り方だ。

 そんなノエルの見た目は聖女だが、しかし中身は耳年増の聖女だ。
 俺が言える立場ではないが、処女のくせに滅茶苦茶誘惑したり煽ってくる。
 聖女じゃなくて、性女の間違いなんじゃないかと最近思っている。
 サーラと同じでこいつも特殊な力を持っているんだが、こっちの力も半端じゃない。

 シーコ聖教の言い伝えには、どのような時代でも聖女は現れ、世界を浄化する力を持つと言われている。
 前代の聖女様は魔法の如雨露ジョウロを使って水をかけることで、魔と呼ばれる悪い魔力の溜まりを浄化したらしい。
 ジョウロに水を入れると聖水に変わると聞いたことがある。

 それで、今代のノエルはどうやって浄化するのかと言うと。

 ――おしっこが聖水になる。

 お前、マジで国民に土下座しろ。
 なんでお小水で魔を浄化できるんだよ、どっちかと言うと汚い部類じゃねえか。

「ちっちっち、分かってないねアスは。私のおしっこが汚いわけないじゃない!」
「お前の発言がまず汚いわ。というか地の文を読むな汚らわしい」
「聖女なのに汚らわしいって言われた!?」
「おーほっほ、やはりアスタは私がいいんですわ!」
「うるさい排泄王女」
「排泄王女!?」

 大丈夫だ、これくらいはじゃれ合いに過ぎない。
 一見暴言のように見えるだろう?
 大丈夫だ、どう見ても言われて然るべき相手だからな。
 因みにこのクラスの皆は二人の秘密を知らない。
 だからこうやって教室で話していると。

「排泄女王? サーラさんまた何かやらかしたのかな?」
「サーラさんの排泄? 想像したくないなぁ」
「だよな、いくら頭壊れてるサーラさんでもな」
「どっちかと言うと、王女はトイレになんか行きませんって言ってほしい」
「聖女に汚らわしいって、さすがアスタさん」
「私もアスタさんに罵られたいなぁ」
「うちもうちも」

 うん、聞かなかったことにしよう。

 この学校の生徒達は、入学するまではサーラとノエルに夢を抱いていたことだろう。
 そして同じ学校の仲間として過ごして知るのだ。
 夢は、所詮夢なのだと。

「あ、先生来たわね。アスタ、教科書貸して」
「言うタイミングが遅すぎる」

 というか同じクラスなのに俺が教科書貸すわけねぇだろ。
 サーラ、お前王女なんだからさ。
 忘れ物くらいしないようにしような?

「はははっ! 王女が聞いて呆れるよね!」
「壮大なブーメランだけどな」
「聖女が聞いて呆れますわ!」
「「あっはっはっは!」」
「お前らさっさと席に着け、アホが!」

 一人ずつ拳骨をお見舞いして、席に戻らせた。
 授業中すんすん泣いてる声が二つほど響いていたけど、もう誰もつっこまなかった。

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