人間とは…そして、最初

　人というもの、いつかは滅びる。

　時は２０世紀の寒波が押し寄せる年の１２月１０日、アメリカ東海岸のニューヨークの港、そこには見る人の目も心も奪われる大きく、立派な客船ルウェロット・ベレネスティンディア号が時代のある黒い煙を上げ堂々とした面でたたずんでいた。
　収容人数は１２００人弱、これから２週間かけて大西洋を横断し、ドーバーを抜け、イギリスサウサンプトン港へと静かな航海へと向かう。クリスマスシーズンというのもありすでに予約はいっぱいいっぱいであった。
　その誰がもが一度は乗りたいであろう、ルウェロット・ベレネスティンディア号の専用埠頭に一人の少年が立っていた。
　彼の名前は、西ヶ丘　聖一。家族４人ともどもはるばる日本からやってきたのである。
　というのも彼の父親の会社の取引先の企業のパーティーが特別会場でやることになり、それに招待される形でやってきたのである。
　父、母、双子の姉、を持つ彼は長男坊として、家族をどんなことがあって守ることを心に決めていた。まぁ、これは特に関係ないのだが…

「聖一！戻ってこい！」

　埠頭の一角、豪華客船ルウェロット・ベレネスティンディア号をまじまじと見ていた完全私服姿の聖一にタラップに並んでいた父親の叫び声が聞こえ、慌てて列へと戻る。

「何をしていたの？」
「いや…船を見ていただけさ…」

　彼と瓜二つな容姿を持ちながらも、腰まで伸ばした黒髪の少女…真奈が弟の行動を怪しむがごとく問い詰める。ちなみに言っておくと、彼も女顔がややコンプレックスなのである。
　そんなやり取りもつかの間、戦闘ではいつの間にか乗艦が始まっており、目の前にいたカップルはもう歩き出していた。その後ろを彼の一家が追う。
　列の長さ、そして乗艦までの長さは予想以上のものだろう。
　実際彼ら一家も１時間近く待っていた。だが、それでも弱音を吐かないあたり皆この船旅を楽しみにしているのであろう。そう、本・来・な・ら・ば・楽・し・め・る・は・ず・だ・っ・た・。