虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

神風 中篇



 暗躍街 中立域

 最上位職の就職条件を満たした。
 職業【神風兵】、名前の通り速攻に特化した(意味深)職業……だからな。

「──【神風兵】、ねぇ……その名前からもうほとんど性能が丸分かりなんだよな」

「そういう、俺でも分かることはいいんだ。それより、お前にしか分からないことを教えてくれよ」

「…………いちおうあるぞ。ただまあ、基本的に悲惨な末路ばっかりだったけどな」

 前提条件は空に関するモノ、かつ機械で多くの敵対者を殺しているかどうか。
 だからだろう、それに適合した者たちがかつて何度も就いていたようだ。

 今回ここ──タクマの情報屋に来たのは、そうした情報を得るため。
 神代魔道具でもあるこの街に居るのだ、過去の情報をこいつはかなり集めている。

「まあ、地上の世界に現存していた機械はそう多くないからな……今は休人が居る影響でそれなりに増えてはいるが、それでも飛行機なんてもんは無いし」

「ん? 前のロードコラボの景品もあるし、作ろうと思えば作れるが?」

「……そう言ってる[掲示板]の連中が、どれだけ苦労していることやら。現職の人もできる範囲で協力しているのに、未だに手詰まりの状況なんだぞ?」

「あー。ならそうだな、お前経由で情報を回しておいてくれ。あと、世界ごとに禁忌みたいなものもあるからやり過ぎ注意な」

 俺の発言を訝しんだようだが、タクマが気にしなければならないのは送信されたデータの方だ。

 中身はロードコラボで得た航空機を解析した情報、そしてクリーンなエネルギーで動くエンジンやらその他パーツなどなど……要は完成に近づく重要な情報である。

「…………お前なぁ」

「それで、情報の方は?」

「──これだよ」

 しばらくの間、タクマは情報の確認と投稿で忙しいだろう。
 それが分かっているからこそ、心優しい俺はこの場から去──

「逃がすと思うか? 今日はもう店仕舞いにするから、お前はここに居ろ」

「……」

「あっおい、無敵化して擦り抜けようとか考えるなよ。正直、止める手段が無いからどうにもならないんだよ」

「よく分かったな、エスパーか?」

 そういえば、【超能力者】って職業も存在はするんだよな。
 ただ、普通に魔法を使った方が早いのでネタ職扱いだったが。

「……まあいいか。仕方ない、お前に免じて今回は従ってやるよ。貸し一つな」

「はっ? ……いやいい、その代わりきちんと情報を置いてけよ!」

 やれやれ、忙しい奴だ。
 だがその分仕事はするだろう……タクマはそういう男だからな。


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