虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

称号おさらい 後篇



 劣化した[称号]を得ても、何らかの方法で改善することができるらしい。
 その方法の一つは迷宮……うん、俺に相応しいやり方である。

「……もういいか? お前と話していると、いろいろ疲れてくる」

「おいおい、それが客にする態度かよ」

「…………金払いが良過ぎる客も、裏があるのが明白で断りたくなるよな。ハァ、劣化版でも[称号]を集めるのか?」

「うーん、まあそうだな。最初に言った、名前に『生』と『死』なんかが付いているヤツだけでも確認しようかな。劣化でも、それなら困らんしな」

 そんなわけで、俺はいくつかのタクマが把握していた[称号]の情報を教えてもらう。
 すでに死亡数系のモノは極めていた……と思っていたが、まだまだあったようだ。

「なるほどな、死に方にもいろいろあるってことなのか」

「……逆に、俺も『死を極めし者』をお前以外から聞いたことが無くて驚いているぞ。どれだけ死なないと、デスペナって無くならないんだよ」

「俺も知らん……まっ、別に方法は一つってわけじゃないだろうし。うちの蘇生薬は、いちおうデスペナ解消効果付きだしな」

「…………あー、そういやお前のとこのポーションは全部希釈してるんだっけ。それでも普通に蘇生できるんだから、異常だよな」

 俺の作る蘇生薬は、蘇生率100%かつ全状態異常の解消、おまけに部位欠損を取り戻し病気なども治す……身力も全開になるチートアイテムである。

 さすがに世に出すとアウトなのは明白なため、今はそれを薄めた物を売っていた。
 それでも、蘇生率は変わらず100%を維持しているので恐ろしい物だ。

 なお、損傷が酷い場合は劣化蘇生薬だと失敗してしまう場合がある。
 蘇生の成功率とは、あくまで万全の状態で行った際の確率だからな。

「──っと、話が逸れた。しかし、一人でもできるものはほとんどやってあったな……死ぬ回数が多い分、勝手に引っ掛かっているみたいだ。そうなると、やっぱり狙い目はパーティー関係の[称号]だな」

 いわゆる仲間を庇って死ぬ、あるいは生還みたいな感じの功績。
 まさにそれは、[称号]を与えるに相応しいモノだろう。

 休人は自分の死で時間を稼ぐ場合が多いので、それなりにそういった[称号]を手にしている者が多かったようだ。

 だが、俺は基本的にソロ活動ばかりなのでそれらの[称号]獲得に必要な経験をあまりしていなかったらしい。

「よし、まずはいろいろやってみるか」

「……いったいどれだけ死ぬつもりだ?」

「まあ、全部手に入るぐらいまでは試行し続けてみるつもりだ」

 デスペナがまったく無い、そんな俺だからこそできること。
 先に行かせて死ぬことも、また追い付くことだってできるからな。


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