虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

称号おさらい 中篇



 タクマから聞き出す[称号]情報。
 討伐系の[称号]であれば、誰でも手に入れられるということをとりあえず知った。

 相手とのレベルや格──進化数の差によって、獲得難易度が決まっていると思われる。
 俺はレベルが世界最強、だが種族は最弱の人族なんだが……どうなるんだろうな。

「劣化する分、あんまり聞けないよな……そう考えると使えないな、情報屋」

「…………[クエスト]を受けるのに必要なモノとか、あるいは劣化していても効果自体が便利だから欲しい奴もいるんだよ」

「そういうものか……ああ、『冒天』にはたしかそんな効果があったっけ? イベントのフラグが立ちやすくなる? とかそういう感じのヤツ」

「『冒匠』を持ってるってヤツが、そういや同じことを言ってたな。『武匠』や『術匠』や『製匠』なんかも同じ感じだ」

 名前から察するに、三つは『冒天/匠』の別星版だろうか。
 今まで知らなかったのだが、まあ考えてみれば当然なのかもしれない。

 なお、それぞれの取得条件は所属あるいは滞在期間も関わっていたのだろう。
 そうでも無ければ、生産世界の『製天』は俺のモノになっていたはずだしな。

「なあ、劣化ってどんな感じなんだ?」

「そうだな……単純に劣化していると付いていない効果、あとは倍率が下がったり発動回数が減るなんてのもあったな。ちなみに、条件次第で劣化が改善されるなんて話もある」

「ん? なら、どれだけ情報を知ったうえでやってもいいってことか?」

「モノによるって感じか。報酬で[称号]の格が上がる時に劣化が取れる場合もあるし、劣化状態のまま名称が変わる場合もある。そこら辺は休人次第だな」

 俺も確か、迷宮を攻略する度に職業やら祝福の伏字が無くなっていた気がする。
 それを考えると、俺でも……むしろ俺ならできるやり方をいくつか思い浮かべられた。

「迷宮……か……」

「ああ、とはいっても迷宮の難易度なんかでできるかどうか、その数なんかも違ってくるし、何なら成功率も違ってくる。原人たちからするとハズレの類の報酬だな、セットしないと意味なんて無いわけだし」

「まあ、今は『プログレス』があるからその場での変更も簡単だろうけど」

「……さすが、開発者さんは言うことが違いますね。というかお前、生産世界で俺のヤツ使っただろう? 何となくわかったぞ」

 たしかに、タクマの『メモリーメイカー』は使ったが……分かるものだろうか?
 いやまあ、使っている姿は見せたことがあるので、分からないわけでは無いだろうが。

「相手が芸術家だったからな、対抗するためにその……仕方なくだな」

「……まあ、まったく同じ能力が無いとは言い切れないから文句は言えんが。せめて、使用料ぐらい支払ってもらいたいものだ」

「それはそれで、いろいろと問題になりそうなビジネスだから無しで」

 他者から借り受ける、それを可能にしてしまうと本当に揉めるはず。
 その辺はすべて、女神プログレスの恩恵ということで誤魔化しておこうか。


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