虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
人生の転機
殺しても無罪、なんて危機的状況に陥ったものの、安全地帯の確認もできた。
ただし、すべてはルリの匙加減……どうにか説得をすることに。
「危なかった……説得に失敗していたら、間違いなく俺を狙った相手に不運が起きていたに違いない」
《──お疲れ様です》
「まったくだよ……いやまあ、うん。それぐらい愛してくれる奥さんってのはそれはそれで嬉しいんだけどな。ただまあ、それで周りに被害が出るのはちょっとだけ問題だし……奥さんが最高過ぎて辛い」
なんて惚気で現実から目を逸らす。
実際問題、ルリを祝福しているであろう神様もほんの少しだけ俺を助けてくれる……俺に何かってルリが悲しむのを嫌がっていた。
ルリと交際する過程を思い返すに、大変不服ながらといった感じだろうか。
だが、説得中の出来事から鑑みると、いろいろと納得できる。
「まあ、『超越者』とかそれに準ずる相手にまで不幸を見せるとなれば、神様でも相当に苦労するだろうし。全知全能の神様なんて、居ないはずだからな」
全知全能の神が実在するなら、間違いなくそれは世界創世の初期に限るだろう。
そして何らかの理由で飽きて、今の神話体系のようにバラバラになるはず。
「神様は人の数だけ姿を変える、俺の持論だけどな。そして、なぜかルリを守護する神様は力が他の神様よりある。だから、天の運とも言えるものがルリには備わっている」
《なるほど、では旦那様にも守護神とも呼ぶべきものがあるのでしょうか?》
「……どうだろうな。ルリと出会うまで、特段人生を転機させるような出来事があったわけでもないし。いやまあ、それはそれで居るのかもな。何でもない日常、それは何よりも貴重なモノって……創作物でもよく言うし」
まあ、そんな日々もルリと出会ってからは大きく変わってしまったけども。
ラブコメ……あるいはギャグ漫画ぐらいにはちゃめちゃだったな。
今はそんなことも無くなったが、ある意味それと同じくらいの苦労をショウとマイがしているに違いない……俺はまあ、のんびりスローライフを目指そう。
「スローライフ、普通指名手配とかされるのは創作物だけなんだがな。しかも、俺の場合それより厄介だし」
《いかがなさいますか?》
「うーん、また前と同じように安全な世界に行くって手もあるにはあるんだが……まずは対策をしつつ様子見ってことで」
《畏まりました》
のほほんとしている姿をルリに見せないと心配されるだろうし、やりたいことをやってそのうえで対処していけばいいさ。
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