虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

生産世界初訪 その18



 ギルド総長たちが有する秘匿技術は、そう簡単には開示してもらえない。
 なので俺が代わりに提供するのは、彼らが欲しそうな情報たち。

 それが本当なのかと疑われたが、誓いを立てれば引き下がってくれた。
 ……神や精霊などが存在するからこそ、その信憑性も凄まじいのだ。

「──では、皆さんお願いします。誰からでも構いませんよ」

「……後悔しないな?」

「ええ、休人は死にませんので。約束通り、見せていただけるものは一つで構いません」

「はっ、据わっているねアンタ……まあ、アレのためだやってやるよ!」

 まず、秘匿技術を見せてくれるのは工匠ギルドの総長。
 俺と総長のみが魔材ギルドの総長と共に訪れた、例の練習場に立っている。

「いいかい、一度しか言わないからしっかりと聞きな。アタシのこれは『虚工術』、魔力で生み出した物をその場で加工して使う技術さね」

 浮かび上がる無数の魔力の塊。
 そこに彼女が手を加えると、それらが一瞬で武器になっていく。

 それらは総長の意のままに宙を舞い、容赦なく俺の下に降り注ぐ。
 避けるなり防御するなり、思っているのだろうが……ただそれを、何もせずに受ける。

「なるほど、魔力を一時的に物質化。それを対応した加工技術で状態の定着。これは、とても難しいモノですね」

「! なんてヤツさね……『生者』、アンタ死んでも死なない化け物かい? それに、わざと受けたね?」

「【死戦士】の能力、それは命懸けの戦いにおける思考速度の向上です。お陰様で、少しだけ理解することができました」

「そこまですることかね……言っておくが、もうこれ以上はやらないよ」

 なお、いちおう本当に就いている職業だ。
 就職条件は当然、臨死体験に近い経験をすること……休人はそれどころか、本当に死んでいるので割と就くことができるだろう。

 実際には『SEBAS』が解析し、情報を俺に送ってきてくれた。
 魔力の具現化と加工技術、その二つが無ければ再現できないだろう。

「……ありがとうございます。では、これが例の資料です」

「本当に、これだけでいいのかい?」

「ええ、問題ありません。お約束通り、この『星鉱の加工・応用法』はお渡しします」

「…………まあいいよ。でも、くれぐれもこの世界での周知はしないでもらうからね」

 これもまた、提示された条件。
 冒険世界で使うならともかく、生産世界で周囲に広めるようなやり方は止めてもらいたいと言われている。

 そして、この後俺は栽培ギルド、開拓ギルドの総長からも秘匿技術を見せてもらう……死にながら学び、それらを解析していった。


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