虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

魔王防衛策 その12



 海からの奇襲を仕掛けた魔族たち。
 事前に正面から魔物の襲撃を受け、その際に彼らを感知できないことがバレていたからこそ実行された。

 狙うのは、後方に待機していた支援系の役割に就いていた者たち。
 慌てて対応を行い始めたが、少しずつ被害が出始めている。

 これが原人であれば、役割以上のことはあまり行えなかったかもしれない。
 だが、休人たちは違う……彼らは自らの嗜好もあって、戦うことを求めるからな。

 聖職者も生産者も武器を手に、自ら魔族を相手取ることを選んだ。
 負傷者も休んではいられないと、起き上がり魔族の迎撃に参加する。

「魔法使いの彼、魔法を剣の形に出力して剣技を振るっていますね。おおっ、逆に聖職者は聖気を盾として留めています!」

「ふむ、固定概念の薄い休人だからこそ、と言ったところか。参考になることは多いな」

「……真似をされてよろしいので?」

「使えるモノならば使うべきだろう。意地など張ろうが、どうせ向こうはより練度を高めた技術を使ってくるのだからな」

 休人たちはほぼ間違いなく創作物を基にした魔法やら戦闘技術を用い、魔物や魔族を相手に戦っている。

 だがそれでも、俺の作り上げたアイテムの数々が圧倒を許さない。
 そのため、彼らに取ることができる選択肢は一つ──『プログレス』を使うことのみ。

「……愚かだな」

「彼らは、知りませんでしたからね」

「我が友が居なければ、一方的に蹂躙されていた可能性もあったわけだな……だが、その未来はとうに失われた」

 本当、まるで俺が世界の敵みたいな言われようである。
 だが実際、休人たちもありえないとばかりに驚いていた。

 どうやら【魔王】、あえて外に出した魔族たちには『プログレス』を使わせなかったようだな……そして今、それを解禁することで不意を突いている。

 ついでに言うと、魔族の一人に制約を設けることで能力を増大させる『プログレス』を発現させた者が居た。

 おそらくこれで、使わない期間を制定して今日を期日としたのだろう。
 そうでもなければおかしいほど、かなりの戦闘能力で蹂躙を始めていた。

「だが、それでもなお抵抗するか。やはり、希望がある限り折れぬのか」

「…………向かうので?」

「そうでもせぬ限り、こちらに被害が出る。何より、興味があるからな……今回ばかりは止めてくれるなよ」

「ええ、それを望むのであれば」

 俺と言葉を交わした後、【魔王】は居城から出ていく。
 そしてしばらくして、休人たちの浜辺が突如として爆発するのだった。


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