虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

魔王防衛策 その10



 ついに固有種たちを討伐した休人たち。
 特に、ショウはほぼ単騎で、二体のうち一体にとどめを刺していた……さすがである。

 その光景は観戦していた魔族たちもしっかりと見ており、戦力分析を行っていた。
 聞こえてくる単語には、やはり『分断』やら『隔離』といったものが混ざっている。

「…………『生者』」

「はい、何でしょうか?」

「──アレは、使わなくてよい。どうやら、不要なようだ」

「そうですか、分かりました……『帰還』」

 俺の単語を鍵として、【魔王】の眼前に現れた一匹の──鳩。
 それこそが、本来休人たちをもっとも苦しめるはずだった最後の固有種だ。

 すぐに『SEBAS』が転送を行い、そのまま鳩をアイスプルに送り返す。
 ……そのため、休人たちは仮初の休憩を取ることができるのだった。

「本来の予定であれば、この子の力を使うはずでしたが……お考えがあるのですね」

「いや、考えなど無い。むしろ、無駄だと分かった──これも『プログレス』の普及に伴う弊害か」

「申し訳ございません」

「なに、我が友が謝る必要などない。身の丈に合わぬ力に溺れたモノは、我らの中にも居たのだからな」

 ああ、道理で一部の魔族がズタボロな姿になっていたわけか。
 便利な『プログレス』、しかし使いこなしたからと言って無敵になるわけでは無い。

 それはうちの家族でも同じこと。
 あのルリでさえ、『プログレス』が絶対勝利を約束されているわけじゃないからな。

「彼らは拠点を作り、安全地帯を確保しているようですね……いかがなさいますか?」

「愚かなことだ。魔を払う結界など、無意味に等しいというのに」

「彼らは魔物を警戒しているようですね。魔族が結界を通過できることは理解しているでしょうし、あくまで余計な戦闘を抑えるためでしょう」

 いわゆる忌避結界。
 魔物が拠点に近づこうとすると、何となく不快な感覚に襲われ距離を取る仕様だ。

 しかし魔族には知性があるので、忌避感だろうが不快感だろうがお構いなしで目的遂行のため侵入してくるだろう。

 一部の術師は神聖な結界を張っており、入れば間違いなく弱体化されるはず。
 だがそれでも、【魔王】は魔族たちを見て命じた。

「──準備をせよ。一時間後、奴らの拠点を攻めよ。そして、直接測ってこい。我らの敵となりうるかを。無論、『生者』が我らに与えてくれた武具を忘れずにな」

『ハッ!』

 命じられた魔族たちは、さっそく俺の与えたアイテムを身に纏っていく。
 ……うん、今まで使われていないぐらいには余裕だったんだよな。


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