虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

魔王防衛策 その07



 ──『白空填賜[ギフチャージ](再)』の無双を、傍観する俺と魔族一同。

 休人の数をこれでもかと減らす活躍に、魔族は大盛り上がり。
 ……どうやら休人に妨害され、失敗した任務がいくつもあったらしい。

 そして、玉座に座る【魔王】。
 俺は現在四天王を差し置き、そんな彼の隣で解説を行うことだった。

「しかし、触れただけで死を与えるとは……なかなかに便利ではないか」

「その分、不便な点もありますがね。あくまでも、光線を受けた方だけがその影響下に入ります。光を浴びせるだけでは、効果を発揮することができないのです」

「ふむ……それゆえに、奴らもまた対策を講じれるようになったのか」

「ええ。ご覧の通り、光は物理的対処を重ねることで防ぐことができます。属性判定を行うのは、あくまで魔力によって構築されたもののみですので」

 光の精霊が魔物となった[ギフチャージ]は、当然のように光に関する能力を有する。
 そして、その中には[エクリエンド]──闇精霊の固有種が保持していたものも。

 属性の性能を高め、かつ相手に自身の得意とする属性への脆弱性を与える。
 つまり“光特化”と“強制光弱点”、これにより魔力的防御の大半を無効化していた。

 唯一の例外は、土属性や氷属性に属する術式での防御だろうか。
 あれらは物理的防御能力も発生するので、僅かではあるが時間稼ぎにはなるはずだ。

「まあ、どちらかと言えば[ギフチャージ]は支援担当ですので、攻撃さえ届けば勝つことができるでしょうね……届けばですが」

「即死持ちでありながら、それでも支援を役割と謳うか」

「今回は場が悪いですね。元より、足元が覚束ない船の上。あえて船は襲わないよう指示は伝えましたが、しっかりとした足場さえあれば回避も容易かったでしょう」

 だんだんと慣れているようだが、光の速さで放たれる攻撃の回避など難しい。
 視力や感知などで、どうにか気づけた者も体が追い付くかギリギリぐらいだな。

 それでも、光を放つことを繰り返すだけなので討伐は割と簡単だ。
 今は魔族大陸防衛用の結界が反撃を防いでいるが、それも──時間の問題である。

「むっ……やはり末恐ろしいな」

「ええ、そうでしょうとも」

「やれやれ、ここまで露骨だと困るな」

 ついに反撃に打って出たショウが、星剣を握り締め宙に振るった。
 凄まじい斬撃が放たれると、やがて結界に衝突し──大きな穴が生まれる。

 結界の完全破壊はできなくとも、船が安々と侵入する道は切り開かれた。
 そしてそれは、攻撃が届く道も作られたということで。

 ここからは、休人たちの反撃の時間……になればいいんだけどな。


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