虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

魔王防衛策 その05



 ──『白空填賜[ギフチャージ]』。

 かつてアイスプルで生み出され、討伐された人造の固有種。
 そして、■■■■の技術を用いて、復活した『(再)』個体でもある。

「ぐおっ、眩し──!?」

 光の精霊が魔物化したその個体、攻撃方法は当然光を集束しての射出。
 文字通り、光速で届く光線は抵抗が間に合わない休人たちを容赦なく刺し貫く。

「誰か、光属性に対する防御を!」

「もうやってる! なのに防げない!」

「ハァ!? じゃあ、どうやっ──ごふっ」

 一定間隔置きに光が放たれ、貫かれた休人たちは例外なく死んでいく。
 彼らはすぐに空っぽの肉体を回収し、後方で原因の調査と蘇生を試みる。

 結果、光に刺し貫かれた者はその箇所に関係なく死んでいることが判明。
 また、蘇生も問題なく行えているため、何度でも挑戦可能だと分かった。

「[ギフチャージ]……いや、まさかな」

「おい、まさか知っているのかライデン!」

「誰がライデンだ……いやほら、ユニーク種とかって名前が能力の由来の場合が多いだろう? そう考えると、いろいろ浮かんでさ」

「あん? チャージはまあ、光の充填とかそういうことにして……じゃあ、ギフってどういう意味なんだよ。まさか、岐阜が関係あるとか言わないよな!?」

「それが分かんないから困ってんだろ」

 この会話を聞いていた者たちが、さらに周りへ情報を拡散。
 検証班と呼ばれる者たちによって、ついに即死の仕掛けが判明する。

「皆さん! アレはバフです! 奴はデバフではなくバフとして、死をエンチャントすることで即死を引き起こしています!」

 そう、[ギフチャージ]の光はエンチャントの光。
 触れた相手に、さまざまな恩恵をもたらすというものだった。

 即死の光もまた、その一種。
 死という概念もまた、ある種の救いになるという拡大解釈が生み出した現象だった。

「バフであるため、デバフ無効化の魔法などは意味がありません! また、光属性を無効化する能力も、ユニーク種の能力と思われる技で無効化されます! 対策は状態変化の無効化、および躱すことのみです!」

 状態変化の無効化、それはデバフだけでなくバフも無効化するということ。
 パーティープレイの基本である、支援などもいっさい効果を発揮できなくなる。

 また、物理的に躱すことも、光の速さで飛ぶ攻撃に対しては難しい。
 船を魔族大陸に近づけるならば、その分だけ光が迫る距離も近づいていく。

 もうダメだと誰もが諦めかけたその時、一人の少年が前に進み出る。
 その手で強く握った剣を勢いよく振るい、光を引き裂き突破した。

「まだだ、まだ諦めない! 必ず、突破する手段はある!」

 少年の名はショウ。
 冒険世界に住まう休人最強の剣士にして、【剣星】に選ばれた存在である。


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