虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

魔王防衛策 その02



 休人が魔王城に攻め込んでくる、そんな情報が他でもない【魔王】からもたらされる。
 とりあえず、家族と闘っても権能は返してもらえるよう約束は取り付けておいた。

「──さて、それじゃあやりますか」

 そんな約束を交わした後、俺はあることを【魔王】に頼まれた。
 休人への対抗策の準備、具体的なことは何も言わずそれを俺に依頼してきたのだ。

 何をしても良い、つまりはそういうことなのだろう。
 放置していた方が良い結果を出す、そんな風に思われているのかもしれない。

 実際、その辺は否定できなかった。
 何をどうと言われるよりかは、思うようにやらせてもらった方が気も楽だし。

「魔族に対しては武器の供給、魔物に対しては……防具ならできるし、食べ物なら大丈夫か? よし、やるだけやってみよう」

 俺は:DIY:を起動。
 魔物や魔族でも使える武具を揃え、料理をどんどん作っていく。

 装備に関しては、『プログレス』の機能を用いれば比較的容易に可能だ。
 魔物であろうと、知性さえ有していれば選択可能だからな。

 また、食べ物はそんな『プログレス』を装備できていない魔物でも食せるよう、ある程度工夫を凝らした物を生産している。

 彼らの活動源である魔力を多く摂取できるよう、魔石を粉末状にした物を混合。
 同時に、錬金術ベースの特殊な生産方法である錬産術で調理に術式を書き込む。

 結果、完成したのは取り込むことで一時的に全性能が強化されるブーストアイテム。
 ただし、その反動は凄まじく、しばらくすると酷い虚脱感に襲われることだろう。

 あくまでも、休人という厄介極まりない侵入者を相手取るための緊急手段だ。
 禁断症状などは(依存性的な意味では)出ないので、思う存分蹂躙してもらいたい。

「装備の方も……よし、できたか。あとはこれを錬産術で複製して大量生産だ」

 一つひとつ、オーダーメイドにしておいた方が性能は高いだろう。
 しかし、そこまで時間が無い……なんと数時間後には来るらしい。

 情報を得たのが遅いわけでは無く、休人の行動が早いとのこと。
 ……まあ、行き当たりばったりな人たちばかりだもんな。

 なので刻印やら魔法陣やら、刻めば誰でも同じだけの効果を発揮するものに力を注いでおいて、装備品自体の素材の質はあまり気にしないでおいた。

 もちろん、それでも:DIY:で出せる中では上位のアイテムだけども。
 ……星鉱石とか出すと、さすがに休人が可哀そうなので控えている。

「──あとはそうだな、アレも出すか」

《……よろしいのですか?》

「絶対に【魔王】は利用するだろうけど、裏の意図にも気づくだろう。だからこそ、あえてこのタイミングだ」

《畏まりました、すぐに準備します》

 そう言うと、しばらく『SEBAS』との接続が途絶える。
 呼べば来るだろうけども、それが必要なぐらいに忙しいことをさせていた。

 ──はてさて、休人たちはそもそも上陸できるのだろうか?


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