虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

第一回コラボイベント後篇 その07



 パックを開ければチートなカードばかり。
 おまけに、他者の『プログレス』の情報が開示されてしまうという問題まで。

 だが、どうやらカードの情報を決めているマザーAIも配慮はしていたらしい。
 あくまでも、情報の開示を許可したモノのカードのみ出現するとのこと。

「まあ、名前が分かったところでどうにもならない点は多いからいいけども……逆に言えば、それが条件の能力ならいくらでも発動可能になるんだよな」

 千差万別、あらゆる『プログレス』が存在している。
 その中には、相手の『プログレス』名を知ることでしか使えない能力もあった。

 条件がシビアな代わりに、相応の効果を発揮するピーキーな『プログレス』。
 このカードゲームの世界であれば、かなり有用なモノとなるだろう。

「──全部開けたけど、どこか一枚には必ず強者が混じってやがったな……強いと世界への干渉力も強くなるのか?」

 なんてことを思いつつ、デッキの構築を行うことに。
 基本、枚数が四十枚以上、同じカードが三枚以下というルールを守ればいい。

 なお、強いカードはその例外で、一枚しか入れられない。
 加えて、同時に場に出すこともできない、そういうルールが設けられていた。

 ……ついでに言うと、持つ属性や所属する場所などで制限が付けられている。
 可能な限り、EHOの世界観を再現しているようだ。

「ふむ……とりあえず、『騎士王』無双デッキと【魔王】蹂躙デッキはできたな。あとは無難な……は無理だけど、相手と楽しくやるぐらいの強さのデッキを構築するか」

 昔はカードゲームもやっていたので、こういうデッキ作りは自分でもできる。
 まあ、『SEBAS』に最終チェックとして評価をしてもらってはいるが。

 無論、そこまで高くは無い。
 あくまでも、素人がカードのイラストだけで決めたデッキよりは幾分かマシ……ぐらいのデッキしか作れないのだけれど。

「それでも、できた! ……さあ、評価をしてくれ」

《畏まりました》

 すでに[掲示板]に上げられたデッキ例。
 それらと対戦した場合の戦績などで、評価は決まるとのこと。

 当然ながら、『騎士王』も【魔王】も勝率は九割以上を誇るチート級。
 最初から嵌め技を全力で行えば、ギリギリ勝つ可能性がある……それくらいだ。

《お待たせしました──勝率は六割です》

「六割か……なかなかに無難だな。いちおう速攻デッキ用の対策だけはしてみたけど、それだけに絞った場合は?」

《そちらですと、八割となります》

「うーん、じゃあとりあえずそれでやってみようか。で、負けが続くようになったらどちらかを使うってことで」

 こうして、EHO版『カードバトラー』を行う準備は整った。
 ──そして俺は、度重なる勝利を勝ち取っていくのである。


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