虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

第一回コラボイベント後篇 その06



 カードゲーム、『カードバトラー』のコラボ限定ステージ。
 EHOの存在がカード化されており……当然、チートキャラはチート性能である。

 最高の『超越者』、全能の権能を有する存在『騎士王』。
 彼女とその配下スーパーチート加えてノーマルチートカードが二枚というのが配布されたパックの中身だ。

「デッキは最低四十枚入れなきゃいけないから、必勝というわけじゃないんだが……ここまで露骨だとなぁ」

 なお、当然というかなんというか、今回出たカードはそのすべてがトレード不可。
 世に出してはいけない、そう遠回しに何らかの意思が明言している気がする。

「俺、運が悪いはずなんだがな……ま、まあ気を取り直して、パックを買ってみるか」

 カードは通常版のモノを使うこともできるのだが、どうせならEHO版だけで構築したデッキを使いたい……どうやら、そうすることでアイテムが貰えるらしいし。

 これまで通常版で稼いだポイントを用い、パックを五つほど購入。
 デッキの最低枚数なら、三つで充分なんだが……うん、嫌な予感がするからな。

「さて、一つ目のご開ふ……【魔王】、このカードは場に登場したとき属性『魔物』を破棄札からすべて下に入れる。攻撃時、相手の特殊能力を剥奪。効果はこのカードが排除されるまで消えない。破壊時、手札に戻る」

 何となく予想はしていたが、これまた色鮮やかに輝く超激レアである。
 特殊能力の剥奪って……そんなの、聞いたことないんですけど。

「そして、これ……『プログレス』まで、忠実に再現しているみたいだな」

《これは……》

「うん、情報の開示、この辺がどうなっているのか問い合わせた方がいいかもしれない。『SEBAS』、お願いできるか?」

《畏まりました》

 二枚目のカード、それは【魔王】の『プログレス』だった。
 いわゆる装備カードというヤツで、条件を満たした者なら誰でも装備できる。

 ……まあ、職業【魔王】かつ種族ドッペルゲンガー系統なので、ほぼ不可能だが。
 問題は能力の効果を、ある程度反映させたカードの詳細にある。

《──返答が来ました。[開示を望まないモノ、またある程度の関係性を構築できていないモノのカードは出現しない]、とのことです。いかがなさいますか?》

「いかがって……その返答、しっかりと対応はしているから何も言ってくるなって忠告しているよな? まあ、向こうもそれくらいの配慮があるならいいよ……分かっても問題ない、ぐらいの余裕はありそうだな」

 ただまあ、俺個人として気になったから尋ねただけだし。
 開示しても良いならば、それでいい……出番があるならば、使わせてもらおう。


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