虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

第一回コラボイベント後篇 その04



 一先ず、『ザ・ロード』で乗れるモノすべてに乗った。
 試乗で貰えるフィギュア、一定距離の走行で貰えるプラモデルを確保できたわけだ。

 そして『のんびり異世界の村』──通称イセ村にログインしたわけだが……。

「うわぁ、これは酷い」

《申し訳ございません。[ログイン]ができない以上、定点カメラでの確認しかすることができませんでした》

「ああ、気にすることじゃない。本来なら、それもできなかったんだ……覚悟しておくとしてないとで、これへの対応の差も違っていただろうよ」

 本来のイセ村の仕様に合わせたのか、初期画面から繋がる扉が自動的に自分が家に設定した建物の扉からスタートするらしい。

 そして、広がる光景は──見え当たす限りの雑草天国。
 いや、ある意味雑草地獄だろうか……これが終わるまで、住民は外に出れない。

「事前に分かっているからこそ、方法も浮かぶんだし。それじゃあ、すぐに始めるとしますか──ドローンを展開だ」

《畏まりました。ドローンを展開し、雑草刈りを実行します》

「俺も俺で、やるべきことをしないとな──『キャプチャー』」

 この世界でしか使えない、捕獲用の魔法。
 ドローンが草を処理していると、そこから飛び出してきた生物に魔力の網が届く。

「よし、雑草を処理しているときしか出てこないヤツはこっちでも居たか。どうせなら、こういうのも集められるだけ集めておきたいからな」

 捕まえた生物は飾るだけでなく、博物館へ寄贈すると展示してもらえる。
 いちおう、全種類の寄贈を終えると景品などもあるが……さすがにそれは無理。

 それでも、可能な限りはやっておくのがマニア心……などと思いつつ、草をドローンが処理するたびに出現する生物を次々と捕縛していく。

 ちなみにその姿なのだが……うん、子供向けに少しだけデフォルメされたゲテモノと評するのが精一杯である。

 イセ村に地球に居るような生物は存在しない、だって異世界の村なのだから。
 そのため、捕まえる生物もまた多少ファンタジーなのだ……そのくせ果物は普通だが。

「雑草をきちんと処理すれば、村の住民たちからの評価も上がるんだよな……そうだ、どうせならこの雑草も工夫しようか。雑草の詳細を解析してみてくれ」

《複数の種類がございますね……解析完了しました、データを投影します》

「うんうん、俺の予想通りだ。これならいろいろと使い道もありそうだ」

 そしてその後、俺は雑草を利用した料理やら飲み物を住民に配った。
 概ね受け入れてもらえたよ……全員では無いが、それでも一歩前進と言ったところだ。

 なお、一人『これは売れるぞなもし!』とか言っている者も居たが……うん、特に語る必要はあるまい。


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