虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
第一回コラボイベント前篇 その10
妖刀(仮)な[宿業]を使い、第三フェイズの魔物たちもサクッと殺した。
アイドルたちのバフの効果は、脆弱な俺でもしっかりと活かせるようだ。
「ここで、まずは一回終了になる」
『みんなー、応援ありがとう!』
「扉が出てきて潜れば終わりだが、規定量のペンライトが振られれば最後にもう一曲歌うことになるっと──『SEBAS』」
《ドローンたちに配らせます》
ペンライトは魔物が確実にドロップするので、それをある程度ホログラムのファンたちに回していけば良い。
ただし、防衛戦でファンの数が一定人数まで減ってしまっていると、それができなくなりそのまま終了というわけだ。
休人もその頭数に入れられるが、一度に入れる制限数があるためそこまで期待はできない……だが今回、一人としてファンを減らさせはしなかったので──
『みんなー、アンコールありがとう! それじゃあ最後に、もう一曲だけ……特別な曲を歌うよ──ミュージック、スタート!』
宣言と共に、始まった音楽。
それは[掲示板]で本当のファンたちが大騒ぎらしい、『アイドル・ラブ・ユー』でも未公開の新曲らしい。
そう、アンコールの曲はその中からランダムではあるがその全部が新しいわけで。
……そりゃあ激しい勢いで周回し、情報が集まっていくわけだ。
「そして、最後の報酬が欲しいなら、これを倒さないといけないわけだ──情報通り、この曲にはこのボスが出てくるんだな」
曲の演出なのか、彼女たちの背景で投影されているモノは──燃え盛る炎。
ハイテンポに流れる音楽に合わせ、激しく歌って踊るアイドルたち。
ホログラムのファンたちは、それに熱狂してもう動かない。
残された休人は、自分たちの手で最後のボスへと戦いを挑む。
それはまさに、曲のイメージを体現するかのように燃え上がる火そのもの。
炎で構築された巨人、彼女たちの歌が生み出した精霊のような存在……魔物ではない。
ゆえに、最終フェイズのボスは討伐に失敗しても、第三フェイズまでの報酬は貰える。
ファンも一部は諦め、曲を聴くことに集中しているようだ。
「けど、好都合だ……精霊と敵対するなんて普段の俺にはできないからな──ここなら合法だ、レッツ精霊狩り」
構えた[宿業]にも、不自然な光が宿ったような……気がしたらいいな。
ともあれ、妖刀を構えると敵対の意思を感じ取ったのか炎の巨人が動き出す。
「『SEBAS』、頼む」
《畏まりました──『インストール:バトルラーニング』、および“アタックシフト”。“神持祈祷:ヴィジョンアイ”を起動、戦闘開始──『セバスチャン』を発動します》
体を『SEBAS』に委ね、俺はただ暴漢に徹する。
……うん、実は俺も曲をゆっくり聴いていたかったからな。
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