虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
妖刀探し 中篇
自前の妖刀ではなく、天然(?)物の妖刀が必要になった俺。
そんなわけで、迷宮で得た情報を基にいくつかの妖刀をこの場に展開してみることに。
「うん……まったく馴染む気がしない」
本物に限りなく近い、それはつまり妖刀としての性質も同じということ。
手を伸ばした妖刀すべてが、自らが放つ妖気で俺を拒んでいた。
「…………どうしたものか」
《旦那様、一つ──》
「いやうん、分かっている……これだろ? たしかにこれは、何となく馴染んではいるんだよな」
俺たちが語り合うソレとは、迷宮核の妖刀が抵抗する際に差し込んできた脇差。
奪い取り、掌握し、迷宮の管理者に仕立て上げたのだが……今も俺の掌に在った。
というのも、迷宮核そのものがアイスプルには不要だったので。
権限もすでに剥奪済み、今は元の銘も無き妖刀となっていた。
「自前じゃない、しっくりくる、そういう条件は満たしているんだが……これ、特別な能力とか持ってないだろう?」
《はい。一時的な干渉のため、それ以外の要素を削ぎ落していたようですので。ですが旦那様、それゆえに活用する利用があります》
「ふむ……詳しく聞こうか」
さすがは『SEBAS』、俺が困ったときに頼れるアドバイスを授けてくれる。
そんな『SEBAS』の助言、それは俺も考えられなかったもので──
「──『プログレス』を使う? えっと、この妖刀にか?」
《キャパシティは存在します。あとは、無機物への行使が可能な状態にするのみです》
「まあたしかに、【魔王】との実験でできなくは無いって結果になっていたけど……まさか、本当にやることになるとは」
あらゆる模倣を可能とする【魔王】は、当然『プログレス』にも目を付けていた。
彼と俺は実験を繰り返し、条件を満たせば無機物だろうと使用可能だと暴いている。
「ただあの時は、『ハートギア』があったからな……類似の能力、あのときはまだ存在していなかったし」
それは【機械皇】の持つ特別な機体、ロロが発現させた『プログレス』。
あらゆる機械に命を宿らせ、またその機体が『プログレス』を使えるようにする。
そんな『プログレス』の力で、【魔王】が所有していた機械を試すことができた。
なお、実験結果的に機械といってもある程度、自律的な個体でないとダメだったけど。
「この妖刀、意思を持っているのか?」
《今はございません、ですがそれが発生する余地は十分にございます》
「いわゆる付喪神ってやつだな。それこそ、『陰陽師』の専売特許って感じがしないでもないけど……ああ、【刀王】も似た感じがするな」
いずれにせよ、妖刀に『プログレス』を使わせるにはまだ足りないものが多い。
だが、アイデアそのものは良い……よし、その方向で行くとしようか。
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