虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
妖刀戦争 その19
迷宮を掌握したと思ったら、九拿が強烈な一撃で迷宮を破壊した。
結果的に、俺の居る最奥と彼女が居た場所とが繋がる直通の道が出来上がる。
「……居た」
「こ、これはこれは九拿さん。ずいぶんと、お早いご到着で」
「心配だったから……大丈夫?」
ゆっくりと歩み寄ってくる九拿。
その足取りの理由は、片手で引き摺っている気絶した妖刀使い。
そして、もう片方の手には男が使っていたはずの業禍物が握られている。
時折禍々しい力が彼女に向かっていくが、煩わしそうに手を振れば掻き消えていた。
「ええ、お陰様で。九拿さんも、大丈夫……だったようですね、貴女の方は」
「うん。…………それ、妖刀」
「! そ、そうです、この飾られている物がどうやら今回の騒動を引き起こしたようですね。九拿さん、いかがなさいますか?」
彼女の視線は、迷宮核として飾られている妖刀へ向けられている。
俺はそれを否定せず、まるで妖刀を自由にしていいとばかりに問いかけた。
「……いいの?」
「この場で争っても得策ではありません。ここまで来れただけ、儲けものというものですよ。何より、私がここに来た目的はあくまでも調査。目的は果たしておりますよ」
嘘は何一つ言っていない。
だからこそ、九拿は引き摺っていた男を手放して妖刀へ近づく。
「ただ、先にお答えいただけると。貴女はこれを、いかがなさるおつもりでしょうか?」
「?」
「これを破壊すれば、迷宮が倒壊することでしょう。また、持ち去ればこの迷宮は成長する余地を失います。今後のため、確認をさせてください」
「…………」
放置、というのであればそれはそれで怖いのだけれど。
いずれにせよ、『陰陽師』が与えたであろう指示次第でこの迷宮は失われる。
彼女は妖刀を掴み──台座から奪う。
迷宮から動力源である核が無くなり、周囲は色を失っていく。
「もっとも頑丈な刀の回収、それがわたしに与えられた命令。だから、これは貰う……その代わり、渡していた妖刀は全部あげる」
「……よろしいのですか?」
「それはこっちの台詞。本当なら、あの剣が一番だったけど、あれは剣で刀じゃない。だから狙わなくてもいい。だけど、これだって貴重な物のはず」
「そのように考えていただけるのであれば、それで充分です。妖刀も……そうですね、依頼主を満足させるためにも、使わせてもらいますね」
核が失われた以上、『(再)』シリーズの妖刀は本来の性能を発揮できない。
しかし、彼らであれば独自の使い方を見出せるだろう。
核を失ったことで、迷宮はこれから緩やかに停滞していくことだろう。
そして、俺たちは──
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