虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
妖刀戦争 その12
さまざまな思惑が錯綜する妖刀迷宮。
だが結局は、最深部に向かわなければそのすべてが終わらない……目的の追求、そして他者の目的を阻止するために奥へ向かう。
「なかなかに、厄介になってきたな」
初めは亡者、途中で俺、そして鎧武者たちから刀の扱いを学習している九拿。
今ではかなりの腕前となっており、力ではなく技量で鎧武者を倒していた。
「『SEBAS』、どうだ?」
《旦那様の仰る通り、その腕はかなりのもののようでしょうね。天性の才覚、自ずと最適な型を理解しつつあるようです》
「そのうえで、学んだ動きをいつでもなぞれる……うん、俺の上位互換かな?」
俺の場合、結界で体を強引に動かしての再現なので、基本的には『SEBAS』が情報化した動きそのままでしか動けない。
そのパターンが多いからこそ、まるでその場その場で最適解を取っているように見えているが、結局は後だしじゃんけんをしているようなもの。
見ているから分かるだけで、相手が既存の方法を取らなければ、そのまま何もできないで負けてしまうわけだな。
「そういえば、そろそろ着くのか?」
《ドローンで確認した限り、階層は五層で終了となります》
「それじゃあ、あと一層に加えて核が鎮座委しているであろう部屋だけってことか」
《おそらくは》
この言葉が間違えている可能性など、絶無に等しいことを俺は知っている。
つまり、確実に次の層で本来ならば終わりというわけだ。
ただ、他の者たちと違って俺の目的は明確にこの迷宮の最深部。
そこに眠る核から情報をいただき、アイスプルでの妖刀生産を可能にすることだ。
そのためには、迷宮が崩壊するような事態は避けなければならない。
……それをしそうな者を制御し、どうにか目的を果たさねば。
◆ □ ◆ □ ◆
迷宮『銘も無き墓碑』 五層
ついに辿り着いた最終層。
その間、ただひたすら敵を斬っていた九拿の技術はさらに高まっている。
比較対象は妖刀の力を使わない【刀王】。
それでも、かなりいい試合ができるとのシミュレーションが出たようだ。
お互い隠している札もあるし、結局最後にはどうなるのか分からないけども。
ともあれ、そんな一人前の刀使いと共に最終層へ挑む。
「まずは一撃──伸びろ!」
魔力を注ぐと大きくなる星剣。
今回は一度使った時とは違い、方向性を膨張から伸展へ変更。
星剣は伸び──途中で曲がり、カクカクと道に沿って進んでいく。
やがて、手に何かがぶつかった感触を覚えると、九拿に向かって告げる。
「では、お手をお借りしても?」
「?」
「少しだけ、速く行ってみませんか?」
「……面白そう」
九拿が俺の手を掴んだことを確認し、伸びている星剣に再び魔力を少し流す。
今度は収縮を始めるのだが──刺さっている場所を起点として、それは起きる。
つまりどういうことか──物凄い勢いで、俺たちはその場所まで輸送されたのだった。
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