虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
妖刀戦争 その08
ついに三層で発見された、一振りの妖刀。
だがそれは、業禍物と呼ばれる代物ではなく、まだ目的地は遠いと思われる。
「とはいえ、妖刀であることに間違いはありませんので。可能な限り、集めておくのが得策でしょう」
「…………」
依頼者──【刀王】と『辻斬』的に警戒するのは業禍物シリーズなのだろうが、一般人からしてみれば、妖刀という存在自体が警戒するに値する物。
それが地面に刺さっていたり、迷宮の亡者たちが持っていたりと、ここまで辿り着いた実力者なら回収可能な状態……なかなかに面倒な状況である。
「唯一の救いと言えば、呪いが強い武器をそこまでアイテムとして仕舞えないことか……有象無象の妖刀なら、地上に居る強者でどうにかなりそうだしな」
強力な妖刀には相応の力が宿り、何本も空間魔法や[インベントリ]などに仕舞っていると……やがて暴走する。
勝手に飛び出したかと思うと、内部で溜めたエネルギーでそのまま収納者を殺す……という事例も過去にいくつか。
浄化してしまうとただの刀なので、そういう対処もできない。
なので、一人ひとりが持ち帰られる妖刀にはある程度制限が存在した。
──それこそ、どこかの刀剣好きのようにそれ専用の格納能力でも無い限りは。
「──『インストール:ソードホルダー』」
「?」
「ああ、これはですね。刀剣を仕舞うことに特化した能力です。こちらですと、通常よりも多くの妖刀を集めることができるのです」
あれから何度か戦闘があり、どうにか妖刀の入手に成功していた。
……当たり外れがあるようで、臭いで敵を弱らせる[臭隙]という代物だったけど。
名前の通りの効果なので、嫌がって誰も回収していなかったのだろう。
なので俺が向かい、結界で包まれながら臭いを遮断して装備していた亡者を倒した。
持ち帰りの際。絶対に嫌がられるその臭い云々も『ソードホルダー』なら簡単解決。
アイテムを整理整頓する要領で、他の妖刀へ影響が及ばぬように隔離可能です。
……空間に干渉できるような物なので、内部で妖刀同士が揉めることがあるらしい。
で、勝手に蟲毒を始めた後、片方が存在を食われてただの刀になったなんて話も。
「預かって」
「……よろしいのですか?」
「うん、邪魔だし」
「……分かりました」
なお、一本しか得られなかった俺に対し、九拿は五本ほど集めていた。
なのでかなり嵩張っていて、持ち歩くのにも苦労していたようで。
それらを受け取り、『ソードホルダー』の内部に仕舞っておく。
そして、再び妖刀を求めて三層の中を彷徨い歩いていくのだった。
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