虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

職業相談 その19



 なんだかんだ、いろいろと不遜な覚悟を決めて乗り込んだ精霊樹。
 目的はそこで会うことができる、精霊の神である精霊神……目印は貰った指輪だ。

「おうおう、よう来たよう来た! うむうむうむうむ、要件など分かっておる! ついにわれの使徒になることを選んだか!」

「いえ、違いますが」

「なんじゃと!? な、ならば、いったいいかようにしてここへ……あのクソ主神めが、何の理由も無く滞在を許すはずも無かろう」

「ええ。実はですね──」

 そこからはまあ、里長にも説明した内容をもう少し詳細に説明するだけ。
 創造神からのお言葉も、セットで伝えてみたところ──

「なーにが『よきにはからえ』じゃ! 計らいなどまったくしておらぬではないか!」

「ま、まあまあ、創造神様には、私共日頃よりお世話になっておりますので」

「ふんっ! ……まあ良い、しっかりとわれの指輪も持ち歩いてくれていたようじゃし。これでようやく、アレが実行できるわい」

「…………アレ?」

 かつて、貢献イベントの際に下賜された精霊召喚の媒介となる指輪。
 そしてそれは、再び出会った際に精霊神の手によって謎の光が宿されていた。

 それが何なのか、『SEBAS』でも解析できないで居たのだが……うん、ようやくその正体が分かるようだ。

「アレはな、われが生み出した新種の精霊の卵のようなものじゃ。『生者』からいただいた星命……じゃない、生命力やら魔力やらで育ち、文字通り『生者』専用の精霊となる。そんな代物じゃ」

「なんと、そのようなものを!」

「まあ、本来であればクソ主神にバレぬよう細工を…………ごほんげふんっ! 要するにじゃ、こうなれば都合も良い! さっそく、始めようではないか!」

「感謝します!」

 なんだかおかしな単語が出た気もするのだが、実害があるでもないし気にしない。
 古今東西、さまざまな創作物で定番な特殊な精霊、それをくださっていたのか。

 まあ、うちにはエクリも居るし……控えている者たち(素材)も居たけども。
 貰えるというのであれば、ありがたくいただいていたであろう。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 アイスプル

 指輪経由で連絡を取り合いながら、再び精霊が生まれる特殊地帯に戻ってきた。
 今も俺の動向を、精霊神はここではないどこかから把握している。

『なるほどなるほど、良き場所じゃ。世界樹の恩恵を強く受けておる……『生者』よ、何か目印となる物が欲しい故、植物の種を出してはくれんか?』

「目印ですか……でしたら、こちらを」

『ふむ……これならば問題なかろう。正直、忌々しい権能がべっとりなのは癪じゃが……仕方あるまい』

 即席で:DIY:を発動させ、植物の苗を生み出したため、嫌そうな反応だった。
 だがその分、最高品質の植物となるので我慢していただきたい。

 本来育つ環境などは、あとで【大富豪】経由の調整を行えばいい。
 その植物の性質を信じ、精霊神に苗を渡していた。

『うむ、ではそれをこの場に埋めよ。無事に育った時、ここは精霊の世界と繋がる境界線となろう』

「ありがとうございます。必ずや、この地に豊穣なる大地を」

『うむうむうむうむ……時折、貢ぎ物を忘れるでないぞ。もちろん、神像に捧げる分とは別にな』

「それは……承服しかねますが、足りないということは無いように尽力いたします」

 こうして、アイスプル世界は精霊たちが遊びに来る場所となった。
 あとは【精霊士】系の職業を、どんどん育てていくだけだ!


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