虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

職業相談 その11



 世界樹の持つポテンシャルを、お金の力でさらに強化できる。
 それを知った俺は、たとえそれがすべてで無くとも全力で投資することを選んだ。

 世界樹が光を放ったことでアイスプルの星獣兼みんなのお母さんである風兎が反応したものの、それが世界樹にとって益のあることだと言えばあっさり引き下がった。

「しかし、『宇宙樹』は無理だったか……いやまあ、最初から『神・世界樹』で同じことができるとは言われたけども。どうせなら、この流れでできればよかったな」

《可能ではあります。ただしその場合、SPの消費が必須となりますが》

「それじゃあ本末転倒だよ。今までだって、それならできたじゃないか」

《──今までとは少し違った、SPの消費を抑えながら可能にする方法がございます》

 軽く不貞腐れていた俺だが、そう聞いて態度を改める。
 さすがは『SEBAS』、俺が耳に入れやすい言葉で誘惑してくるな。

「ふむふむ、してその方法とは?」

《SPを消費し、世界樹の可能性に宇宙樹の性質のみを加えます。それを【大富豪】の能力で開花させる、これならばSPが必要になるのは初動のみとなります》

「なるほど……うん、それぐらいなら余裕でできるSPがあるな」

 世界樹に関する情報を、【救星者】の職業能力で確認。
 すると、これまではそれなりの消費で諦めていた派生が可能であると判明した。

「じゃあそろそろさっきの投資が完了するみたいだし、その前に注ぎ込んでみるか!」

 まずは【救星者】で、『神・世界樹』に素地に関する部分へアクセス。
 そして見つけた宇宙樹の情報、そこにSPの一部を注いでいく。

「今度は【大富豪】で……っと、本当に増えてるな!」

 信じていなかったわけではないが、これまで表示されていなかったものが些細な行動で増えているので驚いた。

「そのまま──プッシュ!」

 ボタン認証で投資を選択。
 それにより、『神・世界樹』の中に追加された宇宙樹としての可能性を顕在化させる。

 世界樹が再び、今まででもっとも激しく輝きだす。
 ……まあ、消費した額が『シン』シリーズよりも高かったからな。

「さて、また具体的な変化が分からない状態なわけだ。ドローンを頼むぞ」

《畏まりました──偵察機を飛ばします》

「しいて言うなら、花が所々に咲いた気がするし、結晶が実りだした気もする……それでも宇宙樹の要素は見受けられないし。あっ、【大富豪】がカンストした」

 どうやら額がとんでも無かったようで、僅か数十分のうちに【大富豪】はその必要となる膨大な量の経験値を満たしてしまう。

 また悩むことが増えてしまった……そう思いつつ、『SEBAS』が飛ばしたドローンの帰還を待つのだった。


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