虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

対家族製作 その17



 パシフィス世界の住民たちは、どうやら頭身が本来の理と違っているようで。
 その違和感に、これまたどう作ったか正直謎な魔法薬で対抗することに。

 向こうから見た俺は、彼らと同じような頭身の姿として認識される。
 万能薬でも使わない限り、専用の解除薬以外で戻ることは無いはずだ。

「……ああそうか、アニメの世界か。ありえないはずの存在、たしかにそれなら証明可能なのかもしれない」

 パシフィス世界は『否定』された存在が息づく世界。
 思い出した数々の創作物の中に息づいていた、ありえない存在たちについて考える。

 動物が二足歩行したような存在、そもそも生物ではない存在の擬人化、そして現実であればファンタジーと言われるような特殊な環境の数々……なるほど、アニメのようだ。

 漫画やラノベではなくアニメと評しているのは、それが連続的に動いていてもそれが違和感として感じ取れないよう、作り上げられていたから。

 ゆえにどのような理屈かは分からないが、この世界はアニメに似た法則で成り立っている……そう俺は仮説を立てた。

「そう考えると、いろいろと納得がつく。少し強引ではあるが、それも全部が星の理のせいというかお陰ということにすれば……なあこの仮説、どう思う?」

《そのままとはいかないでしょうが……該当することがあるはずです。旦那様、さすがのご慧眼です》

「ははっ、よせやい。少しだけ当たってるみたいな言い回しだけど、それってほとんど当たってないってことだろう?」

 別に一発で当てたいわけじゃないし、当てたところで何があるわけでもない。
 俺を立てようとしてくれるのは分かるが、違うものまで使わずともいいのに。

「まあ、これを踏まえてやるべきことは一つだな。相応の振る舞いをすればいい、ということでやってみようか」

《畏まりました。フォローはすべてお任せください》

 一度、似たようなことをやった経験が俺にはある。
 そう、自信満々の笑みを浮かべた俺の背には──移動式の屋台が置かれていた。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 俺が行った出来事は、それなりにあったが今は説明を省こう。
 アレルギーを気にしなくていい動物たち、彼らに食べ物を振舞っただけだからな。

 そうして仮設の住居群へ向かい、そこに居た偉い人に会うことができた。
 ……そして、パシフィス世界の現状について話すことに。

「そうか! 貴方が……!」

「ええ、幸いにも使える道具を持ち合わせていましてね」

 ここの長は動物ではなく、限りなく人に近しい姿をした存在。
 元よりパシフィス世界から人族は『否定』されている、なので人ではないのだろう。

 だが、それでも人の姿はある……その完全ではない世界観も、アニメのよく分からないあるあるだな。


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