虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

対家族製作 その15



 亀の甲羅の上に着地できた。
 ただし、安全に侵入できるのはただ一つ、甲羅のてっぺんにある噴水口のみ。

 再びドローンに乗って、少々高い場所まで移動する。
 そこには空から落ちた水を世界に戻すように、水を上へと吹き飛ばす亀の姿があった。

「ここから入ればいいわけだが……これ、ほとんど常時出ているんじゃないか?」

《観測を行っていますが、今まで停止したことは無いようです》

「つまり、強行突破あるのみか……そりゃあ穴を開きっぱなしでもいいわけだよ」

 何かいいものは無いかと探し、これだと思う『プログレス』を発見。
 宝石にインストールした後、俺は勢いよくドローンから飛び降りて噴水口へ。

「水はとりあえず、受け流して──『ゲートコネクター』、“パリィホール”!」

 それは【仙王】に発現した、空間へ穴を開くことができる能力。
 だが今回使用した派生能力は、彼女が目覚めさせてない異なる使い道。

 二ヶ所に穴を展開し、攻撃にその間を通らせることで受け流す誘導術。
 使い方が上達すれば、相手の攻撃を強化したうえで送り返すことだってできる。

 問題は近接攻撃などには上手く通用しないことだが、今回はただ水が飛んできているだけなのでどうとでもなった。

 噴水口と穴の大きさは釣り合わず、穴を通るのは俺の周りのみ。
 それでも前と後ろに広げた穴が、俺に直接水が掛からないよう転送を続けている。

 使用には魔力を消費するが、通っている間ずっとポーションを飲み続けて対処中。
 そんな時間がしばらく続き──ついに、魔力の消費が一気に減った感覚を得る。

「! ……むぐぐっ!?」

 だがそれに追随するように、俺の体は横からの圧に負けて激しく動く。
 抗いようのない力強さ、そして全身で感じるこの冷たさ──俺は入水していたようだ。

 何度も死んでは蘇りを繰り返しているが、それでも状況自体は変わらない。
 脱出するためには、俺一人ではどうしようもなさそうだ。

「ぷはっ! ま、不味い、『SEBAS』、何か代理でやってくれ!」

《畏まりました──『ブレスレッド』をインストールします……成功しました》

「!」

 通知を聞いた瞬間、一気に肺が膨らんだかに思えた。
 急速浮上した俺は、そこで大きく息を吸い込み空気を取り入れる。

 風船のように膨らむことは無いが、これで体内の空気によって少しは浮きやすくなる。
 そのまま仰向けの姿勢になって、現状を把握することに努めた。

「このままだと、また噴水送りにされる可能性が高いな……『SEBAS』、俺はどうすればいい?」

《“神持祈祷”を使い、『フロートアーム』での脱出をおすすめします》

「了解──“神持祈祷:フロートアーム”」

 言われるがまま、展開した『プログレス』の効果で宙に浮かんだ腕が現れる。
 俺はそれに掴まり、そのまま上空へ……というのはさすがに無理だった、非力なので。

 それでもある程度進むべき方向を調整できるようになり、噴水となる水を集めていた流れからは脱出できた。

 そして、その後俺が観た光景は──


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